詐欺というものは、何をするかではなく、誰がするかで成否が決まりやすいようだ。先日、僕の知人がこんな面白い相談を持ちかけてきた。
「以前パチンコライターをしていた人が、打ち子をネットで募集していた。日当は10,000円ぐらいだったので応募して、その後採用された。ところが丸一日ぶっ通しで打ったのに、日当は初日しか支払ってもらえない」
僕は音速で「バッカじゃねえの?」と言ってやった。
そもそも打ち子ってかなり重労働!
パチンコで勝つには、釘の良い台を見つけ出して、それを抑えて営業時間中、ずっとタコ粘りするに限るという。だからこれが上手な人は、自分の部下を何人も作り、軍団を結成するそうだ。
自分の代わりに台を打つ、部下。これを打ち子という。ネット上を見ていると、こういった釘読みに長けた人物が、実際に打ち子を探しているという書き込みを見ることができた。
しかし、この打ち子というのもなかなか骨が折れる。なんせ収支的にプラスが見込める台を、何があろうと延々回し続けるのだ。座りっぱなしというのは腰にも肩にも負担がかかるし、何万発出ようと日当は変わらない。
あくまでも仕事としてギャンブルをしているというわけだ。固定給ではないし、ボーナスもないので、なかなか厳しい。
元パチンコライターだからできる詐欺
今回僕に相談をしてきた知人は、元パチンコライターの「弟子を募集する」という名目で集めていた。
世に打ち子募集をするパチプロ数あれど、そもそも顔も知られているようなパチンコライターであれば、盲目的に打ち子として弟子入りしたいと思う者も少なくないだろう。
実際にはパチンコライターなんてメーカーの太鼓持ちでしかないし、文章力がなくてもできる仕事なんだけどね。
さてこの知人の場合も、元パチンコライターというネームバリューに釣られてしまった愚かな被害者である。最初こそ毎日の日当を確約するという話だったらしいが、蓋を開けてみればそんなことはなかった。
では書面でしっかりと署名しつつ契約を取り交わしたのかと問えば「そこまではしてないよ」と何故かヘラヘラ笑っている。
この知人は、一体どういう人生観を持って生きているのだろうか。馬鹿げた話だが、僕は正直、騙される人間がいることに絶句してしまった。
こんなズボラな人間の弟子になって何になるというのだろうか。知人いわく「しっかりしてる人に見えたのに、騙された」という。
いやいや、自分の見る目のなさと、怠惰な理由で金儲けをしようとした性根を恥じるべきだろうに。
件の人物、ネット上でも批判の対象に
ところで、どうやらこの元パチンコライター。同じような処遇を弟子たちに次々にやらかしていたようで、元関係者が告発ブログを書いたり、2ちゃんねるで現状を暴露するなどして、今や笑いものとなっている。
反論をわざわざ動画にして公開してるが、これも支離滅裂で自分勝手な言い分に終始している。恐らくこの元パチンコライターは、もう駄目だろう。
顔も名前もバレている状態では、とても打ち子を募集して胴元として稼ぐなんてやり方はできなくなるはず。大人しく再就職でもして、真っ当に生きるのが上策だ。
人材への投資を怠る人間に胴元の器なし
お金を発生させるために、初期投資をしなければならないのは当たり前のことだ。
その初期投資を怠ってしまっては、上手く行くものも上手く行かない。この当然の理屈を知らずに人を使おうと思うこと自体が、そもそも間違いなのである。
今回のようなケースはまあ、そんなに多い事例ではないが、人材を扱うという立場がケチなら、その下で働く者たちのやる気などもたかが知れたものになる。時には身銭を切ってでも部下のためにできることをする。
こういう上司や経営者になる覚悟がない限り、下手な夢想は抱かない方がいいということだろう。
(文/松本ミゾレ)