イギリスでは1979年のサッチャー政権下において国営の中央電力公社が民営化され、その後段階的にシステムが変化し1999年に電力全面小売自由化が導入されました。その目的は「競争原理の導入と経済の活性化」。
それから約15年たった現在では大手6社が95パーセントを占めるものの独占的地位を占める会社が存在しないことから競争的で開かれた市場として評価されているようです。果たして、日本でも同じような改善がみられるでしょうか?
電力自由化って何?
日本の電力は戦後長い間全国に点在する電力会社10社による独占市場でした。つまり、東京に住んでいれば東京電力、大阪に住んでいれば関西電力など地域ごとに電力会社が決められていたのです。2016年4月からは電力の小売りが全面自由化され、一般家庭や小規模店舗など「低圧」に分類される顧客でも住む場所に関係なく自由に電力会社を選ぶことができるようになります。
なぜいま「自由化」なのか?
引き金となったのは2011年3月に発生した東日本大震災。地震の影響で起きた原発事故によって都心部での電力が大幅に不足し、電気料金が上がり、消費者たちは節電を強いられました。特に夏場はクーラーを使えない、使わないことで熱中症になる人が後をたたず、大問題になりました。そこで電気の安定的な供給を大前提に政府は「電力前面自由化」へ向けて改革を推し進めたのです。
実はもう始まっている?
2000年より段階的に進められている規制緩和により電気を大量に使う大規模工場や、デパート、オフィスビルなど大口の顧客に限り「特別高圧契約」が自由化され、新規参入した電気会社から電気を供給することができるようになりました。
その後2004年には中規模工場、スーパーなど、さらに2005年には小規模工場にも自由化が適用されました。これらの顧客への電力販売量は電力供給量全体の6割超となります。
自由化に伴うメリットはあるの?
現在「低圧」電力は地域の電力会社が発電にかかるコスト、人件費などの必要経費を国に提示し、厳しい審査のもと認可されています。約7.5兆円ともいわれる電力市場が開放されることで、電力会社の経営能力に応じて価格が決まるようになるため、電力会社間の競争を促し、電気料金の引き下げにつながります。
2015年9月4日現在、全国には火力・水力・原子力・地熱・風力・太陽光などさまざまなエネルギーをもとにした電力会社が751社も存在しています。「とにかく安いところがいい」、「原発は反対だ」、「高くてもグリーンエネルギーが使いたい」、など個人の要望に合わせて自由に選べるようになります。また、ガスとのセット販売、携帯電話の回線割引、ユーザーサポートやポイントシステムなどさまざまなサービス向上が期待できます。資源配分の効率化などエコの面でも改善がみられるでしょう。
海外の電気代事情について
私の住むイギリスでは電力会社は住んでる地域に関係なく自由に選ぶことができます。大手電力会社は大々的に宣伝もしているのですが、料金プランがとても複雑なため引越しなど何かのきっかけがなければ結局ひとつの会社に落ち着いてしまうことが多いようです。うちの場合は電力とガスを両方提供している会社なのでセット料金でお得、らしいのですが正直よくわかりません。
ちなみに光熱費は毎月、3ヶ月に1回、またセントラルヒーティングを使用している家庭が多く冬のガス代がかなり高くなるため1年分の料金を予想して12で割ったものを分割で払うなどさまざまな支払い方法が選べます。特に興味深いのは同じ地域の同じ大きさの家に住む家庭、同じ大きさでもエコ仕様の家庭、そして私の家のエネルギー量を比較したグラフが毎月送られてくることです。それを見ては「暖房使いすぎだな」とか思ったり。あまり改善されることもないですが。
(文/森野万弥)