人生を通して最大のお買い物と言われるマイホームですが、返済負担率を25%以内にすることが推奨されます。
年収500万円の方が3500万円の住宅ローンを組んで不動産を購入したら生活はどうなるのか、具体的な数字を使いながら月単位のシミュレーションをしてみました。
ローン返済にかけられる金額から購入可能な物件価格を推定できるようにしておくと、不動産購入を考えたときに役立ちます。不動産屋の営業マンに促されるままに購入物件を決めてしまうと、家計に無理がでてくるはずです。
せっかく購入したマンションや新築一軒家を生涯かけて維持できるように、借入可能額や長期的な資金計画の考え方を理解しましょう。
【この記事の目次】
ファミリー編(共働き)子供2人
夫がサラリーマンとして主に生計をたてつつ、妻がパートにでてサポートしている家庭を考えてみます。
住宅ローンは夫婦の出費として負担していくものなので、世帯単位の収入で支払い可能額を計算しましょう。夫だけでは年収500万円水準でも、妻の協力により、大幅に所得レベルをあげることができます。
夫の月収 | 41万6,000円 / 月 |
妻のパートタイム収入 | 約8万円 / 月 |
合計 | 約50万円 / 月 |
世帯所得が計算できたら、住宅ローン返済額を考えていきます。夫婦合算の収入計算結果に対して0.25を掛けた数字が毎月のローン支払いにあてられる金額です。この家庭の場合、下記のように計算します。
約50万円 / 月 × 0.25 = 125,000円 / 月(金利含む)
試算結果に則って毎月の返済額を125,000円とした場合、3500万円を払いきるには23年くらい必要で、子供の大学進学以降まで支払いが続く状況が予想されます。
元利均等返済、元金均等返済のどちらを選択するかなど住宅ローンの選び方によっても支払い期間や総額は変わってくるので、あくまで参考として考えてください。
住宅取得資金としてあらかじめ用意していた預貯金を頭金に差し入れた場合にはもう少し返済期間が短くなりますが、話しを単純化するために割愛しましょう。ボーナス支払いについても、ここでのシミュレーションでは考慮しません。
では、住宅ローン支払いに毎月125,000円あてるとして家計はどのようになるのでしょう。
子育てにはいろいろなお金がかかりますが、最低限考慮したい内容として教育費を把握しましょう。幼稚園から大学までオール公立だった場合でも24,000円の支出になると言われています。これが2人分なので48,000円を確保しましょう。
オール私立の場合は約41,000円/ 月×2人分で82,000円が必要です。住宅ローンとあわせた支出は、下記水準を覚悟しましょう。
オール公立 | 125,000円+48,000 = 173,000円 |
オール私立 | 125,000円+82,000円 = 205,000円 |
収入約50万円から上記教育費を差し引いた金額で生活することになり、現在の生活費と照らし合わせることで、余裕があるかどうかが判断できます。
50万円 − 173,000円 = 327,000円
50万円 − 205,000円= 295,000円
このくらいのお金が残れば、住宅購入したとしても無理なく生活していけると考える方も多いでしょう。3500万円程度の予算があれば新築一戸建てや新築マンションも候補になって、家族の夢は膨らみます。
ここで気をつけたいのは、将来的な金利負担の増加です。
金融機関の設定する住宅ローンにはいろいろな仕組みがあって、一定期間をすぎた後に金利変動リスクがでてくる期間固定金利商品もあります。将来的に思わぬ金利上昇がでてきたとき、マンションや家を手放さなくてはいけない事態になったら大変です。
自己資金に余裕を持つ、変動金利商品を避けて固定金利商品を選ぶなど、住宅購入にあたっての基本的なリスクヘッジは必要でしょう。
妻が専業主婦の場合
同じ家族構成で妻が専業主婦だった場合の家計に対する影響を考えてみます。毎月の収入は夫のお給料だけになって毎月41万6,000円が入ってきます。
返済率の上限として考えたい25%を考慮した数字が毎月のローン支払いにあてられる金額でしたので、このような計算結果になるでしょう。
41万6,000円 / 月 × 0.25 = 104,000円/ 月(金利含む)
返済可能額が104,000円になると、返済期間は28年が見込まれます。妻が働きにでない分だけ年間返済額が少なくなるため、完済までにかかる期間は長くなります。
教育費は変わらずかかるものとして毎月の生活費を計算すると、次のような結果です。
41万6,000円 − 17万3,000円 = 23万7,0000円
41万6,000円 − 20万5,000円 = 21万1,000円
年収が変わると銀行など金融機関の審査結果にも影響がでてくるリスクがあり、場合によっては借入額を調整されるケースもあるでしょう。
借入額が低くなれば購入可能物件にも制限がでてきて、一戸建てやマンション選びのアプローチも変えていく必要がでてきます。予算がはっきりしていないと検討できる不動産の物件価格が決まらずに、マイホーム計画が進みません。
ボーナス返済できるかどうか、できる場合はどのくらいの金額を住宅ローン支払いにあてるかによっても、住宅費予算は変わってきます。
購入予定物件に目星をつけた後にそもそもどのくらい住宅ローン借り入れできるか考えると二度手間になりやすく、事前の調査が必要です。
夫婦共働きがおすすめ
夫婦共働きの場合には総返済期間が短くなって、家計に大分ゆとりがでます。妻の時間にゆとりがあってたくさんパートにでた月に繰上返済することも可能になると、少し背伸びした住宅価格の物件を検討することもできるでしょう。
住宅取得に関する費用は家族みんなに関わることで、夫婦で協力して負担していくのが理想です。夫だけの収入でまかなうとどうしても限界がでてくる場合でも、選択肢が広がります。
妻が正社員になって二本柱で生計をたてている家庭なら、住宅ローンの連帯債務も検討されます。どちらの所得税に対しても住宅ローン控除を使えて、税務面でのメリットが大きくなるやり方です。
取り扱いがある金融機関が限定されるところは不便ですが、固定金利で住宅ローン契約を検討しているご夫婦にはおすすめできます。
情報を確認しよう
妻も仕事をすることで返済負担率を下げることができれば、住宅ローン審査に有利に働くケースもあるでしょう。
比較的まとまった回答数が集まっている国土交通省の民間住宅ローンの実態調査(※更新日時 平成27年度)でも、年収を重要なチェックポイントとしている実態が読み取れます。完済時年齢を重視する傾向も顕著にでていて、若い年代で共働きの人たちをサポートしようという想いを反映した結果でしょう。
住宅価格については審査結果に影響しないと回答する金融機関もあって、担保評価がネックになっている場合には他社を検討するのも一案です。
住宅ローンについての情報提供を行っているインターネットの掲示板などを見る際には、閲覧数や投稿番号を確認して、情報の真偽を確かめて参照しましょう。
終わりに
年収500万円で3500万円の住宅を購入する際には、しっかりとした家計管理が重要です。退職金を使って住宅ローン完済を計画するご夫婦も見られますが、老後の生活資金を圧迫するようではやや危険な状況でしょう。
働いて一定の収入が見込まれる間に可能な限りの返済を進めて、住宅ローン残高を圧縮していく意識が重要でしょう。共働きの場合は返済期間が5年も早くなります。夫婦ともに30代や40代なら協力して世帯所得をあげることもできるため、前向きな努力が求められます。
家族の時間をどう確保していくかなど共働きをはじめるにあたって考えることはたくさんありますが、物事の優先順位をよく話し合って、相互に納得できるライフプランをたててみましょう。
まとめ
- ローン返済率は、万が一に備え25%以内に抑えるのが理想。
- ローン返済率を25%に設定した場合の生活をシミュレーションしよう。
- おすすめは、共働き。自分の年収=家族の収入は時代遅れ。