今の時代、クリエイターなんて肩書きの人はその辺にゴロゴロしている。
しかし、それらクリエイターがみな一様に儲かっていて、毎年確定申告をしているのかといえば、そういうことでもない。
ほとんどのクリエイターは本業としてやっていけないほどに困窮をしている。
加えて現在では、クリエイターを名乗ることがたやすくなってしまったことで、クリエイターそのものの価値も薄まっている。
中には「え?それもクリエイターなの?」と言いたくなるようなケースもある。
無料通話アプリのLINEでは、チャット機能に活用できるスタンプと呼ばれるイラストがある。
このスタンプのデザインは、有名無名様々なクリエイターが提供しているものなのだ。
そしてこのスタンプで一山当てれば、お金がザクザク入るとか、入らないとか。
今回は、LINEスタンプを販売している、いちクリエイターのJさんに話を聞いてみた。
誰でも挑戦できるスタンプ販売。その方法とは?
まず、Jさんについて少し書いておきたい。
彼は現在20代前半。本業は飲食の正社員だが、片手間にLINEスタンプの販売もチャレンジしようと思ったのが、2015年のことだった。
それから今に至るまで、およそ3回にわたってまとまった数のスタンプをリリースしている。
では、どうすればLINEスタンプを販売までこぎつけることができるのか。
これがまた結構めんどくさい。
第一に必要なのが、なんと言ってもウケそうなデザインのスタンプをたくさん作ること。
その際には、公共良俗に違反しないようなデザインが好ましい。そうでないと、容赦なく却下されるという。
ただし、そのガイドラインのようなものはあまり明確ではないようで、たとえばちょっとエッチなものであってもOKされることもあれば、動物が二本足で立っているだけで「裸を連想させる」というめちゃくちゃな理由でNGになる場合もあるという。
Jさんは、毎度40個ほどのデザインを考えるという。
なかなか骨の折れる作業だ。
無事にイラストを描き上げたら、次は「LINEクリエイターズマーケット」というサイトに登録する。
登録しておかないと、申請はできない。もちろん、登録は無料だ。
その後は申請だ。
大まかに言えば、「LINEクリエイターズマーケット」のガイダンス通りに入力を進めていけば、申請は完了している。
ここは別に説明するまでもないとJさんは言う。
画像をZIPで圧縮してサイトにアップロードをすれば、審査がスタートする。
後はLINE側のスタッフが対応してくれる。問題があれば理由とセットで画像が戻されるし、問題なしとみなされれば審査完了となる。
スタンプ販売までの道のりは簡単!問題は売れないこと
上記のように、LINEのスタンプを売り出すまでの道のりは非常に単純で、誰でもチャレンジすることは可能だ。
しかし、誰でもチャレンジできるということは、誰もが一攫千金を夢見てスタンプを販売しているということでもある。
現在、既に大勢のクリエイターが参入し、アマチュアだけではなく、プロもいれば人気の版権タイトルのスタンプも存在している。
しかも、スタンプをそもそも使わないLINEユーザーも多い。僕もその中の1人だ。
そんな状況に飛び込んで、毎日スタンプが何かしら売れるなどとは思わないほうがいい。
2015年からスタンプを販売しているJさんも、これまでの収益について問われると顔が曇った。
「100円、200円の世界ですね」
これは何も、Jさんだけが際立って売れていないというわけではなく、こういう人は別に珍しくもないようだ。
クリエイターも、そうでない人も、みんなが押し寄せた結果、競争率が非常に高まり、結果的に誰もが儲からない世界になっているということである。
そもそも人気アプリにぶら下がるのは勝ち目なし…
LINEスタンプも、何年か前はかなり食える気配があったという。
まだLINEのスタンプがそんなに多くなかった時期に、早々に参入したクリエイターたちは、ある程度需要が見込まれる状況で戦うことができた。
スタンプの数が多くないということは、ユーザーから自分のスタンプを選んでもらえる可能性が高かったということでもある。
だから、1000万プレーヤーも登場するなんて夢のある話もあったそうだ。
しかし今はもう、LINEはあまりに身近になりすぎた。
いまさらスタンプを揃えようとする人もいない。
みんな、ある程度欲しいスタンプは揃えてしまっているし……。
(文/松本ミゾレ)