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アニメ以外も!日本のブランド戦略・クールジャパンを徹底検証!

投稿日:2017年12月1日 更新日:


クールジャパンという言葉を最近よく耳にします。文脈で判断すると、どうも日本の格好いい部分を指しているように思えますが、しかし実はこの言葉は政府の定めた立派な政策用語であり、これからの日本の海外戦略の柱の1つになる要素なのです。

そこでここでは、クールジャパンとは何かということと、そしてその方向性及び問題点を徹底解説します。 

そもそも「クールジャパン」とは何か

Coolとはどういう意味か?

クールジャパンは英語で言えば「Cool Japan」です。英語のcoolは中学英単語的には「冷たい」ですが、俗語的な意味もあります。もとはアフリカ系アメリカ人のブルーカラー層が「格好いい」「おしゃれ」「すごい」といった意味で使っていたものが、20世紀末になっていわゆる「白人+アングロサクソン+ホワイトカラー+プロテスタント」つまりWASPのエスタブリッシュ層も使うようになり、俗語の扱いが一般用語に格上げされたのが実態です。それが日本などの英語圏以外の文化圏でも広く使われるようになりました。 

ただし「かっこいい」と言ってもルックスがいいというよりは全体の雰囲気などが「格好いい」という意味合いで使う方が多いです。たとえば以下のような使い方です。 

It’s some cool music! その曲かっこいいね! 

How do I look in this shirt? このシャツ似合ってる? 

Yeah, you look cool. うん、かっこいいよ。 

ここから広がって、ほかにも「いいやつ」「やさしい」「仲がいい」「冷静」「落ち着いている」という意味や、本来の意味をかなり離れて「Yes」「OK」「大丈夫」「平気」という意味にも使われています。たとえば以下のような会話です。 

Do you want another drink? もう一杯飲むかい? 

I’m cool. Thanks. 大丈夫、サンキュー。 

クールジャパンは海外対象の日本のブランド戦略 

ではクールジャパンとはどうい意味なのでしょうか。基本的にはその俗語の中でも派生的ではなく本来的に使われていた「格好いい」ということを指しています。それもあえて「Good Japan」「Nice Japan」はなく「Cool Japan」にしたのは、対象が比較的若い世代に向けたメッセージであることと同時に、アニメやゲームと言った多少サブカルチャー的な分野も意識しているということでしょう。 

正式な「クールジャパン戦略のねらい」は日本の内閣府知的財産戦略推進事務局が平成27年に発表した「クールジャパン戦略官民協働イニシアティブ」では以下の通りです。 

クールジャパンは、外国人がクールととらえる日本の魅力(アニメ、マンガ、ゲーム等のコンテンツ、ファッション、食、伝統文化、デザイン、ロボットや環境技術など)のことである。 

クールジャパン戦略は、クールジャパンの、(1)情報発信、(2)海外への商品〇サービス展開、(3)インバウンドの国内消費の各段階をより効果的に展開し、世界の成長を取り込むことで、日本の経済成長につなげるブランド戦略のことである。 

つまりクールジャパンとは海外に対する「日本のブランド戦略」、それも「日本=和」「日本=禅」「日本=サムライ」「日本=ゲイシャ」といった古いイメージではなく、「今風の」魅力をアピールする戦略だということが言えます。 

マーケティング戦略的には「日本の魅力」全部をクールジャパンと呼ぶ

ただし、そう言い切ってしまうと、世界において今定着している日本の魅力を否定することになってしまうので、クールジャパン戦略推進会議を構成する経済産業省商務情報政策局クールジャパン政策課では「我が国の生活文化の特色を生かした商品又は役務を通じて我が国の生活文化が海外において高い評価を得ていること」の全てがクールジャパンの対象だとしています。 

いかにもお役所的な難しい言い回しですが、クールジャパンを説明した政府の子供向けサイトでは「みんなの身近にもたくさんある、日本の魅力的なものはぜ~んぶ『クールジャパン』」ということです。 

クールジャパン戦略で行われている官民の活動は

では具体的にクールジャパン戦略はどのように動いているのでしょうか。 

官民一体で取り組んでいるクールジャパン戦略

まずクールジャパンの所轄省庁は経済産業省で、そこのいくつかの部署が「クールジャパン戦略推進事業」として管轄しています。 

その歴史はまず2001年に経済産業省の商務情報政策局に文化情報関連産業課(メディア=コンテンツ課)が設置され、紆余曲折の末に、2010年に経済産業省製造産業局に「クールジャパン室」が開設され、実務部隊としては同省の商務情報政策局クリエイティブ産業課とメディアコンテンツ課の2つが設けられてクールジャパンを推進しています。 

そして2012年には「クールジャパン戦略担当大臣」が任命され、経済産業省主催の、民間有識者と関係省庁による「クールジャパン官民有識者会議」が開催され、ここで経済産業省の出してきたクールジャパンの具体的な戦略を議論しています。このように官民一体で進めようというのがクールジャパン戦略のわけです。 

さらに実行部門として海外の人材も集めてクールジャパンの戦略を考える「クールジャパン推進会議」がクールジャパン戦略担当大臣を議長に設置されました。このメンバーには、AKB48、乃木坂46、欅坂46などのプロデューサーである秋元康などが起用されています。 

民間に対する資金援助を行う「海外需要開拓支援機構」

またこのような戦略が「掛け声だけ」にならないように、政府は具体的に民間がクールジャパンを推進する際の資金援助の組織を設けました。それが「海外需要開拓支援機構」別名「クールジャパン機構」です。 

これは2013年に設置された375億円規模の官民ファンドで、目的は日本の商品やサービスの海外需要開拓に関連する支援、促進することです。具体的には、映像や音楽などの日本のコンテンツを世界にアピールしたり、ファッションやアニメなどのコンテンツを海外に売り込んだり、和食などの日本の食文化を広げるために行う、商業施設の開発やM&Aなどの時に使われるお金です。 

日本政策金融公庫でも融資制度検討

さらに政府の方針に沿った事業に対して低利息で資金を貸し付ける日本政策金融公庫でも、海外展開を行う中小企業向けに従来よりもさらに低金利の融資制度を検討しています。 

映像コンテンツの推進事業に絞った助成金も発足

また2005年には、映像コンテンツ関連の企業や組合が政府の支援を得て、映像コンテンツ産業に関係した教育制度の構築や、作品の制作費用の援助、海外の市場開拓などを行う「映像産業振興機構」も設立されました。 

この組織の具体的な仕事は、「ジャパンコンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金」(略称:J-LOP)の運用です。これは、映画、テレビ番組、アニメなどの映像コンテンツやそこで使われるキャラクターなどを海外展開するために、字幕や吹替えなど「ローカライズ」する事業、あるいは国際見本市への出展やPRイベント実施などの「プロモーション」をする事業にかかる費用を助成するということです。 

どのジャンルをクールジャパンとして推進しているのか

以上、官庁関連の情報でしたのでかなり堅苦しい話になりましたが、では具体的には何を世界に売り込んでいくのがクールジャパンなのでしょうか。 

ゲーム分野では何がクールジャパンとして売り込めるか

実は現状ではクールジャパンの輸出売上としての稼ぎ頭はゲームです。あるデータによると、クールジャパンのコンテンツ全体の輸出額のうち98.5%がゲームによる売上だと言います。 

具体的に輸出売上をしめるのは、家庭用ゲーム、PCゲームなどのいわゆる「和ゲー」といわれる日本ゲームのゲームソフトを各ゲームメーカーが海外向けに作り直して輸出しているゲーム事業です。これは任天堂を初めとしたゲーム産業、ゲーム業界がその企業の収益的にも大きな柱としている事業です。 

ゲームジャンルとしてはロールプレイング系、格闘系、アクション系などです。日本のゲームデザイン力がかなり優れている、という証でしょう。 

アニメ分野は期待値ほど稼いでいない

日本のアニメは、2002年のアカデミー長編アニメ映画賞を宮崎駿監督、スタジオジプリ制作の「千と千尋の神隠し」が受賞し、2017年には「君の名は。海外で注目されたように、非常にクールジャパンの戦略的な商品としては優れているように思えます。しかし実際のコンテンツ輸出売上の中では全体の1.5%しか稼でいないというデータもありのです。つまり、日本人はアニメを現代世界に通じる最大の日本文化だと考えていますが、「攻殻機動隊」も「美少女戦士セーラームーン」も「機動戦士ガンダム」も海外ではが期待しているほどウケていないということです。 

それはなぜかというと、日本人がいいと思うアニメと海外での評価が完全にアンマッチだからです。具体的には株式会社ネオマーケティングが行った日本人の20歳~49歳の男女を対象にした「どのアニメが海外でウケると思うか」という調査では以下のようになっています。 

  • 1位 ドラゴンボール56.3% 
  • 2位 進撃の巨人55.7% 
  • 3位 新世紀エヴァンゲリオン53.2% 
  • 4位 ONE PIECE 53.0% 
  • 5位 NARUTO 48.8% 

引用元:DIME 

しかし実際に海外のアニメ専門情報サイトの「Anime News Network」が視聴回数と内容に対する評価の両面でスコアをつけた結果、日本のアニメの中で海外でウケているというものは以下の作品になりました。 

  • 1位 鋼の錬金術師 – Fullmetal Alchemist – 
  • 2位 デスノート – Death Note – 
  • 3位 カウボーイビバップ – Cowboy Bebop – 
  • 4位 千と千尋の神隠し – Spirited Away – 
  • 5位 涼宮ハルヒの憂鬱 – The Melancholy of Haruhi Suzumiya – 
  • 6位 もののけ姫 – Princess Mononoke – 

引用元:Anime News Network

いかがでしょうか。日本人がウケると思っているものと実際にウケているものが全く違うということがお分かりいただけましたか。ここから類推すると、日本のアニメ業界、アニメ産業は海外のアニメに対するニーズをほぼ全く把握していないということです。したがって、海外で売れるアニメが作れないので、コンテンツ輸出が伸びないのです。これではアニメはクールジャパンの柱にはなり得ないでしょう。 

漫画分野も日本の認識と海外の評価がずれている

日本の文化の象徴の1つは「鉄腕アトム」から始まるマンガです。しかしそれも日本人が思っているようなウケるはずのマンガと実際に海外でウケているマンガにはズレがあります。上で挙げたものと同じ出典のデータで比較してみましょう。 

まず日本人がウケると思っているマンガは以下の通りです。 

  • 1位 ドラゴンボール53.8% 
  • 2位 進撃の巨人51.9% 
  • 3位 ONE PIECE 49.6% 
  • 4位 NARUTO 46.1% 
  • 5位 DEATH NOTE 31.0% 

引用元:DIME

これに対して海外でウケているマンガは以下の通りです。 

  • 1位 ベルセルク 
  • 2位 モンスター  
  • 3位 風の谷のナウシカ 
  • 4位 ヴィンランドサガ 
  • 5位 ヨコハマ買い出し紀行 

引用元:Anime News Network

意外にニッチなニーズの作品がウケているという印象があるほど、むしろ海外のアニメファンの目は肥えているのです。その眼力にふさわしい作品を作らない限り、マンガもクールジャパンの推進力にはなり得ないでしょう。 

映画分野のクールジャパン戦略は全く進んでいない 

コンテンツ産業やコンテンツ業界が、さらに期待しているジャパンコンテンツは日本の映画です。しかしこれはアニメや漫画以上にまったくクールジャパン戦略としては進んでいません。 

それはなぜかと言うと、構造としてはアニメやマンガと同じ海外ニーズをとらえていないということです。ただ少しそれらと違うのは、現場で映画を制作している監督たちには日本の映画ニーズと海外の映画ニーズは違っていることが分かっている人が多いということです。にもかかわらず、映画はそのための官民ファンドが作られたことでもわかるように政府が非常に力を入れているジャパンコンテンツであるため、その戦略は映画にも宣伝にも疎い官僚が進めているところがズレを招いている最も大きな要因です。 

たとえばそれは、官民ファンドの産業革新機構が60億円の出資をした官製映画会社「All Nippon Entertainment Works(ANEW)」が強く推し進めた映画企画の「オトシモノ」が監督選びで頓挫、「ソウルリヴァイヴァー」「藁の楯」「TIGER & BUNNY」が脚本製作段階でストップしてしまったことに現れています。唯一製作できたのは「大空魔竜ガイキング」のみですが、これももともとは「ターミネーター」を手がけたアメリカ人プロデューサーが企画開発したところにANEWが参画しただけと言います。 

その結果ANEWは 6年で約18億円の赤字を出してしまい、結局国内の映像制作会社に売却されてしまいました。つまり官民一体というよりは有体に言って官主導の映画製作は全く進んでいないどころか、大失敗の連続なのです。これではクールジャパン戦略の最大の柱にはなりようもありません。 

ですからクールジャパン戦略そのものはいいとしても、以上述べたような現状をしっかり把握したうえで、課題を解決し、本来の目指す目的の達成に向かって、官民一体よりは「民主導」で進んでいく必要があるでしょう。 

クールジャパン戦略の課題整理

ではこのような現状の中、クールジャパンは何を課題と考えていけばよいのでしょうか。最後に簡単にまとめておきます。 

海外の日本コンテンツに対するニーズの的確な把握

まずは海外で何がウケるかということをすべてのコンテンツでしっかりとニース調査したうえで戦略を検討する必要があるでしょう。 

「官民一体」ではなく「民主導、官支援」の体制に 

特に映画分野においては、現在のような実態として「官主導」である「官民一体」のクールジャパン戦略推進ではなく、「民主導、官支援」の進め方に変える必要があるでしょう。そもそも海外でウケそうな企画は民間の方がよく分かっているので、そのようなものは政府主導のファンドに頼らず自前の資金で具体化し、官民一体の方に回って来る企画は結果的に「二線級」になっているという指摘もあります。ですから資金援助の方法に関しても大きく検討の余地があるでしょう。 

食や観光のなどの日本文化のPR不足

現在のクールジャパン戦略はアニメとゲームの推進に大きく依存しています。その一方で、クールジャパンの定義の中にも触れられている日本の食文化の海外推進には政府はあまり注力していません。しかし、和食は世界文化遺産に登録されたようにすでに海外において一定の高い評価を得ているのですから、これを柱にしないという手はありません。その意味で、もう少し日本の食文化もコンテンツ輸出と、インバウンド推進の文脈で強化していく必要があります。 

 パクリ、海賊版の蔓延

むしろ政府が主体的に取り組むべきは日本文化、日本コンテンツの知的財産権をいかに保護していくか、ということです。海外で膨大に作られる日本コンテンツのパクリ問題、海賊版問題でがそれです。ジャパンブランドの価値を守り、正しい価格で売れるようにするためには、ディズニーなど多くのブランド重視企業が、全精力を上げて版権や知的財産を保護しているように、日本政府も全力で知的財産の保護と、そしてその上での売り込みをかけていく体制が必須です。 

劣悪なアニメ制作環境 

また政府がもう1つ取り上げるべきは、今後クールジャパンの柱にしたいアニメ産業の劣悪な就業環境の改善です。「アニメーション制作者実態調査報告書2015」によれば、動画部分を担当するアニメーターの平均年収は111万円と一般の会社員の1/4以下です。それでいて、平均労働時間は月262時間とまさに過労死領域です。350時間以上残業している人も全体の15%とまさに「蟹工船」状態です。好きでしている仕事だとは言え、これでは優秀なコンテンツを創造できる人材は育ちようがありません。この点の改善なしで、アニメがクールジャパンの柱になることはないと言ってよいでしょう。 

 まとめ

いかがですか。 

第2次産業の主体が東南アジア諸国に移ってしまい、国内の成長産業が空洞化しつつある日本においては、クールジャパン戦略は国として新たな「食い扶持」の創造でもある、重要なものです。そのために各種の制度や組織は作ったものの、運用方法やマーケティング的な観点では不足部分が多数みられるのも事実です。

ですからその部分を今後いかに改善させ、民間の力を活用して推進できるかがクールジャパン戦略の成功のカギを握っていると言ってもよいでしょう。 

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