以前、アーティストのスガシカオさんがtwitterで、「ダウンロード販売は赤字になるから、CDを買ってほしい」とつぶやいていました。CD不況の時代においてアーティストが抱える課題は、楽曲を販売して制作費を回収する方法を考え、次の作品につなげることだと言えます。
職業音楽家にはシビアなバランス感覚も必要
元々、スガさんはサラリーマンだったことにくわえ、2011年に事務所から独立してインディーズ活動を始めました。だから、メジャー事務所に所属するアーティストよりも、音楽の売上に対してシビアだと考えられます。
インディーズで活動するバンドマンは、彼のような職業音楽家としてのバランス感覚は必要だと思います。一定の経営センスがあると、バンド活動を有利に進められるからです。
鋭いビジネス視点を持ちながら、彼のように本気で音楽活動をしている方からは、「ぶっちゃけ、ダウンロード販売ってどのくらい儲かるの?」と、疑問をお持ちかもしれません。
じつは、アメリカではCDやダウンロードを販売した場合、どのくらいの枚数で生活費を捻出できるかという調査がすでに行われています。
CD販売vsダウンロード販売
今回参考にしたのは、音楽ビジネスブログTHE CYNICAL MUSICAN内の『The Paradise That Should Have Been』という記事です。「最低賃金である108,000円を捻出するためには、1か月あたり何枚のCDまたは楽曲が売れたらよいか」という内容でした。元となる調査結果はソロ・アーティストの場合なので、メンバー数に応じて計算してみましょう。
・自費制作のCDアルバム 約900円で販売
143枚のCD販売(1枚約800円の利益)
※初期費用として1曲のレコーディングに40,000円かかる見込み
・自費制作でダウンロード販売 約900円で販売
155枚のダウンロード販売(1枚約700円の利益)
※初期費用として1曲のレコーディングに40,000円かかる見込み
・レーベル所属でダウンロード販売 CDbaby(iTunes経由)
アルバム170枚分の楽曲販売(1曲60円の利益)
※レコーディング費用はレーベル負担。レーベル2:アーティスト1で配分
・ダウンロード販売 Amazon(iTunes経由)
アルバム1,033枚分の楽曲販売(アルバム1枚分で100円の利益)
※レコーディング費用はレーベル負担。レーベル2:アーティスト1で配分
・レーベル所属でダウンロード販売 ナップスター(iTunes経由)
アルバム1,229枚分の楽曲販売(アルバム1枚分で100円の利益)
※レコーディング費用はレーベル負担。レーベル2:アーティスト1で配分
参考元のデータが海外という点も関係しているのか、ダウンロード販売のほうが利益が出るケースもあるようです。しかし、Amazonでダウンロード販売する場合、CDの10倍近く売れないといけないことは分かりました。
このことから、アーティストが楽曲制作に集中できる環境を作るためには、ダウンロードよりもCDのほうが確実だと考えられます。
アーティストのホンネは「聴いて欲しい!」
「ダウンロード販売とCD販売、どちらのほうがいいですか?」というファンの問いに対し、スガさんは、
「アーティスト的にはCD買ってくれた方が、将来につながります」
とリプライ(返信)していました。CDでもダウンロードでも嬉しいようですが、音楽を職業にする人からすると売上が出ないのは死活問題なので、難しいところでしょう。
多くのバンドマンは、CDがたくさん売れたほうがよいというのがホンネです。しかし、創作意欲をもとに生まれた作品なので、とにかく聴いて欲しいという気持ちもあるかもしれません。少なくとも、私は今回の記事を執筆しながら、「売れる」よりも「評価して欲しい」と思いました。
じつは、現在hiyorimi(私が活動するバンド)は鋭意レコーディング中です。CDを買ってくれなくてもいいから、聴いて、感想教えてください!