シナリオライター(脚本家)は作品のストーリー仕立てと、どのような展開で進めて行くかの構想を担う仕事をしています。具体的にはテレビドラマ、映画、舞台演劇、ラジオドラマ、漫画、アニメーション、テレビゲーム、そして、インターネットのゲームなどまでがその範疇に入ります。
シナリオライターは作品中の登場人物、舞台設定、行動やセリフ、心理的描写など、作品を形作るすべての情報を盛り込むことで、シナリオを作り上げます。
そこで特に、ゲームとアニメに関してのシナリオライターの背景を紹介いたします。
【この記事の目次】
シナリオライターの仕事
シナリオライターの仕事は作品を書くにあたり、監督、プロデューサーとの打ち合わせからスタートし、ストーリーのテーマや展開を確認した上でシナリオを作成していきます。
とうぜんのことながら、テレビドラマ、映画、舞台演劇、ラジオドラマ、漫画、アニメーション、テレビゲーム、そして、インターネットのゲームなど、それぞれの作品によってシナリオの細部は違ってきます。
例えば、アニメのシナリオか、ゲームのシナリオか、あるいは、映画やテレビの実写映像なのかによってアプローチの方法も違いますし、シナリオそのものの書き方も当然異なってきます。
となれば、アニメをメインにするシナリオライターと、ゲームをメインにするシナリオライターは範疇が違うことになり、両者とも得意とする分野に特化したスキルを身に付けて、シナリオにチャレンジすることになります。
アニメのシナリオライターの仕事
アニメ作品は、まずは監督とシナリオライターが構想とあらすじを練るところからスタートします。オリジナルの場合もありますが、中には他に原作があって、それをベースにしてストーリーを作っていきます。
そして、全体を統括するプロデューサーの意見を取りながら推敲し、最終的あらすじを決めた後、ストーリー、キャラクターの設定をイメージ付けしてシナリオに落とし込みます。
ここまで来ても、これが決定稿になったわけではなく、プロデューサーや監督からのチェックが入れば、書き直しは当たり前で、このようなやり取りを数回経て、やっと最終決定稿になります。
ゲームシナリオライターの仕事
ゲームシナリオライター、読んで字のごとくゲームのシナリオを仕上げるライターのことです。アニメのシナリオライターとは違って、企画段階から参加するシナリオライターもいれば、キャラクターやストーリーに合わせた部分を書くライター、あるいは、あらすじをベースに書くライターもいます。
場合によっては、ディレクターがシナリオライターを兼任することもあります。
ゲームシナリオの特徴はコンピュータプログラムとしてゲーム内の演出も加味しなければならず、通常のシナリオに見られるようなセリフ回しや、ト書きといって場面や状況描写を細部にわたって説明するようなことはありません。
あくまでも、ゲームの上でのストーリーを展開することになりますので、シナリオ構成だけでなく、ゲーム特有のフローチャート・フラグ(ストーリーの分岐)知識が必要になります。
また、文字の表示や声のROM容量などハードを意識したシナリオが、ゲームシナリオには必要になります。
シナリオライターに必要なスキル・センス
アニメやゲーム業界でじゅうような役割を果たしているのがシナリオライターです。ストーリーの展開、登場人物のセリフ、ヴィヴィッドな感情を生みだす表現など、実際に視聴する人やゲームを楽しむ人たちに感動を与えるのは、偏に、シナリオの出来次第によるところが大きいのです。
つまり、シナリオ以外の演出や演技、ゲーム内容や操作上の意外性があったとしても、シナリオに面白みがなければ、折角の作品も評価されることはありません。
ということで、シナリオライターにはどのような好きり・センスが必要になるのでしょうか。
文章表現能力
シナリオライターは、基本的には文章力があることが前提条件になるのは言うまでもありません。
というのも、例え知識と経験があったとしても文章で表現できなければ意味がありません。
シナリオには構成力が必要です。しかしながら、それだけでいいシナリオが出来るわけではありません。シナリオを活かすには、その構成されたイメージをしっかりと伝える文章力・文体が必要になります。
つまり、作品の企画段階で目指したテーマ、ストーリーを具体的に表すには文章力がポイントになります。例えば、アニメのシナリオの場合、原画マンや動画マンをはじめ関係スタッフに文章でしっかりと伝えることができれば、作品に影響することは申すまでもありません。
一方のゲームの場合でしたら、キャラクターを際立たせるためのセリフやストーリーの地の文を、声優さんと共有できることが大切で、それが視聴者に感動を与えるポイントになります。
つまり、シナリオに対するイメージ・構想力と同じくらいに文章力・文体は重要な要素になるというわけです。
作品の構成力
面白い作品にするためには文章力だけでなく構成力が必要になります。シーンの組み立てを、文章力を背景にして作りあげていく力とでも言いましょうか。
ストーリーの展開をあらかじめプロットとして打ち出すには、全体を見通し魅力的なシーンの組み立て方がポイントになります。そこで必要なのが構成力ということになります。そして、最終的にストーリーが完成されるというわけです。
中にはストーリー性はあるにも関わらず、面白みや感動を与えられない場合がありますが、それは魅力的な組み立てができないことが原因になっています。つまり、構成力に欠けていることを物語っていることになります。
アニメのシナリオには様々なジャンルがあります。例えば、ファミリー、ギャグ、SF、ホラー、ファンタジーなどがありますが、実際にはテレビや映画の実写版と変わることはありません。キャラクター、背景、ストーリーの世界観など、直観と論理的な整合性を噛み合わせて構成が作られます。
ゲームのシナリオはアニメのモノと大きく異なるポイントは、ストーリーの展開で必ず分岐点があることです。そこで岐れた先には違ったストーリーが待っています。このように分岐した後のストーリーの展開は、幾つもの伏線を要しなければなりません。
この点がアニメのシナリオライターにはありません。それに加えて、ゲームのプログラミングの知識も必要となります。
知識・経験の上を出る発想力
様々なストーリーを生みだし、気の利いたセリフ回しを活かすにはシナリオライターの発想力が重要になります。
このような発想力を手にするためには、ゲーム、アニメを含めて多くの作品から学ぶことが大切で、中でも、シナリオに注目しながら場面の展開、セリフ回しなどを意識し、それに自分の創造なども加えて考えてみることも発想力を鍛えるにはいいかも知れません。
つまり、幅広いジャンルの小説もそうですし、映画、ゲームを参考にして自分流の表現と比較しながら、これまでの経験や知識の一歩前に出る、あるいは上に出る発想力を身に付けることが大切になります。
観察力と分析力
シナリオライターはストーリーを作る際に序破急(じょ・は・きゅう)という手法を考えます。
序は作品の導入部で、ストーリー展開に必要な登場人物や出来事を提示して視聴者を引き込みます。
破はストーリーが新たな展開を起こしたり、転換したりする部分です。何か面白くなりそうだぞ、という期待感を視聴者に植え付けます。
急はストーリーの結末部分にあたります。視聴者に感動、爽快感と満足感を与える部分です。
このようにストーリーには序破急の構成要素を取り入れて、視聴者の心を打つようなシーンや背景、そしてセリフを繋ぎ合わせて行くのですが、その時に大事なのが周囲の人に対する観察力や、人の機微に対する分析力などが必要になります。
シナリオライターの雇用形態
シナリオライターの雇用形態はいくつかのパターンに分かれています。例えば、
- アニメやゲームの制作会社の社員としてのシナリオライター
- フリーランスのシナリオライター
- シナリオ制作会社に属するシナリオライター
制作会社の社員として仕事をする場合は正社員の場合もありますし、契約社員の場合もあります。フリーランスの場合は個人事業主として一人で仕事を受ける人もいれば、フリーランスの人がまとまってシナリオ制作会社を立ち上げ、そこで仕事を請け負う場合もあります。
つまり、発注者側の期待に応えられる体制を作ることで安定した仕事を受けようとしているわけです。
気になるシナリオライターの収入
シナリオライターの収入はどのようになっているのでしょうか。シナリオライターが新人なのか、それともベテランなのかによって収入は違ってきます。もちろん、業界によっても違ってきます。
例えば、映画の場合でしたら1本100~500万円、テレビドラマでしたら普通は1分の放送時間たり1万円で、平均的には60~100万円程度とされています。したがって1クール(13週分)の場合では800~1,000万円ほどの収入になります。
アニメのシナリオライターの場合は、1話について約20万円前後が普通で、先の1クールにした場合、200~300万円程度なりますが、数人で担当することが多いことから、実際には、もう少し低くなることがあります。
アニメのシナリオライターは映画やテレビドラマに比較すると、設定が安くなっていることから、ある意味で厳しい世界ということができそうです。
ゲームのシナリオライターは、どちらかいうとゲーム会社に所属していることから年収は平均して400万円程度と見られています。特に、専門知識が必要とされるため経験者に厚くなっているのが普通です。
また、フリーランスの場合では、1文字いくらという設定もあり、普通は1文字2~2.5円というように言われています。
このようにシナリオライターの収入もピンからキリまであって、若い人では250~300万円平均的な年収ですが、一方で1,000万円以上稼ぐ人もいます。シナリオライターの世界はあくまでも個人の能力がモノを言う能力主義社会になっています。
シナリオライターの年収については、類推数字は結構ありますが、確かな統計数字が見当たりません。したがって、ここでは不確かな数字を示すことはできませんので、数字を示すことはしないことにいたします。
インターネット上のシナリオライターの募集広告を見ると年収300~500万円程度の要項が一番多く、時代の気分からいって、ゲームを主体にしたシナリオライターの需要は相当数あるように思われます。
シナリオライターになるには
シナリオライターになるには、どのようにすればいいのでしょうか。先にも示したように
- 文章表現能力
- 作品の構成力
- 知識・経験の上を出る発想力
が必要になります。
シナリオライターを目指す人は、これを身に付けることがポイントになります。そして、そのポイントをどのように手にすればいいのでしょうか。
シナリオスクールに通う
シナリオライターになるにはいくつかの方法がありますが、最も多いのがシナリオスクールに通うことです。現在第一線で活躍するシナリオライターの中には、シナリオスクール出身者が多く見られます
シナリオスクールでは、シナリオ作家に必要な系統だったカラキュラムに則って、知識、技術を学ぶことができます。さらに、アニメやゲームの現場との接点も多く、関係者との接触が期待できるメリットがあります。
当然のことながらシナリオスクールで学んだからと言って、必ずしも就職できたり、仕事にありつけたりするわけではありませんが、とはいっても、チャンスになることは言うまでもないわけで、うまく生かすことが大切になります。
シナリオスクールのカリキュラム
- キャラクター作り方
- ストーリーとプロット
- 構成とハコ書き
- 原稿の書き方
- セリフとト書き
- アニメシナリオの書き方
- ゲームシナリオの書き方
- 劇画原作のシナリオ
- 名作映画からシナリを学ぶ
- 連続ドラマの手法と放送
- テレビ、映画、舞台上での表現のポイント
- 現場からの声
- ドラマ作法
- 作品指導
このような講習を受けることで、シナリオの技術的な面を含めて、最低限必要なことを学びますが、それ以降は本人の努力ということになります。
独学でチャンスを作る
シナリオを独学で勉強しようとする人も結構多く見られます。のちろん、仲間を集めてお互いに刺激し合いながらドラマやアニメを初めとする、いわゆる若きシナリオライターを目指している人たちです。
これまでのシナリオ分析し、どのような構成、表現を研究し、最終的にはシナリオを作りあげ、テレビや映画の制作会社、プロデューサーなどへの売り込み、あるいは企画コンペンやシナリオ募集などへの応募を通してチャンスを待ちます。
ゲームシナリオライターはプログラミングのスキルが必要
ゲームシナリオライターにはシナリオもそうですが、それ以外にゲーム開発のスキルやプランナー技術、プログラミング技術を習得することがポイントになります。その上でゲーム制作会社に就職するのが普通で、その場合プランなの役割とシナリオライターの兼任することが多いようです。
その他には、キャラクターデザインのためのグラフィックのスキルも必要となります。
シナリオライターの養成講座とシナリオコンテスト
主だったシナリオライター養成講座と、アニメシナリオコンテストをあげておきます。
シナリオライター養成講座
- シナリオ作家養成講座:シナリオセンター
- 社団法人シナリオ作家協会 シナリオ講座:社団法人シナリオ作家協会
- 日本脚本家連盟 ライターズスクール:日本脚本家連盟
アニメシナリオの募集
- アニメシナリオ大賞:アニマックス
- 京都アニメーション大賞シナリオ部門:株式会社京都アニメーション
- IGポートグループXEBEC賞:株式会社マッグガーデン
シナリオライターは時代の気分の表現者
シナリオライターになる人は、他の人に比べると好奇心が旺盛で、何にでも興味を持って首を突っ込みたくなる性格を持っています。そのうえに視点の置き方が鋭く、物事を捉えるポイントを心得ています。
当然のことながら趣味の幅も広く、ジャンルを問わず掘り下げる力があるので、知識量もさることながら群を抜く経験値を有しています。
この好奇心と経験値への関心に高さが、特徴のシナリオライターが実際にシナリオを書く際に、非常に重要な役割を果たします。というのも、シナリオ作成においてはシナリオライターのセンスと時代の気分を見通す力が重要になるからです。
シナリオライターは思考力に柔軟性があるので、時代の気分の一歩先を行く事象にポイントを合わせ、常に、アニメの視聴者や観客、ゲーム挑戦者の心に響くセリフやシーン、行動を念頭に置いてシナリオを書く、時代に気分の表現者ということができそうです。