先日、管理職に昇進すると10万円程度の手当が付く可能性があるとお話しました。しかし、年収が増えることは本人の幸せに直結するのでしょうか。今回は、技術を身につけて活躍する、専門職という生き方について考えてみました。
専門職手当は年齢との相関関係がない
専門職手当は、その名の通り専門的な技術に与えられる手当です。そのため、年齢に関係なく誰でももらえるのが特徴だと言えます。
技術と年齢の関係性が薄いことで顕著なのはIT業界です。リクナビNEXTの調べによりますと、20代後半の専門職手当は平均8.4万円だったにも関わらず、40代になると平均4.8万円しかないという結果も出ています。業種によって異なりますが、管理職手当と比べると、専門職手当は10万円程度月収が低いこともしばしばあります。
一例として、私が働いているIT系の職種の月収を見ると、さらに極端な差が生まれるようです。40代前半の管理職(部長クラス)は75.3万円、専門職は37.5万円という結果が出ました。このように、専門職は管理職と比べて月収面で大きく劣ってしまうのが現実です。
収入よりも重いストレス
40代管理職の声を聞くと、彼らは多大なストレスを背負っているのだそうです。40歳を過ぎると、会社の中での評価がある程度固まってきます。出世できるかどうか、40歳前後でほとんど決まってしまうと言っても過言ではありません。
しかし、40歳を過ぎてからの転職は多大なリスクを伴います。転職先が見つからないことも多いです。転職して年収アップに成功する可能性もありますが、「転職先の会社から過度の期待を受けたものの、その期待に応えられずに退職してしまう」というケースもあるようです。このような話を聞くと、退職できず、同じ職場に残って働く以外の道がなくなってしまいます。
出世コースから外れてしまった場合、管理職というポジションに与えられる責任は増すにも関わらず、給与はあまり上がらないという状況になる可能性は高いです。経営陣からのプレッシャーも重くなるので、管理職という社会人人生は、給与に対して意外と不幸なのかもしれません。
専門職に対する満足度は高い
会社で生き残る道は管理職だけではありません。職務スキルを磨き、専門職として会社でのポジションを固めていくという選択肢もあります。
技術志向が強い方は、管理職よりも専門職のほうが楽しく仕事ができると言います。また、管理職と違って実務に携わることから、残業手当がきちんと支給されるケースも多いです。近年は高い技術を持った専門職を管理職と同等に評価する会社もあるため、月収の面でも充実するかもしれません。
先述のリクナビNEXT調査によると、専門職手当に「満足している」と回答した人は35%に上りました。一方、管理職手当は18%しか満足しておらず、専門職より幸福度は低いかもしれません。
欲しいのは収入よりも満足度?
管理職が受ける精神的なプレッシャーは、他人とのコミュニケーションから発生します。専門職のストレスは、「作業ができる・できない」と、自分に対して向き合うことなので、人間関係のストレスと比べると楽です。向上心がある方からすると、自信を持って乗り越えることができると思います。
「自分が動くよりも、人に動いてもらう方が難しい」という苦悩は、管理職になったら誰しもが経験することでしょう。管理職手当や基本給で少し収入が増えたとしても、人を動かすことの難しさによるストレスの方が大きいものです。
自分が好きなことを追求する専門職は、管理職と比べるとストレスが少なく、幸せかもしれません。近年は、専門職と管理職に対する年収の評価もあまり変わらなくなりました。昇進するばかりが人生ではないので、自分の好きなことを貫くのもよいでしょう。