「日本は多くの国債発行をして借金まみれだから、このまま財政危機の状況が続けば国家破綻する」という人がいらっしゃいます。果たして日本は本当に国家財政危機で、財政破綻の可能性は高いのでしょうか?この記事では、日本の財政について検証します。
日本がデフォルトしそうになるとどうなる?
低金利のこの時代、預金をしてもお金は一向に増えません。そこで低リスクの資産運用の方法として、国債投資をしている人がいらっしゃいます。国債投資は日本が破綻しない限り紙切れになることはないため、安全資産だと考える投資家は多いようです。
一方で、金融危機が過熱し、国内債務が増え続けることで、政府債務不履行となる可能性を示唆する人もいらっしゃいます。日本が破綻すれば、国民生活にも大きな打撃となるため、関心事としている人も多いでしょう。
しかし、国が破綻するということを具体的に理解している人は少ないようです。一体国が破綻しそうになった場合には、どのようなことが想定されるのでしょうか?
日本のデフォルトとは
そもそも、日本のデフォルトとはどのような状態なのでしょうか?個人であれば借金が返せなくなった場合には、自己破産をしますが、国の場合にはイメージが付かないかも知れません。
国のデフォルトとは債務不履行のことを指します。平たくいえば、借金が返せなくなることです。国債には償還期限がありますので、国債を発行した国は、償還期限を迎えると元金と利息を支払う必要があります。もしも元本や利息が払えない場合にはデフォルトとなり、国の財政が破綻したということになるのです。
通貨が下落する
日本がデフォルトとなった場合には、日本の通貨である円の価値が下がります。つまり、激しい円安となることが予想されるのです。円高と円安がよく分からない人のために簡単な例を出すと、1ドル100円から1ドル200円になると円安です。
今までは1ドルのものを100円出せば買えたのが、円の価値が下がったために、1ドルのものを200円出さないと買えなくなったということです。その結果、輸入商品が極端に高くなるため、輸入企業は対策しなければなりません。
ハイパーインフレになる
日本がデフォルトになりそうな場合、ハイパーインフレになるという経済学者もいます。ハイパーインフレになると、モノの価格が極端に上昇するため、ちょっとしたものを買うだけでも大金を持って行かなくてはならないでしょう。
ハイパーインフレとは、年間で物価が130倍以上になったことを指します。100円マックが1万3,000円になるほどのインフレです。そのため、財政再建と同時にハイパーインフレ対策が必要だという声もあるようです。
ちなみに、ブラジルではハイパーインフレによって物価が2兆倍を超えたことがあります。想像がつかないかも知れませんが、ひとつ言えることとしては、このような事態となった場合、銀行にどれだけ預金が入っていたとしても、ただの紙くず同然となってしまうのです。
外国への借金は続く
もしも日本がデフォルトとなったとしても、外国への借金は返す必要があります。日本国債は多くの海外投資国が購入しています。日本がデフォルトした場合、債権国との話し合いをし、償還期限を伸ばすなどの対策を取りながら、継続的に返して行かなければならないのです。
日本はデフォルトする可能性があるの?
日本は大きな負債を抱えていると、連日のように報道されています。このような報道を見ていると、いずれデフォルトが現実に起こってしまうような気がするのではないでしょうか?デフォルトをしてしまうと、預貯金がないに等しくなるため、不安に感じている人も多いかも知れません。
では、本当に日本はデフォルトする可能性があるのでしょうか?結論からいいますと、日本がデフォルトをすることはあり得ないでしょう。なぜあり得ないのか、その理由を紹介します。
変動相場制の国のデフォルトはあり得ない
日本がデフォルトをすることがあり得ない理由は、日本が変動相場制の国だからです。円を他の国の通貨とトレードする場合に、円高になったり円安になったりする変動相場制の場合には、理論上デフォルトがあり得ないのです。
もし日本がデフォルトの危機に直面した場合、信頼の失墜から日本円は大きく価値を下げることになります。極端な円安となれば、トヨタのような輸出企業の製品が海外で爆発的に売れ、これらの企業の株価も一気に上昇することになります。結果的に、日本の財政が持ち直すことにつながるのです。
財務省もデフォルトがないと認めている
日本がデフォルトになることがあり得ないということには、実は裏付けがあります。このような経済学の仕組みを議論する場合には、往々にして経済学者の理論が取り上げられがちですが、個人の経済学者の意見ではなく、とある権威のあるところがこの裏付けを打ち出しているのです。
とある権威のあるところとは、一体どこなのでしょうか?実は財務省です。財務省が、日本がデフォルトになることはあり得ないと発表しているのです。財務省の公式サイト「外国格付け会社宛意見書要旨等について(2002年)」で詳細が書かれていますので、ご興味のある方はチェックしていただければと思います。
そもそも日本は借金まみれなの?
日本がデフォルトにならない理由は、そもそも日本が借金まみれなかを検証することでも見えてきます。日本は多額の借金をしているといわれているものの、そこには重要な誤解があるからです。
ここでは「日本の借金はトータルいくらなのか」「国民が借金しているとの誤解」「日本にはたくさんの資産がある」について詳しく見て行きたいと思います。
日本の借金はトータルいくら?
あなたは日本がいくら借金をしているかご存知でしょうか?財務省が発表している平成27年度「国の財務書類」の概要によると、日本の負債はおよそ1193.2兆円あるとされています。
国の負債(27年度末)
- 未払い金:11.8兆円
- 政府短期証券:86.4兆円
- 公債:917.5兆円
- 借入金:29.9兆円
- 預託金:5.6兆円
- 責任準備金:9.7兆円
- 公的年金預り金:115.9兆円
- 退職給付引当金など:8.0兆円
- その他負債:8.5兆円
- 合計:1193.2兆円
確かにこれだけで見ると、多額の借金をしているように見えるかと思います。
国民が借金しているとの誤解
よく国の借金のことを「1人当たりいくら」と表現されることがあります。日本の人口は1.27億 (2016年発表)で、国の借金が1193.2兆円であるため、1人あたり900万円以上の借金があると考えられているようです。
これを聞いて「こんなに借金があるのか!」と考える人もいらっしゃるようですが、実はそうではありません。確かに国はこれだけの借金をしているかも知れませんが、国民はどちらかというと貸している側(国債を購入している人は)なので、国民の借金ではないと解釈ができるのです。
日本にはたくさんの資産がある
日本の借金は地方も合わせると、1,200兆円ほどの借金があるのですが、実は資産もたくさん持っています。さきほど紹介した「国の財務書類」によると、政府の資産は672.4兆円(27年度末)あります。
また、日銀は政府の手形を400兆円以上保有していますので、統合政府という考え方でいくと、およそ1,100兆円の資産があるのです。つまり、純債務としては100兆円程度であり、アベノミクス効果で年間50兆円ほど純債務が減っているので、日本の財政再建はほぼ完了しているといえるでしょう。
このようなことからも、日本がデフォルトするということは、考えにくいということができます。
まとめ
日本は借金大国といわれており、デフォルトの可能性を指摘する声もありますが、変動相場制の国はデフォルトになることはあり得ませんし、日本の場合は資産もたくさん保有しているので、デフォルトになる可能性はほぼないと考えることができるでしょう。
無理に日本円を外貨に変える必要はないかと思いますので、参考にしていただければと思います。