臨床心理士は心の問題を持つ人に対し、カウンセリングを実践することにより、一緒に問題解決をして行く仕事です。
心の問題の原因は人それぞれです。職場の人間関係や家族関係、お金の問題や健康の問題など、さまざまな原因によって心のバランスが崩れてしまうことがあるようです。
その症状は軽度の悩みから、多くの人を悩ませているうつ病、突然パニックを起こしてしまうパニック障害など、人によってさまざまな症状が現れます。家族や友人や同僚にも相談できず、一人で悩むケースも多く、そんな時にカウンセラーが相談相手となります。
広い意味ですと、日本のサラリーマンの3分の1はうつ病であるといわれることもあります。休み明けの朝に仕事に行くのが億劫になった経験はひょっとするとあなたにもあるのではないでしょうか?
それだけ現代社会での心の問題に寄り添うカウンセラーのニーズは高まっており、その中でも、臨床心理士は信頼性の高い職業です。
【この記事の目次】
臨床心理士とはどんな職業?
臨床心理士の仕事内容を具体的に紹介します。心理カウンセラーの業界では、カウンセリングを依頼してきた人のことをクライエント(※)といいますが、臨床心理士はクライエントの問題に対して、一方的に答えを出すのではなく、一緒に解決して行くというスタンスでカウンセリングを行います。
※……臨床心理士の場合、クライアントと呼ばずにクライエントと呼ぶ習慣があります。
先ずはインテーク面接という初回面接により、クライエントの問題をヒアリングし、カウンセリングの進め方や注意点などを話し合います。
カウンセリングを進める中で、信頼関係を作りながら、そのクライエントに合った方法をカスタマイズしながら進めていきます。つまりオーダーメイドのカウンセリングです。
クライエントに共感的理解を示しながら、一緒に考え、問題解決の道筋が見えて来ると、少しずつカウンセリングの回数や期間をペースダウンしながら終結となり、時折経過観察をするという流れなります。
カウンセラーで手に負えない病気の場合は医療機関を紹介し、自殺や犯罪行為に関連しそうな場合は警察に通報するなど、責任と権限の範囲に対する配慮も重要です。
臨床心理士の活躍の場
臨床心理士はいろいろなフィールドで活躍をしています。代表的なのが教育施設や医療施設で働くカウンセラーです。
教育施設のカウンセラーは学校や教育センターなどで、生徒や教員、保護者の相談を受け、一緒に問題を解決していきます。
医療施設のカウンセラーは、精神科や心療内科で働き、精神的に問題を抱えている人に対して、専門家として心のケアを行います。
他にも保健所などで住民のカウンセリングを行ったり、福祉施設で高齢者や障碍者、施設の従業員などにカウンセリングを行ったり、刑務所などで受刑者のカウンセリングを行うこともあります。
また、一般企業に相談室が設けられている会社も増えており、産業カウンセラーのように、その会社の社員の悩み相談を受ける臨床心理士もいます。
どこにやりがいがあるのか?
臨床心理士にとってのやりがいは、何といっても人から感謝されるという所に尽きます。
心に問題を抱えていて、暗い顔をしてやって来たクライエントが、次第に本来の自分を取り戻して行きながら、顔色が変わっていく姿を見ていると、自分のことのように喜べるというカウンセラーも多いようです。
クライエントが自分を取り戻して行く中で、カウンセラーのお陰だと感謝されること多く、人を支援する仕事の醍醐味であるといえるでしょう。
ただし、カウンセラーのスタンスはあくまでも問題解決のきっかけですので、クライエント自信が自分の力で解決して行くというサポーターに徹しなくてはいけません。感謝されることによって、自分がクライエントの問題を解決したのだと勘違いしないことが大切です。
大変なのはどんなところか?
臨床心理士の大変な所は、心に問題を抱える人の相談を受けるという仕事の性質上、暗い気持ちに引っ張られる場合があるということです。
カウンセラーはクライエントの問題に対して共感的に理解を示さないといけませんので、初心者のカウンセラーはクライエントの暗い気持ちに引っ張られてしまう場合もあります。
もちろん、上級者になると上手く受け流すことを覚えていくのですが、最初のうちは精神的に厳しい面もあるでしょう。
また、問題解決が上手くいかない場合に、カウンセラーのせいにしてくる人も少なからずいます。その対策はインテーク面接で、問題解決はあくまでも本人次第であることをしっかり説明しておく必要があるでしょう。
また、カウンセラーはクライエントと二重関係になってはいけません。二重関係とは、カウンセラーとクライエントという関係以外に、友人や恋人関係になることです。
クライエントと二重関係になることによって、カウンセリングが効果を発揮しなくなる場合もありますので、二重関係にならないように、カウンセラーはプライベートをクライエントに一切教えてはいけないという決まりがあるのです。
町中でクライエントを見かけても気づかれないようにするなど、そういう所に気をつかわなければならないところも大変なところでしょう。
臨床心理士になるには
臨床心理士になるには、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格する必要があります。そして、臨床心理士の試験を受けるためには、心理学の指定された大学院修士課程を修了している必要があります。
具体的には
- 第一種指定大学院
- 第二種指定大学院
- 専門職大学院
の3パターンがあり、第一種指定大学院の場合はそのまま臨床心理士の一次試験を受験することができ、第二種指定大学院の場合は、カウンセラーの実務経験が一年以上あれば一次試験を受けることができます。専門職大学院の場合は一次試験のうち論文が免除となります。
臨床心理士の試験は一次試験、二次試験があり、合格後も5年ごとに資格の更新診査があり、スキルの維持や向上のため、研修や研究が義務付けられています。
臨床心理士の平均年収
高い専門スキルと、そのスキル維持・向上の研究が常に求められる臨床心理士の平均年収はいくらぐらいなのでしょうか?厚生労働省の統計によると、平均年収は340万円だとのことです。
あくまでも参考ではありますが、臨床心理士平均年収を国税庁の年齢別階層年収の比率に当てはめて考えますと、
- 20代での平均年収は200万円台
- 30代で250万円から300万円程度
- 40代前半で平均の340万円
に達します。また、最も高い平均年収は50代前半で、その平均年収は408万円となります。
給料BANKの給料ランキングによると、臨床心理士は約400の職業中218位の年収となっておりました。日本の平均年収の415万円に比べても比較的低い年収のようですね。
年収400万円の生活レベルが知りたいあなたはこちらの記事をご覧ください。
>>?年収400万円と500万円とで手取り額、生活レベルはどう変わる?
しかしながら、大学講師などをしているカウンセラーや、開業して有名になったカウンセラーなど、中には年収1,000万円以上稼いでいる人もいらっしゃるようですので、ビジネスモデルによっては高収入になる可能性は十分あるようです。
まとめ:臨床心理士は非常にやりがいのある仕事
臨床心理士は心の問題を抱えるクライエントに対して、カウンセリングという方法で支援をし、一緒に問題解決を目指します。
その方法はカウンセラーが一方的に答えを出すのではありません。心の問題という荷物をカウンセラーが全部持ってしまうのではなく、半分だけ持って一緒に歩くというような方法で、共に問題解決を目指します。
そんな臨床心理士の平均年収は340万円と比較的低い年収のようですが、それでもクライエントが問題解決をして行くことを応援し、人から感謝されるやりがいのある仕事といえそうです。人によっては高収入のカウンセラーもいるようですよ。
(文/田中英哉)