日本では少子化が問題視されるようになってもう何年も経ちますが、子どもの数は年々減少の一途をたどっています。
総務省の統計によれば、子どもの人数は34年連続で減少し続けており、平成27年は前年より16万人も減ってしまったとのこと。総人口も22万人減少しました。
女性一人が生涯に産む子どもの人数の平均、つまり平均出生率は、1.42人となっています。どの家庭にも子どもが4~5人いた時代は昔のことになってしまいました。
少子化問題の深刻さは理解できても、「では、子どもをたくさん産めばいいではないか」と簡単に片付けられる問題でもないのです。その理由のひとつに、世帯年収にまつわる不安が挙げられます。
あなたに子どもが一人いる場合、もしかしたら二人目を考えているかもしれません。子ども二人目を産む場合、世帯年収はいったい何円必要なのでしょうか?少々少なめでも大丈夫?上手にやりくりする方法とは?ここではそういったことについて考えてみます。
世帯年収とは?
何人子どもが欲しいのか考えるときに大切なポイントになるのは世帯年収。世帯年収とは、世帯全体の年収のことです。例えば専業主婦など世帯主一人が働いているのであれば世帯主一人の年収、夫婦が共働きしているのであれば二人の年収を合計したものが世帯年収となります。
厚生労働省の統計によれば、平成25年の全国の平均世帯年収は528.9万円でした。そのうち、小さな子どものいる世帯の平均世帯年収は696.3万円、高齢者世帯は300.5万円。全体の平均世帯年収は、10年前と比較して10%近く減少しているようです。
三世代が同居していて複数の人が稼いでいる場合、世帯年収は高くなります。例を挙げてみましょう。
おじいちゃんおばあちゃんが農業で稼いでおり、ある年300万円稼ぎました。
お嫁さんは近所のスーパーでパートをしており150万円の年収。
この場合、旦那さんの年収が550万円でも、世帯年収は1,000万円にとどきます。
同居している環境では多くの場合、家賃や光熱費、住宅ローン返済費などの負担が軽減されるので、個々の生活費そのものが少なくなり、経済面では子育てがしやすいと言えるかもしれませんね。
子供二人を大学進学までなら世帯年収800万円
さて、本題に入りましょう。子どもを二人育てる場合、世帯年収はいくらあれば大丈夫?
マーケティング評論家として有名な牛窪恵さんの著書「女の決めどき」では、子ども二人を大学進学させたいなら、世帯年収は最低800万円が目安、とあります。
この本によれば、結婚相手に年収600万円以上を求める女性が増えていますが、それよりも世帯年収800万円を目指した方が現実的だとのこと。
世帯年収800万円の暮らしとは?
ところで、子どもが二人いて世帯年収が800万円の場合、どんな生活レベルになるのでしょうか?ある実際の家計簿の内訳を参考にしてみたいと思います。
<4人家族の1ヵ月の家計簿>
(家族関係は会社員の夫で妻は専業主婦、こどもは保育園児と出産間もない赤ちゃん)
食費 | 50,000円 |
日用品 | 8,000円(おむつ含む) |
光熱費(ガス・水道・電気) | 16,000円 |
通信費(携帯2台、Wi-Fi) | 20,000円 |
保険(学資、夫・終身医療保険、妻・がん保険) | 21,000円 |
保育園 | 20,000円 |
子どもの習い事 | 10,000円 |
趣味・家族のレジャー費・ | 30,000円 |
服や靴など必要な物 | 30,000円 |
合計 | 205,000円 |
マンションのローンを月々10万円返済し、4万円の駐車場を借りて車を維持したとして、出費合計は約35万円。
上の家計簿は節約タイプのものではないので、あまり切り詰めなくても、月々35万円でやっていけることが分かります。いわゆる適正収入です。このくらいの生活レベルを維持したとして、年収500万円あればこの状況なら毎年80万円貯金出来ることになります。
子どもの大学進学に必要な費用はいくらでしょうか。もっともお金がかかる私立大・理系の場合で入学に106万円近くかかります。さらに在学中に200万円(国立大)から2,000万円(私立大医歯系)かかります。 この2,000万円の壁はかなり高いです。
年間80万円ずつ15年間貯金した場合、1,200万円貯められるので、国立大、公立大であれば余裕で卒業させられることになります。
しかし、子どもが私立大に進学して医者になりたいと言うような場合、足りなくなってしまいます。
私立大医歯系に入学・卒業するとなれば、一人につき2,500万円必要。二人になると5,000万円です。これを15年間で貯めるとすると、年間約300万円の貯金が必要になり、やはり世帯年収800万円が必要になるのです。
世帯年収800万円でも余裕があるわけではない
と言うわけで、「子どもが二人いる場合、世帯年収はいくら必要?」と言う質問の答えのカギは、「大学費用にいくらかけるか」、と言うことになりそうです。
お金だけは準備しておいて、子どもの選択肢を狭めないであげたいと思うものですね。結論は、お金に糸目をつけず、お金のかかる大学を卒業させたいなら世帯年収は800万円必要だと言うことです。
「大学費用にいくらかけるか」。これは価値観の問題にもなってくるかと思いますが、条件次第で夫婦ごとに意見が違うと思います。
子どもをどんな人として育てたいのか?できるだけいい大学に進学させて、給料のいい仕事に就けさせる。かかる金額には糸目をつけない。そう決断しているなら、今から費用を貯金しておく必要があるでしょう。
また、奨学金の対象となるのであれば、その申請も考えておかなくてはならないでしょう。
一方で、大卒でも仕事が見つかりにくくなっている昨今です。果たして大学を目標にする必要があるのか、考えてしまう親御さんもおられることでしょう。
さて、子どもの大学進学を目標にしてきた場合、子どもが無事に大学を卒業した場合どうでしょうか。ホッとするところだと思いますが、今度は別の課題が待っています。それは自分の年齢、つまり老後です。
息子や娘の子育ての責任が終わって、退職し、せっかく節約生活から解放されて自分たちの時間を楽しめると思ったらわが家でのんびりどころか、お金のことが心配でろくに遊べない、なんて、とても悲しいですね。一般的に、余裕のある生活環境が営める老後のためには3,000万円の貯金が必要だと言われています。
子育て中にママは子どもの教育費も貯金して、自分の老後のための貯金もする。となると、確かに世帯年収800万円でもキツイでしょう。
子育てをする上で、収入は非常に重要な要素。転職で年収を上げることが叶うのであれば、それも視野に入れておくと良いでしょう。
あなたがこれまでに実績をあげてきたのであれば、その市場価値を改めて転職のプロフェッショナルに判断してもらうと言うの有効な手段です。
ひとりで考えているのとは比べものにならないほど可能性が広がります。
今の仕事に見合った収入が得られているのか、改めて業界や同年代の水準と比較して見直すことで、新たな活路が見えてくるかもしれません。
転職でキャリアアップをすることで、年収が上がることも期待できます。「リクルートエージェント」では、専門のエージェントがあなたのキャリアを第三者的に分析してくれて、適性な年収やキャリアプランを提案してくれます。
無駄にいいものを求めないようにしよう
世帯年収800万円でもキツイ、と言うことですが、「ではいったいいくらあればいいのか?」と尋ねたくなります。そこで思うのは、世帯年収がいくらあったとしても「その中でやっていこう!」と言う必要年収を定める決意がなければ、いくらあっても足りなくなってしまうと言うこと。
例えば、世帯年収が1,000万円あったとしても、欲張って何億円もする邸宅を購入したら、その後の人生は借金の返済に追われることになります。これは極端な話ですが、要は「無駄にいいものを求めないようにしよう」そんな生活タイプにすることです。
例えば先ほど挙げた家計簿を振り返ってシミュレーションしてみると、日常生活で節約できるポイントがたくさん見つかります。
食費
食費に50,000円かかっています。食材は使う量を想定して少し面倒でも安いお店を探し、まとめ買いをしてできるものは冷凍保存し、1週間かけて使い切るようにします。
こうすれば1日平均1,000円で、豊かな食卓が整います。これで食費20,000円が浮きます。
通信費
通信費に20,000円も支出しています。安いスマホなどに代えるなど携帯代を見直す余地がありそうです。
家族のレジャー費
毎月30,000円かかっています。公園でのピクニックや芝滑り、アスレチックなど……。ストレスも回復出来、お金をかけずに楽しめるレジャーを取り入れてみては?
服や靴など必要な日用品
子ども二人目の場合、兄弟のお下がりを活用できます。お友達同士、親戚同士で協力し合うのもいいのでは?ベビーバスやチャイルドシートなども先輩ママたちのお子様が幼稚園にあがる頃になるとさすがに必要もなくなりますから、それらを譲り受けるのもおすすめの方法です。
また、近所にそんな人がいなければ最近はウエブサイト上で不要になったそれらの赤ちゃんグッズがたくさん販売されていますので、そんなサイトを活用するのも安上がりの方法と言えるでしょう。
育児は意外に節約出来る部分が多いのです。先輩ママたちの知恵袋をお借りして子育て費を最大限に抑えましょう。
世帯収入をどう増やすか?を考えるのと同時に、どう節約できるかを考えるのも大事。節約は、やり始めはけっこう大変かもしれませんが、絶えず金銭面に注意を払い習慣になってしまえば大丈夫です。思い切って生活スタイルを変えてみましょう!
老後の貯金のことに関していえば、限りある中で楽しむコツを知っていれば、貯金が3,000万円なくてもやっていけます。専門家によっては最低額1,000万円あれば大丈夫と言う人もいます。自分なりの老後の生活プランを構築することが何より先決なのです。
(文/河原まり)
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