年収1000万円を目標にしている人はたくさんいますが、実際のところ、年収930万円の場合と手取りはどのくらい変わるのでしょうか。
年収1000万円の手取り
給与収入1000万円の30代独身(扶養親族なし)の場合、手取りはいくらくらいになるか計算してみましょう。
月収 | 833,333円 |
厚生年金 | 55,266円 |
健康保険 | 41,334円(協会けんぽの場合) |
雇用保険 | 3,333円 |
所得税 | 71,360円(控除額によって異なる) |
住民税 | 約60,000円(自治体や控除の詳細によって異なる) |
手取り | 約602,040円 |
年収930万円の手取り
月収 | 775,000円 |
厚生年金 | 55,266円 |
健康保険 | 39,342円(協会けんぽの場合) |
雇用保険 | 3,100円 |
所得税 | 61,430円(控除額によって異なる) |
住民税 | 約57,000円(自治体や控除の詳細によって異なる) |
手取り | 約558,952円 |
年収1000万円と年収930万円の差
もらえる手取り収入は、年収1000万円の場合の方が当然高くなります。約602,040円と約558,952円ですから、その差はひと月で43,088円ですね。
約40,000円の差があるということは、小旅行に1回行くくらいの違いが出ているということです。これはそれほど少ない数字ではありません。これを1年に直してみると、約517,056円の違いとなります。
年収1000万円と年収930万円の額面上の差は70万円ですが、実際の手取りを見てみると、50万円強の差しか出ていません。日本は「累進課税」という課税方法を採用しているため、収入が多くなればなるほど、引かれる税金の料率も高くなってしまうのです。
累進課税とは
消費税は、誰であっても8%です(※平成28年6月現在)。しかし、所得税はそうではありません。仮に、全ての人に対して所得税20%と定めたとします。一見公平にも思えますが、この場合、月給15万円の人は所得税だけで3万円とられて、12万円しか手元に残りません。
これでは、生活が困難です。一方、月給150万円の人の場合は、税金を引かれても手元に120万円もありますから、生活に困ることはありません。こういうことがおこらないように、収入が少ない人からは少しだけ税金を徴収し、収入が多い人にたくさんお金を払ってもらうという制度が、累進課税です。
日本では、所得税について累進課税を導入しているため、収入が高いほど税率も高くなっていくのです。また、健康保険や年金といった社会保険料には上限が定められていますが、所得税や住民税には上限がありません。稼げば稼いだだけ、たくさんの税金を取られてしまいます。
手当等の問題
平成28年の場合、年収960万円以上の家庭には児童手当が支給されません(月にひとりあたり5,000円の特例給付はあり)。一方、年収930万円の場合は手当を受け取ることができます。
児童手当は0歳から3歳までが月額15,000円、それ以降は10,000円(第1子、第2子)か15,000円(第3子以降)と比較的高額なため、受け取れないとなると大きなマイナスとなってしまいます。
夫婦経営の会社の場合
夫婦で会社を経営している人の場合、夫が年収1000万円、妻が年収200万円といった形にすると、夫にかなり多くの税金がかかってしまい、手取りが少なくなってしまいます。
このように、夫婦の収入に差をつけるよりも、夫、妻共に年収600万円とした方が税金が少なく済むため、お得です。仕事内容的にどうしても同じ給料にすることはできないという場合も、夫と妻の年収差はなるべく少なくしておいた方が良いでしょう。
また、扶養親族を夫側の扶養に入れる、医療費控除や生命保険料控除などを夫につけるといった節税対策をすれば、所得税を多少減らすことができます。
期待より手取りが増えないことも
年収1000万円というのは憧れの数字ではありますが、やみくもに稼げばいいというものでもありません。もちろん、同じ家族構成であれば、年収930万円の人が年収1000万円の人よりも手取りが多くなるということはありません。
しかし、頑張って働いてやっと1000万円に届いたと思っても、期待したよりも手取りが増えなかったということは十分あり得ることなのです。
(文/平野恵子)
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