車を持つ人なら、まあ一生のうちに5人に1人は(筆者の勘による)、一度くらいは交通違反による反則金を支払った経験があるのではないだろうか。例えば赤信号無視だったり、15キロ以下のスピード違反の場合、違反点数は2点、反則金は9,000円と定められている。
こう、なんというか高すぎず、かといって安いわけでもない、微妙な、徴収しやすい金額になっていると思える額だ。ところで、全国各地の警察署が交通違反者から徴収している反則金。みなさんはどういう使途で用いられるのか気になったことはないだろうか。
今回は、その徴収金額の仕組みと、徴収後は何に使われるのかについて、追ってみた。
徴収金額は莫大!還元は各市町村へ
まず大雑把に書くと、全国の交通違反者から徴収した罰金は、一旦国庫に入ることとなり、その誤「交通安全対策特別交付金」という名目で、地方公共団体の行う安全施設整備の経費として活用される。
安全な交通設備を整えることで、長期的な視点で交通事故の発生頻度の低い安全な環境を敷設するために用いるということだ。
総務省によると、平成27年度の交通安全対策特別交付金の総額は316億円超となっており、これらは同年9月29日に、各都道府県、市町村に交付された。
さらっと説明したが、毎年数百億円もの“財源”が、交通違反者によって捻出されているということとなる。地道な警察の取り締まりの熱意には、嫌味半分に頭が下がると言いたくなるというものだ。
そういえば昨年には、自転車は車道を走らないとならないという交通ルールが波紋を呼んだ。施行後、実際に歩道を走っていた自転車の持ち主が警察に呼び止められるという状況がニュースでも流れたが、随分と精力的なものだと呆れたものだ。
その割には、警察官は歩道で自転車を走っている様子は各地で見受けられているが。
ズバリ!違反者からの罰金はこう使われていた!
次に、具体的にこれまで、交通安全対策特別交付金によって整備された施設の事例を挙げていきたい。
実はこれ、私たちの住んでいる街の、いたるところで活用されている。たとえば交通量が多い道路に信号機を設置したり、道路標識を設置したり、歩道橋を作って安全な往来を可能にしている。
さらにガードレールや防護柵なども、この交付金から賄われている。交通安全は、自治体全ての住民の願いであるし、不幸な事故は起きないに越したことはない。
交通安全を脅かした違反者から徴収したお金を用いて、安全なインフラ整備を目指すというのは、理屈としては納得できるところである。
まあ、ねずみ捕りに捕まった瞬間ははらわたが煮えくり返ることもあるけど、そこはグッと堪えて、長い目で見れば地域の安全に寄与したと思うことにしたい。
仮に交通違反者がいなければどうなる?
ところで、交通安全は国民の共通した願いではあるが、仮に交通違反をする人がいなくなったら、安全な交通整備のための財源はどこから捻出されるのだろうか。たらればの話だけど、もしかしたらその分のお金を、車を持っていない世帯も負担しなければいけない側面が発生するのかもしれない。
あるいは増税して、その分から捻出するとか?そう考えれば、交通の安全を脅かす違反者は確かに脅威だけど、反面、恩恵を与えてくれる存在ということになってしまう。
これでは何というか、不健全な気がしないでもない。交通違反者には罰金よりも、一発で免許停止の方がはるかにダメージも大きいはず。免停にならないために安全運転を心がけようと考える人も増えるはず。
一方で、安全整備のための財源は、それこそ一般庶民の違反頼りじゃなく、その自治体の削れる部分から大いに削って賄えばいいように思うのだが。折りしも最近、東京都知事が、不要な飛行機のチケットやら高級ホテルへの連泊を繰り返し、5000万円の無駄遣いや、公用車の私物化の疑いをかけられていたことが話題になったことだし。
金のない人間から無理に徴収するより、金を無駄遣いしている自治体から分けてもらえばいいだけの話に思える。
(文/松本ミゾレ)