一人暮らしの高齢者のうち、およそ半分が貧困に悩まされている状態だそうです。ゆとりのある老後を考えるなら、7000万円の貯金があるとよいとされています。しかし、年金受給額その他条件によって必要な金額は変わり、平均寿命も延びているため、「このくらいあれば安心」とは言えません。そこで、今回は生活保護水準以下で生活しているという「老後破産」の状態に陥る原因について考えてみましょう。
原因1.家計貯蓄率の低下
まず、十分な貯金額が用意できず、老後破産に追い込まれてしまうケースがあります。その理由は、さまざまな事情はあると思いますが、「貯金をする」という考え方が崩壊しているからです。
日本は、可処分所得(収入から支出を差し引き、残った自由に使えるお金)に対し、貯蓄の割合が低い国だと言います。1970年代は20%だったのですが、2000年代になると0%から3%にまで低下してしまいました。主要先進国の中でも最低ランクと言われているため、日本人がいかに貯金できていないかがわかると思います。
ゆとりある老後の貯金は7000万円です。しかし、そもそも貯金できていないとなると、老後破産を招く確率は高くなります。これは、平均年収の低下や世代ごとの考え方に原因が潜んでいるかもしれません。
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原因2.晩婚化と高齢での子育て
少子高齢化によって、結婚や子育ての期間が遅くなっています。すると、夫婦で貯金をする期間が遅くなってしまい、子育てにかかる費用のピークも定年間近になってしまうのです。
たとえば、35歳で子供が生まれた場合、子供が大学を卒業するときには57歳。子供が順当に就職できたとしても、教育費で貯金を使ってしまった親の世帯は、お金が足りなくなってしまいます。新たに貯金を作る時間も限られていることから、経済的な不安を抱えたまま、老後生活、そして年金生活に突入してしまうでしょう。
もし、子供が就職活動に失敗し、就職浪人やニートになってしまったら、親は自分たちの生活費だけでなく、子どもの生活費も貯金を切り崩してでも養い続ければなりません。こうなるとさらに出費が拡大し、あっという間に貯金が底をつきます。その結果、老後破産を招くと考えられるのです。
小さいうちから子供に金銭教育をし、家族で将来必要になるお金について相談することも必要です。
原因3.事業での失敗
早期退職や定年後、事業を始めたいと考える人もいると思います。しかし、50代以降で起業するのはハイリスク。とくに、多額の事業投資を必要とする場合、資金を調達するため、貯金や退職金を切り崩すことになるので要注意です。
事業が成功した場合、経済的にも精神的にも豊かな老後を過ごすことができるでしょう。もし、事業に失敗したら、貯金はなくなってしまいます。また、再就職先の会社を見つけることは難しいです。経済状況が悪化したまま、老後を迎えなければなりません。
もし、仕事を退職したあとに起業するなら、初期投資の負担が少ない事業にすべきです。仮に失敗してもダメージが少なく、ビジネスがうまくいかなくても独立開業を通じて学べることはたくさんあります。成功すれば、起業で身に付けたスキルを活かし、本当にやりたかったビジネスのために時間や労力、お金を投資するのもよいでしょう。
原因4.生活保護が受給できない
貧困層や生活困窮者のセーフティネットである生活保護ですが、一部の高齢者は受給できません。よくあるケースは、住宅やマイカーを持っていたり住宅ローンが残っていたりする場合です。資産価値が高い財産を持っているとみなされ、生活保護の対象外となる可能性が高くなります。
生活保護の調査は年々厳しくなっています。本人の収入状況はもちろん、親族に扶養能力や金融資産があるかを含めて調べられることが多いです。住宅や自動車といった財産があるからNGではないので、諦めずに調査を依頼しましょう。
自分のもらえる年金額はいくらか把握する
自分が将来もらえる年金額がいくらなのか、日本年金機構の「ねんきんネット」で調べてみることをおすすめします。年金受給額は、国民年金は「加入期間」、厚生年金と共済年金は「加入期間と平均年収」で決まってきます。
ただし、年金制度は、現役世代が支払う金額で高齢者世代を支える仕組みなので、少子高齢化にともない、今後さらに年金額が減ることが予想されます。
さらに、健康保険料、介護保険料が値上がりし、年金から引かれるために生活はますます苦しくなるかもしれません。介護や医療費などの負担も重くのしかかってきます。
年金額はあくまで目安ですが、将来への危機感を持つことで、住宅ローンの繰越返済や生命保険の見直し、通信費など固定費の節約など、「今できること」が見えてくるのではないでしょうか。
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まとめ:老後破産を避ける方法を考えよう
お金に対する考え方ひとつで、老後破産から身を守ることはできます。間もなく老後を迎える方は少しでも貯金計画を立て、下流老人にならないように準備してください。すでに定年退職された方は今後の退職金や貯金の使い道を考えましょう。
(文/三堂有人)
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