マイナンバー制度施行によって、脱税の発見が期待されている。これに伴い、詐欺業者も摘発されそうなものだが、依然として世にはびこるギャンブル攻略情報詐欺を撲滅するのは可能なのだろうか。税法および民法の観点から考えてみたい。
【この記事の目次】
意外とクリーン?ロト6攻略情報業界の内情
某ロト6攻略情報サイトの管理人・吉田は、2015年でロト6攻略情報ビジネスから撤退している。私は、「もし、マイナンバー制度が始まっていたときにサイトを続けていたら、きちんと国にマイナンバーを申告していたのか?」と尋ねた。すると、吉田から返ってきたのは意外な回答だった。
「マイナンバーは出していたと思いますよ。誤解しているかもしれませんが、決算書もきちんと税務署に提出していましたからね(笑)サイト運営もですが、私が販売していた情報商材は、エンタメ商品ですよ。だから、適正なビジネスだと考え、マイナンバー制度もマジメに運用していたと思います。」
吉田のような例は一部に限られると思う。ただし、スポーツ新聞にもロト6攻略予想が掲載されているが、エンターテインメントとしてロト6情報を提供することは問題ない。
エンタメ商品という大義名分がある以上、法律を犯すほうがハイリスクだ。おそらく、税務署から脱税を指摘されるほうが怖いのだろう。
国は収入の適法性を問わない
吉田の場合、エンタメ商品という大義名分があるため、脱税をはたらくことはないと考えられる。しかし、悪質な詐欺グループは平気で脱税していることだろう。違法に得た収入に対し、国はどのような判断を下しているのだろうか。
法律に背いた収益に対する課税について、国の見解は「収入の原因が適法かを問わない」としている。「国が詐欺を認めているのではないか」と感じる方もいるかもしれないが、当然、犯罪を認めているわけではない。
収入の適法性を問わない理由
国の見解の根拠を考えるにあたって、最高裁が1971年11月に下した判決を参考にしたい。
国が、利息制限法を上回る利息を取っていた金融業者に課税したとき、金融業者は「違法な利益だから、債務者に言われたら返済する。だから、所得ではない。」と、国を相手に訴えを起こした。
国が金融業者に課税した理由は、債務者が返還を請求するまでは、違法であっても金融業者の収入として自由に使えてしまうからだという。泣き寝入りしている債務者も多いため、違法性があっても金融業者の収入と判断し、国は課税を徴収しているのだ。
もし、債務者が返還を請求した場合、違法な金融業者には支払い義務が生じる。つまり、所得税を支払ったうえに、課税対象となった分の利益も返還しなければならない。当然だが、国は犯罪者の利益を保護しているわけではない。
以上のことから、ロト6攻略情報詐欺業者は、訴えられた時点で大損になるのだ。
民法上の判断は無効な収入
吉田のように、「適正に営業している」と自称する業者は、消費者が商品代金を未払いしたりPDFデータの商材や攻略用ソフトをコピーして配布したりした場合、訴えを起こすかもしれない。このようなケースでは、国はどう判断するだろうか。
しかし、民法の観点から見ると、犯罪収益自体が無効とされている。民法第90条では、「公序良俗に違反した収入は収入として認めない」と、明記されているのだ。エンタメ商材と言っても、客観的に見て詐欺と判断されるものなら、訴えは退けられてしまうだろう。
客観的に見て詐欺かどうかのポイントは、商品代金が大きく影響すると考えられる。スポーツ新聞や一般的な書籍のように、数百円から1,000円程度であれば、エンタメ商材として乗り切れるかもしれない。おそらく、消費者側も軽い気持ちで購入しているはずなので、裁判沙汰になることはないだろう。
吉田は数万円で攻略情報やアイテムを販売していた。仮に、エンタメ商材と言い張っても、消費者から商品代金や損害賠償を得ることは難しいと考えられる。最悪の場合、ほかに泣き寝入りしている消費者の分も含め、詐欺罪で立件されるかもしれない。
マイナンバーでもロト6詐欺はなくならない
マイナンバー制度自体は、直接的に犯罪収益をなくす制度ではない。吉田のような考え方で営業している業者は手が出しづらいからだ。
じつは、税務上はまっとうに経営している悪質な業者も少なくないそうだ。もし、裁判のような大きなトラブルに発展しない限り、ロト6攻略情報業者が詐欺を止めることはないだろう。
(文/広野一揆)