結婚生活というものは、そもそも他人同士だった男女が愛し合い、お互いに「この人とだったら……」と思って一緒に暮らしていくもの。
そこには協調性と愛情、そしておもいやりが欠かせない。
元来自分勝手で思いやりが欠けている自覚のある筆者には、到底真似できない生活様式である。
だから、周囲で結婚をする知人が出るたびに「いやあ、すごいなあ」と感服しているんだけど、結局そういう男女の何割かは離婚をしているし、離婚のきっかけもしょうもないものが多い。
浮気やらお互いの欠点が我慢できなくなったやら、些細なことで人は簡単に離婚をする。
そして筆者は「なんだ、みんな俺のように了見が狭かったんじゃないか」と、ほくそ笑むのだ。
夫の趣味を全否定!勝手に私物売り払った断捨離馬鹿妻!
今年の2月にも、知人が離婚をした。
この知人は40代のオタク。
特にフィギュアを集めるのが好きなオタクで、自室には新品未開封の商品が山積みされていた。
彼は開封して飾るというより、買ったものを積み上げることに喜びを感じるタイプだったようだ。
しかしそのまま置くとなると、箱もかさばるし、想像以上に部屋を圧迫する。
箱なんか破り捨てて中身だけ飾るオタクの筆者とは、ある意味で水と油なオタクだった。
そんな彼の妻が、最近ミニマリストブログに夢中になっていた。
ミニマリストとは、生活に必要最低限の家具しか手元に置かない人々のこと。
ここ数年、いわゆる断捨離にハマっていたという。
もう離婚の原因は分かったことだろう。
あるときこの妻、とうとう夫のコレクションを処分してしまったのだ。
しかも、妻だけではなく、14歳の娘も一緒になって「お父さんキモい」と言いながら、これに加担してしまったのだから、ちょっとかわいそうな話である。
処分金額50万超、夫は魂が抜けた状態に
そもそも新品未開封状態のフィギュアというのは、買取業者が高い値段を付けやすい状態のものばかり。
だから、彼のコレクションも持っていく店さえ誤らなければ、100~200万円ぐらいの総額になるケースも、決して珍しい話ではなかった。
しかし妻子にそんな知識はない。
近所のチェーン展開している買取業者に持ち込み、結局540,000円で全て売り払ってしまった。
自分が仕事から帰ってきたとき、自室に何もない状態であることを知った知人は、さぞ困惑したことに違いない。
実際その出来事が起きてから顔を合わせたところ、まるで生気が抜けたような表情になっていた。
知人はこの出来事を経て、妻との離婚を決意。
娘は母親の味方だったため、妻子との離別をすることになった。
お互いの両親からは考え直すよう説得されたが、愛着のある趣味の品々をすべて失った彼にとっては、その元凶の妻子だけが手元に残っていても意味はなかったようだ。
その気持ちはわからないでもない。
筆者だってオタク。コレクションを家族に捨てられてしまったことを考えれば、憎しみ云々よりも一緒に暮らすことがしんどくなるだろう。
家も手放した男、我が家に居候…
実はこの知人、4月半ばまで筆者の家に居候をしていた。
家も手放し、裸一貫から人生をやり直そうと考えたというが、財産を妻子に持っていかれたため先立つものもなく、2か月ほど家無し状態になることが確定したのだ。
実家も離れているため、仕事との兼ね合いから、職場とは少々遠いものの、筆者の家に寝泊まりすることを直談判されたのだ。
この状態での懇願を断れる男なんかこの世にはいない。
狭い部屋だったが、しょうがないので招き入れた次第だ。
幸いにもすぐに新しい入居先は決まったため、すぐに出て行ってくれたものの、すべてを失った男と一緒に暮らす日々は、結構こっちもしんどかった。
不用意な断捨離は辞めてほしいと、ミニマリストには言いたい。
第三者がこういうふうに迷惑を被るのだから。
(文/松本ミゾレ)