介護保険というとほとんどの人は、国が運営している社会保険の中の介護保険を思い浮かべるでしょう。
しかしこれは国民全員を対象にしているので保障内容に限界があるということと、使い勝手の問題などで、実際に介護状態になった場合には、それだけでは足りないこともあり得ます。
特に現在独身で、将来的な結婚のめどが立っていない場合は自分自身で自分の介護を行わなければならず、その分の金銭的な負担も大きくなります。
そこを補完する制度として、生命保険会社が運営する民間の介護保険があることをご存知でしたか。まだあまり認知されていない保険ですので、ここではその概要と独身の方が入ったほうがよいのか、そのメリットとデメリットについて解説します。
【この記事の目次】
介護保険には2つある
いま日本には2つの介護保険と呼ばれる制度があります。
- 1つは国民から介護保険料を徴収しそれを財源に65歳以上の要介護状態になった人への給付を行う社会保険としての介護保険。
- そしてもう1つが、生命保険会社が医療保険や健康保険と同じように販売している介護保険です。
もしも自分または家族が介護を必要とするようになった場合は、まずは社会保障制度としての公的介護保険を頼ることが基本ですが、それでも不十分な場合に、自助努力として生命保険会社の介護保険でそれを補完する、というのがこの民間の介護保険が現れた背景です。
生命保険会社の介護保険とはどういうものか
民間の介護保険の概要
生命保険会社が販売する介護保険も、社会保険の公的介護保険と基本的には同じです。すなわち、保険契約で定めた要介護状態になった場合に給付金を受け取れる、というものです。
保険の構成としては、一時金+年金+その他特約で、そこに保険会社ごとの
- 中軽度の寝たきり状態からカバーできるようにしたもの
- 公的介護保険に連動したもの
など、いろいろな付帯契約があります。
主な加入方法は3つ
この介護保険に入る方法としては、主には3つあります。
- 健康保険などの主契約に「介護の特約」を付加する
- 主契約として「介護保険」そのものに加入する
- 健康保険のなどの保険料払込が満了した時点で、健康保険を介護保障に移行する
特に3に関しては、保険料払込満了時だけではなく、個人年金保険の年金開始時に、死亡保障や年金受取額の全部または一部を介護保障に変更するという形になります。その際には健康状態などの告知または診査が求められます。
保障の給付条件は
介護保険の給付を受けられるのは、被保険者が保険契約に定める「要介護状態」になって、それが「一定期間継続」して、なおかつそれを「医師が診断確定した」という3つの条件がそろった時です。
ただし、この要介護状態とは、公的な介護保険の要介護状態とは認定基準が異なるのが要注意です。その基準は主には以下のようになります。
- 要介護状態とは、所定の寝たきりまたは認知症の状態
- 一定期間継続とは、180日継続としていることが一般的な規定
保障の給付方法は現金
公的な介護保険は、要介護認定を受けた利用者が1割もしくは2割の利用料を支払うことで介護サービスそのものが給付される「現物給付」方式ですが、民間の介護保険は現金での給付になります。
その給付方法には、以下の3つがあり、契約時に選択します。
一時金タイプ | 1回でまとまった金額を受け取る |
年金タイプ | 定期的に介護年金を受け取る |
一時金+年金併用タイプ | 一時金で受け取った後、年金も受け取る |
このように、民間の介護保険は現金給付なので、公的な介護保険の自己負担分や、それでは対象にならない介護サービスを受ける費用などに充当させることができます。
保障期間
給付をうけられる保障期間には2つのタイプがあります。
有期 | 保険で定めた一定期間の給付または、保険期間満了までの給付 |
終身 | 所定の要介護状態が継続している限り給付 |
この時、一般的な介護保険では、所定の要介護状態が継続していることが給付の条件ですが、中には一度でも要件に当てはまれば継続して給付を受けることができるものもあります。
介護費用は公的な介護保険でどこまでカバーできるのか?
まず公的な介護保険は要支援1~2と要介護1~5の7区分によって、受けられる介護サービス内容と利用限度額が決まっています。具体的な限度額は
- 要支援1だと1か月で4万9700円
- 最も重度の要介護5で35万8300円
ですが、このうちの1割は本人負担になります。ですので、公的な介護保険で給付される範囲だけの介護サービスで済んだ場合は、1か月の自己負担として最高3万5000円程度です。
しかし、介護施設に入居した場合は、食費や宿泊費などが別途必要となり、さらに介護費以外に入院や手術などの医療費、遠距離介護の交通費もかかるので、自己負担額の平均は5万7161円になるという調査もあります。これにもちろん生活費も加わります。
ここから考えると、平均的な介護年数は4年7カ月なので、公的介護保険でカバーできない介護や医療費のために必要な自己負担分は、300万円以上必要ということになります。
ただし、独身で家族などに介護をしてくれる人がおらず、何らかの介護サービスに委託した場合はここにさらに費用が加わります。
これに対して民間の介護保険は、たとえばソニー生命の終身介護保障保険に45歳で男性が加入した場合は、支払う保険料が月額7140円に対して、
- 給付が一時金60万円
- 年金が年間60万円
なので、4年7ヶ月の介護期間では335万円になり、一応の自己負担分はこれで補えます。
その意味で、公的介護保険の不足や使い勝手が悪い分を民間の介護保険で補完するという考え方は、それで全額をまかなえるかどうかは別にしても、十分に成立します。
既に保険に加入済みの人も、そうでない人も一度どのような保証があるのか確認しておくといいでしょう。見直す場合は、保険見直し本舗のようなサービスを使うと、相談無料で人生設計に合ったプランニングを提案してくれます。
民間の介護保険のメリットとデメリットは?
このように民間の介護保険に入るメリットはありそうですが、デメリットはどうなのでしょうか。両方を合わせて整理してみましょう。
民間の介護保険の7つのメリット
メリットにはだいたい7つあります。
1 介護の経済的負担を軽減
保険というものはいざという時の経済的な負担を軽減させるものですが、特に介護には家のリフォームまで行うと非常に費用がかかります。そこに毎月数万円の給付でもあれば、経済的負担はかなり軽減されます。
2 受け取る金額を設定できる
公的な介護保険の場合はできませんが、民間の介護保険は支払保険料によって、そのあとに受け取れる給付金の額を自由に増減できます。したがって自分の生活設計に合わせての設定が可能です。
3 税金が還付される
2012年1月に「介護医療保険料控除」という制度が導入され、所得税4万円、住民税2.8万円を限度に介護にかかった費用を控除し、還付金がもらえるようになりました。つまり税法上の優遇も受けられるのです。
4 終身保障である
一度要介護状態になったら、要介護から回復するか、死亡するまで給付されます。つまりは終身保障とほぼ同じということです。
5 介護状態の間は保険料が免除される
保険料が分割払いで、契約中に要介護状態になった時には、保険金の給付だけではなく、残りの期間の保険料の支払いが免除されます。
6 特約を付けられる
生命保険会社によって様々ですが、「継続介護支援保険金」「軽度介護一時金」「回復祝金」「健康祝金」などの特約がつけられます。
7 65歳前でも受けられる
公的介護保険は原則として65歳以上を保障の対象にしていますが、民間介護保険は年齢制限に関する規定が幅広いため、それ以前でも条件に合致すれば、給付を受けられるケースがあります。
民間の介護保険の3つのデメリット
今のところ、民間の介護保険には大きなデメリットの指摘は少ないのですが、ないというわけではありません。それは以下のような内容です。
1 保険料がかかる
保険商品ですので当然ですが保険料を支払う必要があります。とはいえ、将来のセーフティネットとして自分で積立預金をすればそれは同じことになります。
2 健康状態によっては加入できない
公的な介護保険制度は要支援、要介護にさえなればが誰でも利用できますが、民間の介護保険はすでに介護が必要な状態の場合、あるいは加入時点での健康状態によっては加入できません。
3 収支の判断がつかない
どのような保険商品でもそうですが、月数千円の保険料を仮に70歳まで払い込み、その後介護状態になったとして、受け取ることになる給付金の総額は、払込保険料の総額と比べて元が取れる可能性があるのかどうか、ということは現時点では判断がつきません。
あるいは、保険の代わりに自分で積立預金や個人年金をしたほうがいいかもしれません。この今の段階でそれが判断できない、ということがデメリットと言えばデメリットです。
40代独身で保険の加入の優先順位は?介護保険も必要?
さてこのような民間の介護保険ですが、特に現在40代前後で独身の方の場合、加入したほうがよいのでしょうか。
今後平均寿命がさらに伸びれば、自分が介護状態になる可能性も高まります。それを踏まえたうえで、あとは人それぞれの考えにはなりますが、介護保険に加入するかどうかの判断のガイドラインをご紹介します。
優先順位は掛け捨ての医療保険が上。生命保険は人それぞれ
将来必要になる可能性が高い身体上のトラブルには、介護状態もありますが、当然病気やケガも見逃せません。そして、平均すると、介護にかかる総額費用よりも病院での入院、加療などの費用の方が高額です。
そういう意味では、まず加入すべきは医療保険ではないかという考え方もあります。
また保険にはそのほか死亡保障のついた健康保険がありますが、これについては死亡後に養うべき肉親や親族がいるかどうかによって、分かれるでしょう。
その意味では、まず医療保険に入り、その上で介護保険への加入を検討するのが順番としてはよいでしょう。
その時のポイントは自分がどのような介護を受けたいかを考えること
介護保険への加入を考えるときに重要なのは、自分がどのような介護生活を望むのかという点です。在宅介護なのか、施設に入居なのか、施設の場合はどの程度のグレードを望むのか、などです。
そしてそれが決まったら、そのサービスができるデイサービスやショートステイなどの施設や、入居する施設を調べて利用料を確認すれば、おおまかな介護費用がわかります。
そこから自分の金融資産などを踏まえて必要となる自己負担の介護費用が計算できれば、それを介護保険でまかなうのか、貯蓄の取り崩しで対応可能なのかが判断できます。
まとめ
いかがでしたか。
今現役で、元気に仕事をしているのであれば、ピンとこない部分もあるかもしれませんが、同じような世代の独身の方の中でもこの民間の介護保険に加入する人が増えているのも事実です。また、平均寿命が伸びていることからも、自分が介護状態になる可能性は否定できません。
仕事をしている今の状態から、介護を受ける自分というのはどうしても想像しにくいものです。しかし、40代を超えると病気や怪我をする可能性も高くなり、保険の重要性を徐々に強く感じてくるもの。
動けなくなってからではなく、働ける今のうちに考えることが将来の幸せにつながるのだと思いますが、本業ではなければ保険に詳しい人はなかなかいません。いざという時に自分がどんな保障を受けられるのか、今のうちに保険見直し本舗のような保険のプロに一度、相談しておくのも良いのではないでしょうか。
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