漫画・アニメは、今や日本文化の象徴!世界中の若者のハート捉え日本に対する理解も進み、漫画・アニメの世界観が習慣や言語の壁を乗り越えて、言ってみれば若者共通のコンテンツとして定着してきています。
デジタル社会が進行する中で、そんなアニメを世界にあこがれを持ち、そして、それに携わる仕事を職業にしたいと考える若者が増えている現実があり、その職業の1つにアニメーターがあります。
アニメーターは脚本に元に、そこに描かれているイメージをヴィジュアル化することで、テレビ、劇場用映画の作画行い、そこには作画監督、キャラクターデザイナー、レイアウトマン、原画マン、動画マンなどが属しています。
アニメーターは、その流れの中で作画監督、原画マン、動画マンの分野を担う仕事になります。では、アニメーターの仕事観、そして収入などを含めて、全体像をまとめてみました。
【この記事の目次】
アニメーターの仕事
アニメ作品は、脚本家が書いた脚本に従ってキャラクターデザイナーがキャラクターを作り、絵コンテをベースにしてレイアウトマンが画面を構成します。それが完成した段階で原画マンが動きを与えながら原画を描き、次いで、動画マンは原画と原画を繋ぐ絵を挿しこむことで、動きを滑らかにします。
作画には、原画と動画の2種類があります。
原画はアニメ―ションの中で動きのキーポイントになる絵で、動画はその原画と原画の間を繋ぐ絵のことを言います。
そして、実際の現場では原画を描く人を原画マン、動画の方の人を動画マンと呼んで、それぞれ役割分担が決まっています。新人の多くは動画マンからスタートするのが普通のようです。
アニメ業界の制作工程
アニメの制作工程はプリプロダクションで、企画、脚本、絵コンテを策定し、それをプロダクションに移行します。
プロダクション(アニメ制作会社)は、作画レイアウト、原画、動画、スキャニングや色彩、撮影などを行いますが、アニメーターはこの段階で仕事に取り組むことになります。そして、次にポストプロダクションに移行し、音楽効果やビデオ編集を経て完成します。
制作工程でのプロダクションには次のような職種の人が関与しています。
プリプロダクションの段階では、
- 社内プロデューサー
- フリープロデューサー
- 監督
- 美術監督
- デザイナー
- 演出家
プロダクション段階では、
- ディレクター
- 制作進行
- 作画監督
- 美術製作担当
- 原画アニメーター
- 動画アニメーター
- 色彩担当
- 撮影監督
- 撮影担当
- CGクリエイター
ポストプロダクション段階では、
- 編集監督
- 編集担当
- 音楽監督
- 声優
作品によっては、このような人たちが100人以上参加することがあります。いずれにしましても、アニメーターには膨大な数の絵を描くので、集中力と根気、正確なデッサン力を必要とします。
また、作画監督という役割もあって、複数のアニメーターが作画した絵柄に統一感をもたせることが仕事になります。
アニメーターの雇用形態
では、アニメのプロダクションの中でのアニメーター雇用形態はどのようになっているのでしょうか。
もちろん正規社員や契約社員もいますが、ほとんどは業務委託やフリーランスで、いわゆる個人事業主の形態が多くなっており、雇用形態は保証されているとは言えません。
つまり、アニメーターは制作会社から正規雇用されないで、プロジェクトごとに非正規雇用という形になっていますので、自から収入面でもかなりのハンディを背負うことになっています。
日本アニメーター・演出協会のアニメーション制作者実態調査報告書2015アニメーター編
のよる就業形態では、
- フリーランス:37.7%
- 契約社員:23.1%
- 正社員:15.5%
- 自営業:14.9%
- その他:4.5%
契約形態(契約社員、フリーランス、自営業を選んだ人のみの回答)
アニメーターの契約形態は次のようになっています。
- 年契約:35.1%
- 作品契約:28.4%
- カット単位:19.1%
- 月単位:7.7%
- 本数契約:3.8%
平均作業時間
1日あたりの平均は11.03時間で、超過勤状態が日常化しています。
- 8h~10h以下:31.3%
- 10h~12h以下:31.2%
- 8h以下:16.2%
- 12h~14h以下:11.0%
- 14h~16h以下:6.3%
- 16h超:2.6%
アニメーターの年収
超過勤状態で仕事をしているアニメーターの収入はどうなっているのでしょうか。それを見ていきましょう
日本アニメーター・演出協会のアニメーション制作者実態調査報告書2015アニメーター編
によると、アニメーターの年収は次の通りになっています。
年収(万円) | 割合(%) | 年収(万円) | 割合(%) |
100万円以下 | 8.2 | 350~400万円以下 | 10.7 |
100~150万円以下 | 6.6 | 400~450万円以下 | 4.8 |
150~200万円以下 | 12.4 | 450~500万円以下 | 6.9 |
200~250万円以下 | 10.2 | 500~600万円以下 | 4.6 |
250~300万円以下 | 12.4 | 600万円超 | 7.7 |
300~350万円以下 | 7.5 |
この表から判ることは年収300万円以下が全体の約50%を占めていることです。先にも示したように多くがフリーランサーで、請け負う仕事が歩合性みたいなもので、動画1枚の単価が200円前後と安いことから、何枚仕上げていくらという出来高制のため収入が増えません。
この出来高制の2~3年の間の100~120万円の収入に我慢できないことから、挫折する人が結構見られます。
しかしながら、スキルアップすることで認められるようになると、作品に対しての拘束契約や拘束料を得るチャンスもできることから収入は増え安定する場合もあります。
もちろん、作業のペースが上がれば当然出来高も上がりますので、収入に反映されることになります。
因みに、アニメに関係する職種の年収を参考までにあげておきました。
職種 |
年収(万円) |
職種 |
年収(万円) |
絵コンテ |
372.3 |
動画 |
111.3 |
監督 |
648.6 |
色彩設計 |
333.5 |
演出 |
380.3 |
仕上げ |
194.9 |
総作画監督 |
563.8 |
キャラクターデザイン |
510.4 |
作画監督 |
393.3 |
背景美術 |
341.6 |
原画 |
281.7 |
版権 |
342.9 |
LOラフ原 |
234.1 |
撮影 |
319.4 |
第二原画 |
112.7 |
プロデューサー |
542.0 |
3DCGアニメーション |
383.9 |
制作進行 |
309.2 |
動画チェック |
260.7 |
その他 |
389.4 |
アニメーターの仕事に対する態度
日本アニメーター・演出協会のアニメーション制作者実態調査報告書2015アニメーター編によると、アニメーターが現在の仕事を続ける理由を次にように示しています。
現在の仕事継続理由(複数回答)について
- この仕事が楽しいから:65.1%
- お金を得るため:60.9%
- 作品を通じて人に感動を与えることができるから:38.1%
- 自分の能力や才能を発揮するため:30.2%
- 尊敬する人や支えあえる仲間がいるから:26.7%
- 絵を描く仕事を追及したいから:26.5%
- 絵を動かす仕事を追及したいから:25.4%
- 生きがいを見つけるため:17.3%
アニメーターの人たちは仕事のことが好きで、向上心があることがよくわかります。つまり、アニメーターの仕事にやりがいを感じているわけで、収入や労働環境、拘束時間に対する不満よりもアニメーターの仕事ができることや、絵が描けることに喜びを感じている人が多く、待遇に対して拘りを持たない流れがあるようです。
今後の仕事計画について
年収が他の産業と比較して低いにもかかわらず、今後も継続してアニメーターの仕事を続けたいとする人が6割を超えています。
- 働ける限りアニメーション制作者として仕事を続けたい:61.7%
- 特に考えていない」10.8%
- 2年以内にアニメーション以外の仕事を探したい:5.7%
- 2~5の間アニメーション制作者として働いた後、他の仕事を探したい:4.9%
- 5~10の間アニメーション制作者として働いた後、他の仕事を探したい:3.4%
アニメーターになるには
アニメーターになるには大きく分けて2つの方法があります。
1.独学で学び制作会社に売り込む
アニメーターの仕事はこれまで見てきた通り制作会社が請け負うわけですから、独学でも、専門学校を卒業した場合でもまずは制作会社にアプローチします。つまり、自分の作品を持ち込んで見てもらいます。
その時に仮に採用されなくても、作品を見てもらうことでどこに問題があるのかをポイントアウトすることができます。どう手直しすればいいのかのヒントになるわけですから、それを改善して再度チャレンジします。
独学ですと、どうしても独善的になってしまうきらいがありますので、自分の方向性を見出すにはいい方法ということができます。
2.専門学校・美術大学で学ぶ
専門学校、大学でアニメーターの基礎を学んだからと言って、就職してからすぐに戦力になるとは限りません。やはり、現場一番で現場力がモノを言うことになります。
特に、独学をすることがどうしてもできないという場合では、専門のコースを選択することで系統たったスキルを手にすることは悪くありません。それに、アニメ業界の情報も集まってくることから、就職の関しても一歩先をいくことが可能になります。
費用的には専門学校では多くが2年生で年間100万円程度の学費がかかります。大学は私立美術系大学では年間250万円程度で、これが4年間になりますので1,000万円は必要とされるようです。
アニメーターの最終学歴
実際にアニメーターとして活躍している人たちの学歴については、やはり専門学校の卒業生が多いですが、美大の卒業生も結構多いようです。
- 専門学校卒:43.7%
- 大学卒:34.8%
- 高校卒:13.2%
- 短大卒:4.7%
- 大学院修士卒:1.7%
アニメーターはアニメーションが大好き
そんなアニメの世界に飛び込む若者が多いのはどういうことなのでしょうか。そして、アニメーターの魅力って何なのでしょうか。
「好きこそものの上手なれ」というぐらいに、自分が本当に好きなことに熱中できることほど嬉しいことはありません。実際に、年収でも2~3年間は100~150万円ぐらいしか得られない中で、収入を得るという視点でアニメーターを捉えると、なかなか厳しいものがあります。
しかしながら、そんな好きなことを仕事にできるということになると、これは、子供の頃からの夢の実現に繋がることと、日々アニメにと付き合えるという喜びを手にできること、そして、海外への進出も含めて、チャレンジする若者がこれまで以上に増えてくる時代になっています。
アニメーターは時代の表現者
アニメーターになって喜びを感じる瞬間はどのような時でしょうか。初めて給料をもらった時でしょうか。
もちろん、労働を提供してそれに対する給料を受け取る時の喜びも新鮮ですが、それ以上に感じるのは、自分が描いた絵が色彩を伴いながら、テレビ、あるいは映画で上映された時の瞬間ではないでしょうか。
そして、作品の最後にローリングされる制作担当者の中に自分の名前が載っているのを見ると、アニメーターになって良かったという満足感、達成感に満たされることになります。
さらに、その作品が海外でも上映されるようになると、日本のアニメ文化の一端を担っていることに誇りが持てることになります。
時代、時代にあったアニメ作品を創りだすクリエイターの一角に、アニメーターの存在が見られるようになるには、アニメーターを目指すあなた志次第ということになるかも知れません。