メジャーレーベルとの契約はバンドマンの憧れです。しかし、実際にメジャーレーベルへ移籍しても月収10万円程度と言われています。
有名バンドでも歌詞や曲の印税の配分次第では、コンビニでアルバイトしなければならないメンバーもいるそうです。そんななか、安定してメンバーが稼げると言われるヴィジュアル系と、そこに潜む現実をご紹介します。
メジャーバンドの経済的成功が難しい理由
まずは、ロックバンドが稼げない理由を見てみましょう。
メジャーレーベルから見ると、ソロミュージシャンと比較すると、ロックバンドは運営するために費用がかかります。
例えば、同じCDやライブの売上があった場合、ソロアーティストが30万円の給与をもらえるとして、3ピースのバンドは10万円×3名ということになります。
地方遠征にかかる移動費や食費なども人数分発生するため、ロックバンドがメジャーレーベルに残るのは難しいのです。
このような事情から、メジャーレーベルに所属していてもアルバイト並の給与しか得られず、やむを得ずにアルバイトをしているという人も少なくありません。
インディーズという選択肢を選ぶロックバンドも増えていますが、CD不況の影響もあって生計を立てるのが難しい状況です。
個人的には、「消費者が音楽にお金を払う時代」がもう一度来てほしいものですが、インターネットの台頭も影響して厳しくなったと思います。今まで以上に、一握りの才能を持った人だけが稼げる時代が来ているのかもしれません。
ヴィジュアル系が稼ぎやすい理由
多くのロックバンドが経済的な苦戦を強いられる中、ヴィジュアル系バンドは稼ぎやすいと言われています。
その理由は、熱心な女性ファンによるグッズ購入が多く、物販が活発という側面があるからです。私はヴィジュアル系というとPlastic Treeとcali≠gariくらいしかまともに聴いたことがないニワカですが、知り合いのバンドマンから以下のようなこと起きていると聞きました。
まず、ヴィジュアル系バンドの物販では、昨今のアイドル並みにチェキ販売が行われています。ファンたちは推しメンが出るまで購入を繰り返したり、交換会を行ったりしているようです。
また、インターネットでもファン同士で売買が行われていて、ちょっとしたマーケットが形成されているという話でした。
ただし、ルックス要素が商品価値を左右するヴィジュアル系バンドでは、チェキの写真にも格差があるそうです。例えば、交換会ひとつとっても、サイドギターやドラムの写真5枚=ボーカルの写真1枚という現実があると言います。
私は激情ハードコアやシューゲイザーなどの音楽をやっている人間として、ちょっとヴィジュアル系バンドの物販事情は恐ろしいと感じました。
ヴィジュアルバンドがホスト化するリスク
このように、ヴィジュアル系バンドはメンバーのホスト化が進んでいます。
さらに、有名な話になってしまいますが、ライブハウスにプレゼントボックス(ファンからの貢ぎ物を入れてもらう箱)を設置するヴィジュアル系バンドは少なくありません。
むしろ、大半のヴィジュアル系バンドはプレゼントボックスを設置していて差し入れを受け付けているのですが、ファンの間では「貢ぎ(蜜)」と呼ぶそうです。
なかには、私服や食生活など、すべてを貢ぎで生活するバンドマンもいると言われています。事実上、援助交際のような内容になっていて、例えば、「月5で蜜する」(1ヵ月に50,000円支払う)という言葉もあるそうです。
ちなみに、プレゼントボックスへ差し入れすべきものは、メンバーのブログを読むとわかると言います。熱心なファンはブログを読み、推しメンの好みを調べてプレゼントを入れているのだそうです。
ただし、「ガチで売れたい派のメンバー」と「蜜で満足してしまうメンバー」の温度差があるらしく、バンドメンバーが一気に抜けるケースも多いのがヴィジュアル系です。
メンバーの温度差はどのジャンルでもありますが、よりメンバーごとの個性が売上を左右するジャンルならではの難しいのかもしれません。
華のあるヴィジュアル系の世界の裏側
今回聞いた話を受けて、音楽的エッセンス以上に、ヴィジュアル系バンドは「メンバーのカッコよさをいかに引き立てるか」を重視するジャンルのように感じました。
ただし、ホスト化することで堕落するメンバーが現れ、バンドが解散するリスクもあります。音楽不況の昨今においては成長著しいジャンルですが、ヴィジュアル系バンドを始める場合、このような難しさがある点も考慮しておくとよさそうです。