先日、小学校の同級生と沖縄旅行の予定について話し合っていた。
僕は友達想いの良い成人男性なので、やれスキューバーやら、ちゅら海水族館やら、色んな観光ルートについて「なんでもいいや」と返していた。
ところがいざ具体的なスケジュールを組むくだりになって、同級生の嫁さんが「私、奄美大島に行きたい」なんて言うもんだから、「それは鹿児島で、俺たちは沖縄に行くんだよ」と突っ込んで空気を悪くしてしまった。
さて、奄美大島と言えば観光地でもあるものの、沖縄と同じく高温多湿の地域であるため、猛毒を持つ蛇、ハブが生息していることで知られている。
そんな奄美大島では、危険な毒蛇ハブを捕獲して自治体に持ち込むと、なんと賞金を支払ってくれるそうなのだ。
現地ではこれを生業にした住民もいるという。
観光地として知られる奄美大島の、隠れたサイドビジネス
時として命を奪う可能性を秘めた危険な生物ハブ。
その毒性は非常に強く、日本の22の島にしか生息しない、極めて貴重な固有種でありながら、あまりに多くの被害が出るために駆除が盛んになっている。
ハブ駆除の歴史は意外と古く、1860年代には薩摩藩がこれを駆除した領民に、褒章として米を与えていたという記録がある。
現在は血清が流通しているものの、いまだに咬まれれば危険な状況に陥ることには変わりがない。
観光地には、ともすれば相応しくないように思えるハブ。そんなこの毒蛇の捕獲を、奄美大島ほか、ハブの生息する8市町村は推奨しているという。
捕獲したハブは自治体に持ち込むことで、賞金と引き換えることができる。
気になる1匹あたりの買取額は、2014年以降はおよそ3,000円。これまでに3,000匹が持ち込まれたということなので、かなり駆除は進んでいるようだ。
1日10匹捕獲すれば30,000円と、危険ではあるがなかなかの実入りになる。
ただし、ここで残念なお知らせ。
たとえハブを捕獲しても、賞金を受け取ることができるのはその自治体の居住者のみなのだ。
だからどうしても賞金がほしいというのなら、住民票を移さないといけないということになる。
そうは言っても、このようなモデルケースはいずれ全国的に普及する可能性がないわけではない。
増え続ける危険生物…これからの日本では危険生物ハンターが活躍する?
現在、この日本では内地でも特定危険生物、外来生物が増えつつある。
戦後の食糧難の折に、食用として持ち込まれたウシガエル。このウシガエルの餌として持ち込まれたアメリカザリガニは、環境適応力に優れ、あっという間に全国レベルで繁殖した。
ブルーギルやブラックバスなどは、まさに爆殖とも言えるレベルで増えていき、生態系を破壊している。
それから近年では、ペットのアライグマが逃げ出した末に野生化したり、ヌートリア(別名沼狸)が当たり前のように闊歩する河川まである始末だ。
長崎では、韓国から何らかの形で持ち込まれた外来のスズメバチが繁殖しつつある。
というかそもそも、普通のスズメバチが既に危険で、駆除業者も日々奮闘している。
次々に繁殖を繰り返していく危険な生物たちに、行政も駆除業者も防戦一方というのが実情。
そこで僕は予想する。
今後は各地の自治体が賞金を出して、それらの駆除を住民に任せる可能性があるのではないかと。
今こそ危険生物退治ビジネスの萌芽の時代か
あるいは今こそが、今後の需要に先見の明を抱き、そうした危険生物の被害を未然に防ぐビジネスの萌芽の時代ではないだろうか。
既にアライグマをはじめとした、これまで日本にいなかった危険生物の駆除を執り行う業者も現れたが、まだまだ足りない。
需要は今後間違いなく伸びる。
サイドビジネスとして扱うには厳しいが、もしも勤め先の今後に不安があるというなら、いっそこうした外来危険生物の駆除を専門とした業者を立ち上げても良いのでは?
ところで、最近になってハブの買取価格は減少傾向にある。
理由は、奄美大島の場合は財政の圧迫。
住民の中には、ハブの駆除で生計を立てる者もいるため、この価格の値崩れは大打撃だろう。
ただ、ハブはそもそも限られた地域の固有種。
生態系の上位に位置するハブが、度重なる捕獲と駆除でいなくなれば、ハブが餌にしているネズミなどの小動物が一斉に殖えていき、農業に打撃を与える。
実際、一部の農家はハブを「毒さえなければ益獣」と見ているケースもある。
どういう被害を引き起こすにせよ、ハブがいなくなれば、それはそれで問題が多発してしまうのだ。
(文/松本ミゾレ)