保育士の仕事にはとても尊い役割がありますが、一方で長時間労働や休日出勤など労働環境の面や待遇面で優遇冴えているとは言えません。したがって、もっと待遇と労働環境が良い職場、あるいは仕事への転職を考えている人もいるでしょう。
ここではそのような時に、どうやって希望通りの転職先を見つけたらよいのか、という点についてご紹介します。
保育士の転職動向
まず最初に簡単に、保育士の転職する場合の転職市場の動向に触れておきます。
深刻な人材不足でニーズは右肩上がり
多くの待機児童の存在が問題として国会でも取り上げられていますが、それに伴って保育士の求人案件は右肩上がりで増えています。行政は保育園の整備や、幼稚園と保育園を統合した幼保連携型認定こども園などを推進し、働く母親のための保育体制の拡充も図っています。また企業や病院独自に院内保育施設や企業内託児所を設置するケースも増えているなどが、その背景にあります。
しかしそれに見合っただけの保育士の人材確保は進んでいません。冒頭で書いた待遇面、労働環境面が仕事の大変さとアンバランスであるため、保育士志望者は減少し、保育士からほかの仕事への転職者も増えているのです。
ですから、保育士から保育士に、あるいはほかの仕事にという時には転職先を見つけることに比較的苦労は少ないでしょう。
労働は厳しく賃金水準は低いという現実
ただし何度も触れているように保育士の待遇は決して良好とは言えません。厚生労働省の平成27年度の調査では保育士の平均年収は約323万円で平均月収は約22万円と、労働者全体の平均年収の420万円に対して100万円近く低くなっています。
現実にはサービス残業もありますし、交通費が支給されないために徒歩通勤を余儀なくされている、ということもあります。また雇用形態も正社員ではなく、パート労働者など非正規雇用も多く、決して安定しているとは言えません。
転職先を効率良く探すには
そのような環境の中で、少しでも待遇と労働環境がよく、働きやすい職場を見つけるにはどうしたらよいでしょうか。その方法を以下に挙げていきます。
時間がなければ保育士専門の転職サイトを優先利用する
転職するうえではできるだけ多くの方法で転職先を探すことが成功の第1条件ですが、なかなか時間が取れないという場合は、保育士専門の転職サイトを優先して利用しましょう。この方法のメリットは、
- 自分の希望に沿った職場が見つけやすい
- 履歴書の書き方や面接の仕方などのサポートが受けられる
- スマホサイトもあるので、仕事の合間や帰宅後の短い時間を有効利用できる
という点です。これに合致したおすすめのサイトを3つご紹介します。
保育士バンク
特徴
保育士バンクは厚生労働大臣認可の保育士専門の転職支援サービスです。求人情報が非常に多いのが特徴で、全国の情報が網羅されています。また登録すると専任コンサルタントがつくので、最適な転職先候補の紹介だけではなく転職成功のためのアドバイスももらえます。
マイナビ保育士
特徴
転職業界最大手企業の1社であるマイナビ運営の保育士専門の転職サービスです。東京など首都圏での求人を探すのであれば無類の力です。専任コンサルタントのスキルも高く、表面的な情報だけではなく、施設ごとの運営方針や職場の雰囲気、実際の残業状況なども調べてくれます。待遇アップ、労働環境のよい職場を探すのであれば外せないサービスです。
保育ひろば
特徴
保育広場は人材紹介会社の系列ではなく、独立系ですが、地域ごとに専任コンサルタントを設置し、地域密着で保育園情報を集めています。他社に比べてサポートが手厚く、非公開求人も多いので、意外に良い条件での転職先が見つかるサービスです。また転職に成功するとお祝い金が出るのもここだけです。
知人からの紹介
先に転職した先輩や友人などがいれば、職場を紹介してもらう方法もあります。ただしメリットだけではなくデメリットもあります。
メリット
- 施設の実態がリアルにわかる
- その職場を知人が辞める時に紹介してもらえば、引継ぎとして確実に入社できる
デメリット
- 紹介されたらこちらからは断りにくい
ハローワーク
ハローワークの正式名称は「公共職業安定所」です。全国各地にあり、登録すればどのハロ―ワークからでも全国の求人情報と求人票が検索できます。給与などの条件も細かく設定できますし、いったん登録すればインターネットでも募集の検索だけはできますので、求人サイトの活用と併せてぜひ利用したい方法です。メリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- 公的サービスなので安心感がある
- 求人数が多い
- 担当者に相談に乗ってもらえる
デメリット
- 求人情報は企業側が出してくる内容だけなので、真偽が分からない
- 職場の仕事環境までは分からないため、イチかバチか的な要素がある
求人誌、求人折込みチラシ
保育士の求人数はあまり多くありませんが、コンビニなどに置いてある求人誌や、新聞折込の求人広告で探す方法です。
メリット
- 無料で手軽に求人情報を探せる
- エリア限定のことが多いので、働きたい場所の求人情報が探しやすい
- 保育士特集があれば比較的職場の雰囲気も分かる
デメリット
- 特集などがなければ載っている情報量は非常に少ない
- 「広告」なのでいいことしか書いていない
職場選びのポイント!良し悪しをどう判断するか?
次に、このような方法で転職先候補を見つけた場合に、どのようにしてその求人内容を検討すればよいのでしょうか。
本当の待遇の見極めるためには求人情報をしっかり分析する
まずハローワークや転職サイトなどで求人情報を見る場合には、以下の点を確認しましょう。
基本給と賞与から年収を計算する
求人票の給与欄には「月給20万円」という形書かれいますが、これは1ヶ月に支給される給料の額面の合計金額です。しかし実際はこれは「基本給」+「各種手当」が内訳です。この内訳を調べましょう。というのは基本給15万円+手当5万円、と基本給18万円+手当2万円では大きく年収が変わってくるのです。
そのポイントは賞与です。賞与はほとんどの場合「基本給×1.5月分」などで計算されますから、この場合であれば、15万円×1.5ヶ月=22.5万円と、18万円×1.5ヶ月=27万円で、支給額が4.5万円変わってきます。
年間9万円です。年収300万円のうちの9万は大きいです。ですから、給与の合計額ではなく内訳から年収を計算して比較しましょう。
仕事のハードさ
保育園はとにかく保育士が必要なので求人を出していますから、当然自分の施設の良い点ばかりをアピールします。しかしそれが本当に具体的な根拠があることなのかを見極めないと、表面的な耳心地のいい言葉だけで判断すると、ひどい環境だったということもあり得ます。たとえば、見極めるポイントは以下のようなことです。
「残業が少ないのでアフター5が充実します」
この場合は「平均の1ヶ月の残業は?」「それは役職ごといどうなのか」を確認しましょう
「有給取得率が高いです」
この場合は「具体的な有給消化率は?」を確認しましょう。
「教育研修が充実しています」
この場合は「具体的な教育プランは何か」「それはどの程度の頻度で実施されているか」を確認しましょう。
これらはサイトや求人票だけではわかりませんから、コンサルタントを通じて調べるか、面接などでしっかり確認しましょう。
人間関係、園長との相性
意外に1番気になり、そして離職理由としても上位に上がるのが、職場の人間関係、保護者との関係、園長との相性です。
しかしそれらは当然サイトや求人票ではわからず、絵院長との相性は多少面接で分かりますが、それ以外はもわかりません。したがって、できれば職場見学をさせてもらって自分の目で確認しましょう。
より有利な転職をするために
このような方法で、転職先の候補を見つける時に、絶対に保育士の仕事にこだわるのか、保育士の資格を生かしてほかの仕事に就く方向も考えるのか、などによって検索条件が変わってきます。
その中で、待遇と労働環境などをよくすることを1番に考えるのであれば、以下を候補として優先して考えましょう。
転居、大規模保育園を狙う
保育士不足は特に首都圏で深刻化しています。それは逆に、保育士への待遇を改善するという動きにもなっています。ですから首都圏の保育園への転職はできれば考えたほうがよいでしょう。
今、首都圏在住であれば問題はありませんが、それ以外の場所に住んでいる時には、転居も考えたほうがいいかもしれません。首都圏の保育園は、そのような転居を伴う転職者もターゲットにしていて、引っ越し費用の負担、きれいな社宅の完備、など福利厚生を充実させている施設も増えています。
また同じ保育園でも、待遇は大規模ほど良いという傾向があります。そのような保育園はやはり児童の多い首都圏に多くありますので、その点でも首都圏への転職を考えましょう。
非公開求人に応募し、好待遇の保育園へ転職
待遇アップで保育士を集めようとする保育園が増えてきた、と書きましたが、そのような求人は実はハローワークには出てきません。また求人サイトで検索しても出てきません。それらはコンサルタントが「この人なら先方の条件に合う」と判断した人にだけ紹介する非公開求人に存在しています。
そのような非公開求人に応募するためには、まず保育士専門の求人情報サービスに自分の履歴書と経歴書を登録して、コンサルタントからのスカウトを待たなければなりません。ですから、求人情報サービスへの登録を最優先で行いましょう。
日本最大級の保育士求人サイト「FINE!保育士」は完全無料サービスで、プロのキャリアコンサルタントが転職のサポートをしてくれます。また、全国に10,000件以上の好条件の求人情報が掲載されいるので、あなたにぴったりの転職先が見つかるはずです。
公立の保育士を目指す
公立保育園の保育士は地方公務員ですから、ほかの公務員と同じ基準で給与が支給されるため、年収は非常に高く、同年齢の保育士で年収100万円は変わってきます。なおかつ残業代は全額支給で、有休消化も半ば義務となっています。ですから待遇と労働環境の改善を目指すのであれば、公立の保育士を目指すのも方法です。
ただしそのためには、自治体が行う保育士採用試験を受けて保育士資格を取得すること、同時に自治体の公務員試験にも合格すること、という2つの試験の合格が必要です。しかしそれに合格しても、まずは採用候補者になるだけで、対象エリアの公立保育園に欠員が出て初めてその補充として採用される狭き門です。
募集の案内は自治体のサイトに出ますから、働きたいエリアの自治体の募集時期と応募条件を調べておきましょう。応募条件には年齢制限もありますので確認を忘れないことです。
ジョブチェンジにチャレンジする。その候補は?
また保育士の資格を生かせるほかの仕事を目指す転職もあり得ます。たとえば以下のような職種です。
幼稚園教諭
保育士の仕事と近いものに幼稚園教諭がありますが、保育士が厚生労働省管轄の「福祉職」であるのに対し、幼稚園教諭は文部科学省管轄の「教育者」です。
年収で言うと保育士よりも平均で50万円ほど高いのが現状です。だからというわけではありませんが、幼稚園教諭免許の取得には、教職課程がある大学や短期大学で必要単位を修得することが必要です。ただし、保育士として3年以上の実務経験を積み、幼稚園教員資格認定試験に合格すれば幼稚園教諭二種免許が取得できます。
児童指導員、児童発達支援管理責任者
放課後にデイサービス事業所などの障害児支援施設で、児童の世話をする仕事です。児童発達支援管理責任者になるための要件として「保育士」「教員」「児童養護施設」などの経験が実務経験として含まれることになりましたので、有利です。
病院内保育施設
看護師の子ども達を預かる院内保育所と、入院している子どもを預かる病児保育があり、どちらも保育士免許が必要です。ニーズが高く設置数がどんどん増えています。
託児所
保育園と同じサービスを行う無認可園のほか、自動車学校や美容院、ホテルなどでも託児サービスを行う施設が増えています。またコンサートなどのイベント時に預かる託児サービスを請け負う企業も出てきています。保育士免許は必須ではありませんが、持っていれば有利です。
介護職
保育士などの福祉関連資格取得者で介護職に転職する人は多いです。というのは介護士と保育士の試験科目の中で重複するものがかなりあるからです。仕事内容も、仕事への姿勢も似ているので、保育士出身と言うと採用の確率は高いです。
学童保育、児童館
学童保育の仕事をするためには放課後児童支援員の資格があった方が有利です。この資格は保育士資格を持っていると、研修を受けるだけで取得できます。
幼児教室の先生
これも保育士の資格は必須ではありませんが、採用上は有利です。また独立して自分で教室を開く場合も、保育士資格は保護者の安心感をもたらします。
資格を必要とする別職種の会社員・公務員
保育士の仕事を離れてもよければ、国家資格を取得して同じ福祉関係の団体職員や公務員、安定した企業の社員などへの転職も考えられます。
社会福祉士
その中で社会福祉士は社会福祉専門職の国家資格で、ソーシャルワーカーとも言います。社会的弱者とその家族の相談によって、日常生活の支援を行います。仕事内容として保育士と相性が良いのでおすすめです。
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まとめ
いかがでしたか。
子供の健やかな成長を助ける、というのは非常に重要な仕事ですが、しかし保育士も労働者である以上は、待遇や労働環境のよい職場に移っていくことは、決して悪いことではありません。
そのためには、保育士専門の求人サイトやハローワークなどをうまく利用して、場合によっては「保育園」という職場以外も候補に入れて、自分の希望に沿った転職先をみつけ、ぜひ仕事の大変さと対価が見合った仕事を見つけることが肝心です。
忙しい中なかなか活動できないかもしれませんが、少しの時間を利用してぜひ転職を成功させましょう。