転職の面接を1次、2次とクリアして、次は役員あるいは経営者の最終面接となると、あるいは少しホッとするかもしれません。
いくつかの会社は、それはある種の「セレモニー」でほぼ採用するかどうかはそれまでの面接で決まっており、最終面接はトップの同意をとるためのものという位置づけの場合があることも確かです。
その一方で、特に中途採用は、採用後に任せるポジションが事業戦略的に重要な場合や、用意する年収レベルが高い場合も多いので、セレモニーではなく本当に最終的なシビアな判断の場ということも少なくありません。
そしてそのような最終面接を担当する役員や経営者は、経験豊富で人の本質を見抜く力が備わっていますので、実はそれまでの面接よりもハードルが高いことも事実です。
しかし見事に採用を勝ち取るためには、その最終関門を超えることが必要です。そこでここでは、転職時の最終面接の特徴や、その時のポイントなどについてご紹介します。
面接は、段階別、面接官の職位別に役割が異なる
転職に限らず採用面接は、実はそれぞれの段階で面接担当者が自分の気になる点を聞いているのではなく、それぞれに役割と目的が分かれています。
綿密な会社や人事担当者が優秀な会社は役員も含めた面接担当者それぞれと打ち合わせて、何をこの段階では確認するのか、ということを決めています。それは具体的には以下のようなことです。
1次面接
面接担当者は人事の採用担当と、場合によっては配属される部署の仕事に詳しい担当者が行います。
目的は候補者のスキルと職務経歴の詳細の確認です。ほとんどの場合は、職務経歴書に沿って、その詳しい内容を突っ込んで聞き、事実関係に矛盾や虚偽がないかをチェックしていきます。
さらにこの段階で、その人物の基本的な人柄、身だしなみ、態度等でのスクリーニングも行います。
2次面接
面接担当者は人事部長などの採用の責任者と、場合によっては配属される部署の直属の上司になる人が行います。
ここでも職務経歴やスキルの内容の確認が行われると同時に、人格的に問題がないかどうかの確認、配属予定部署の仕事内容や必要とされるレベルなどの要件とマッチしているかということの確認が行われます。
特に「仕事の進め方」などについては詳細に聞かれます。
3次(最終)面接
面接担当者は、多くの場合配属予定部署を統括する担当役員または経営者(社長)本人が行います。
ここで確認されることは、1次面接、2次面接と比べて、ある意味アバウトで、逆に言えば候補者の本質に迫るような内容です。具体的には、
- 経営者との相性
- 企業風土との相性
- 今回の仕事への意欲
- 人間性
などです。
役員や経営者は、多くの人材を見てきた観察眼がありますので、候補者の弱みや経歴上のネックなどに突っ込んできたリ、あるいはあえて揚げ足とりの質問をして、ボロを出させてその人物の本質やポテンシャルを見ようとします。
いずれにしても、この面接方法には定番的なメソッドはありませんので、基本的にはその経営者の勘で印象判断する場合が多いです。が、しかしその分、事前準備がしにくく、ハードルは高いと考えましょう。
最終面接をクリアするために押さえるべきポイント
ではそのような最終面接をどのようにクリアしたらよいのでしょうか。
はっきり言って、その経営者、役員によって全く雰囲気も質問内容も違うケースが多いので、汎用的な対策は立てにくいのですが、少なくとも以下については注意することが必要です。
ビジネスマナーに気を遣う
最終面接の面接担当者である役員、経営者は年配の場合が多く、したがって礼儀やマナーにうるさいことも少なくありません。
印象評価ですから、ビジネスマンの基本であるマナーができていないと、それだけで社会人としての基礎ができていないと判断されてしまいます。
したがって面接前には、もう1度最低限のビジネスマナーを確認し、ほころびのない態度で臨めるようにしましょう。
企業理念、経営方針、戦略に沿った志望動機や自己PRを心がける
最終面接で1番重視されるのは経営者や企業風土との相性です。もっと簡単に言ってしまうと「俺とうまくやっていけるか」という点です。
ですので、その企業の根本の価値観である企業理念やビジョン、役員、経営者の方針である経営戦略に対して否定的な考えを示すと、それは相性が合わない、と判断されます。
したがって、それまでもしているでしょうが、最終面接の前には、必ず応募企業の理念や戦略を確認し、その流れに沿った中で自分がいかに貢献できるか、という話ができるようにしておきましょう。
ただし、ここが難しいところですが、新卒採用面接の答えのような「御社の企業理念に感銘を受けて」という内容では、すぐに表面的だと見破られますので、自分の価値観、過去の仕事、今後やりたい仕事との整合性の中で話すことが重要です。
また、相手の発言が明らかに自分の考えと違う場合や異論がある場合でも、あからさまなに否定は止めた方が無難です。
入社意欲、仕事への意欲を熱く語り、好印象をゲットする
最終面接は人間性を見る場でもありますから、その応募者の入社したいという意欲のレベルを重点的に見られます。意欲が高ければよい印象につながります。逆に意欲が感じられないと、役員や経営者の「心」が動かず、採用につながりません。
そのためには、面接時には以下の5点を押さえるようにしましょう。
- 相手の話は、やや前傾姿勢で、目を見てうなづきながらしっかりと聴く
- 理念と戦略に合致した志望動機を考えておく
- 英語や難しい言葉を使わず、相手の年齢に合った言葉で話す
- 役員、経営者の考え方を質問の形で肯定し「心をくすぐる」逆質問をする
- 本音を探る揚げ足取りの質問に対しても積極性を感じさせる答えができるようにする
特にポイントは4番目と5番目で、少し高度なテクニックです。
たとえば4番目の「心をくすぐる」逆質問は、その会社の沿革などを調べておき、経営のターニングポイントとなり現在の経営戦略の軸になっているような事実について行うことです。
それは経営者や会社のアイデンティティを語るように仕向けることなので、相手は非常に気持ちよくなり、応募者への印象がよくなります。
ほかにも以下のような質問事項を考えておきましょう。
- 社長が会社を経営する上で一番大切にされていることは何でしょうか?
- 社長の夢をお聞かせください
- 今のビジネスモデルはずいぶん時代に先駆けていたと思いますが、躊躇はなかったのですか?
- 会社の1番の成長要因は何でしょうか?
- 一緒に仕事をしたいと思われる人物像をお聞かせください
- これまでの仕事の中で1番嬉しかったこと、達成感があったことは何でしょうか?
また5番目は以下のような揚げ足取りの質問が考えられます。
応募者「事業提案制度などがあり、社員の意欲を汲み取って、チャレンジできる社風に魅力を感じ、志望いたしました」
面接担当者「確かにそういう制度もありあますが、実際にはトップダウンの仕事も多いですよ。そのような仕事の場合、やる気は起こりませんか?」
このような時に、しっかりと落ち着いて、最初に言った志望動機と矛盾なく答えることができれば
- 「考えが表面的ではなく本質をよく見ている」
- 「問題解決の能力が高い」
- 「経営者から難問を出されても対応できるポテンシャルがある」
と評価が非常に高まります。このような質問は事前に想定できませんが、しかし何を聞かれても平然と、そして積極的な内容で答えられる心の準備は必要です。
最終面接に臨む心構え
ここまでの説明でお分かりのように、最終面接は小手先のテクニックではクリアできない難関です。ですので、以下のような心構えを持って臨みましょう。
- 小手先のテクニックは通じない。本当にその会社に入りたいという、その気持ちを前面に出す。
- いい意味で開き直る。自分をよく見えるように飾らない。素の自分で勝負して、それでだめなら仕方ないというくらいの気持ちで臨む。
- 相手がフランクでも面接だということを忘れない。
1番めと2番めは既に説明した内容でお分かりでしょうが、3番目も意外に曲者です。
面接担当の経営者や役員が営業畑などの出身の場合は、妙にこちらを持ち上げてリラックスさせるように仕向けてきたリ、特にオーナー経営者の場合は非常にフランクにざっくばらんに話しかけてきたりします。
しかしそれは、それに安心して、必要以上のことをしゃべったり、思わず本音が出たりするようにするワナです。ですので、相手がそのように接して来ても、気を抜かず、ボロを出さないように気を付けましょう。
まとめ
いかがですか。
最終面接は採用側の企業も、ある意味会社の将来を左右するかもしれない場面ですので、非常に真剣であり、また同時に用意する報酬に見合う人物かどうかのコストパフォーマンスをシビアに見てきます。
しかしここをクリアしなければ、採用されません。しっかりと事前準備をし、心構えを整えて、見事成功するように頑張りましょう。