ADHDとは?
ADHDとは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、日本では「注意欠如・多動性障害」と言われています。年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする障害で、社会的な活動や学業に支障をきたすものをいいます。
また、症状は7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されています。
アメリカ精神医学会の診断基準第5版(DSM-Ⅴ)による注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害の診断基準
DSMとは、アメリカ精神医学会の診断基準を書籍化したもので、それを診断材料として日本でも扱われています。2013年に改訂された最新版DSM-5における注意欠如・多動性障害の診断基準は以下の通りです。
1.以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。
- 細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
- 注意を持続することが困難。
- 上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
- 指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
- 課題や活動を整理することができない。
- 精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
- 課題や活動に必要なものを忘れがちである。
- 外部からの刺激で注意散漫となりやすい。
- 日々の活動を忘れがちである。
2.以下の多動性/衝動性の症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。
- 着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
- 着席が期待されている場面で離席する。
- 不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。
- 静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
- 衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
- しゃべりすぎる。
- 質問が終わる前にうっかり答え始める。
- 順番待ちが苦手である。
- 他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。
3.不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは12歳までに存在していた。
4.不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは2つ以上の環境(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している。
5.症状が社会・学業・職業機能を損ねている明らかな証拠がある。
6.統合失調症や他の精神障害の経過で生じたのではなく、それらで説明することもできない
以上の診断項目により当てはまった人がADHDと診断されるのです。この診断基準はどの年齢にも対応しています。
ADHDのタイプ
ADHDは3つのタイプが存在します。3タイプ分けの基本となるのが、多動性・衝動性・不注意の3つです。簡単に言うと、
- 多動性とは落ち着きがなくじっとしていられないことです。
- 衝動性とは、思いついたら即行動してしまい、自分をコントロールできないことです。
- 不注意とは、注意力が散漫・すぐに忘れる・片づけができないことをいいます。
以下にタイプ別に特徴を説明いたします。
タイプ1.不注意優勢型
- 注意が散漫
- 人の話を集中して聞けない。
- 片づけができない。
- 無意識に散らかす。
- 忘れ物が多い。
- 物をすぐ失くしてしまう。
- 時間にルーズ
- 何度注意されても失敗する。
- 単純なミスが多い。
- 身だしなみを気にしない。
タイプ2.多動・衝動性優勢型
- 元気があり動かずにはいられない。
- すぐにテンションが上がる。
- じっとしていられない。
- 自分の行動をコントロールできない。
- いけないとわかっていてもやめられない。
- 座っていても手足を動かしている。
- 順番を待てない。待っていても苛立ってしまう。
タイプ3.混合型
ADHDの中で最も多いタイプが混合型です。不注意、多動性、衝動性のすべてを持っていて、不注意優勢型と多動衝動性優勢型の2つのタイプの特性をもっている方を指します。
ADHDかもしれない‥と思ったら何をすればいい??
インターネットで簡易チェックをする。
最近はインターネット上でADHDかどうかを簡易的チェックすることができます。自己記入式ですので、主観的な判断となりますが、まずは手軽にできるチェックリストから取り掛かってみるとよいかもしれません。
診断を受けるか否か?
チェックリストによって、ADHDの可能性が疑われたら、病院に行き診断を受けるか、診断を受けないまでもADHDの症状が改善できるような環境調整を行うか、の選択をします。
ADHDと診断された場合、ADHDの症状に有効と言われる薬物療法を行うことが出来ます。しかし、診断を受けなくても、カウンセリングや環境調整等である程度改善する場合もありますので、ご自身の感じる“生きにくさ”によって、診断をもらうか否かについては判断してください。
また、「ADHDかもしれない」とご自身では思っていても、その他の精神疾患である可能性も十分に考えられます。
専門家以外の方の判断は、症状を悪化させる可能性もありますので、まずは一度お近くの心療内科や精神科に相談をすることをお勧めいたします。
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環境調整を行ってみる
「自分はADHDかもしれない。でも、病院で診断を受けるとなると少し怖い」と思われる方も大勢いらっしゃると思います。そんな時は、一度自分の生活環境のアセスメントと環境調整を行ってみましょう。
ADHDとは、病気ではなく個人“特性(特徴)”の一つです。それを踏まえて自分の弱点を攻略できるような生活スタイルを築いていきましょう。以下に例を挙げてみます。
- 忘れ物が多い方の場合、忘れ物を未然に防げるよう所持品チェックリストを作り、出かける前に確認することを習慣化する。
- 衝動的に買い物をしてしまう方の場合、日々財布に入れる額を少なめに設定し、クレジットカードを使用しても良い日や買い物をしても良い日を事前に決めておき、毎日の金銭管理を行う。
- 集中力が続かない場合、タイマーを利用し、20分仕事したら3分休憩等の作業リズムを作り、それに則って仕事を行う。視界に不要なものが入らないようデスク回りは極力物を置かないようにする。
こうした、工夫をしても自分ではどうもクリアできない課題があると思います。その場合は遠慮せず、自分を責めず、他者からのサポートを得ましょう。
例えば、片づけが苦手だったら、家族やハウスキーピングの方に掃除片付けをお願いするといったことです。人間は長所と短所があって当たり前です。
どうしてもできないことに悲しんで悩むよりも、自分の得意なこと、好きなことを活かして生活していくことを心がけてください。
ADHDの診断を受けたら何をすればいい?
障害者手帳の取得
障害者手帳は、障害者が一定の精神障害の状態であることを証する手段となり、各方面の協力を得て各種支援策を講じやすくすることにより、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としています。
手帳を取得すると各種制度において優遇されることがありますが、手帳は取得してもしなくてもOKです。
診断を受けたからと言って全員が所持しなければいけないということではありませんので、ご自身の状況に合わせて近隣の役所に相談してみましょう。
障害者枠での雇用
診断を受けることによって、企業の障害者枠にて就職することが出来るようになります。今まで仕事面において困難を抱えていた方には新しい一筋の光となるかもしれません。
しかし、障害者枠は一般職に比較して枠が少なく、賃金面でも減額されていることがあるので、ハローワークなどで相談をしながら就職方法を決めていくことをお勧めいたします。診断を受けていても一般職で就職することも可能です。
一番大切なのは、ご自身に合った仕事かどうかを考えて職業選択をすることですので、その点を忘れずに決定していってください。
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おわりに
ADHDは個人の特性の一つです。自分がうまく生活するためには、どうやって生活環境を整えたらいいのか、診断や薬物療法と共にまずは出来る範囲の環境整備をしていくことをおすすめします。