現在は有効求人倍率が1.5倍を超えようという日本の社会状況ですので、転職を考えている人にとってはまさに「売り手市場」です。
しかしこれは「統計のワナ」とも言えるもので、実際には一部の優秀な人材に企業からの求人案件が集中し、そうではない人には全くオファーがかからないという、アンバランスな状態になっており、それらを平均すると、1.5という数字になるということです。
それは実際に転職を成功させた人の場合でも同じことが言えます。
転職というと、ポジションが上がった、年収額が増えた、将来的な展望が開けた、というような「キャリアアップ」のイメージがありますが、全員が全員キャリアアップするわけではありません。中には「キャリアダウン」の転職をしてしまう人も少なからず存在します。
しかし転職という大きな賭けをする以上はぜひキャリアアップにつながる方向で行きたいという人がほとんどでしょう。
そこでここでは、転職でキャリアアップするにはどういう点に気を付け、どのようなことを身につければよいのか、ということについてご紹介します。
転職でキャリアアップする可能性は?
キャリアアップにも2つある
まず大前提として確認しておきたいのは、キャリアアップと一言で言っても、実はその内容と方向性で2つに大別できるということです。具体的には以下の2つです。
1つは「深耕型」キャリアアップです。これは、ある限定された範囲のスキルレベルを高めていくことで、収入やポジションもそれに伴って上がっていくというキャリアアップです。
たとえば、営業であれば、営業スキルを極めてプロフェッショナルな営業マンとなり、業界が変わるような転職をしても、そこでもそのスキルを使ってトップセールスになれるようにしていく、ということです。
もう1つは「拡張型」キャリアアップです。これは自分のスキルを軸に横に広げていって、ほかのスキルについても身につけてより汎用性の高い、ゼネラリストとも言える人材になることで、職種を選ばずに転職していくキャリアアップです。
たとえば営業の仕事の中で営業のスキルだけではなく、顧客ニーズを生かした商品開発のスキルも身につけていき、それによってジョブチェンジも図りながら、収入やポジションを上げていくということです。
そもそも転職をしたら平均年収は増える?減る?
このようないずれかのキャリアアップをすれば、多くの場合は年収は増えますが、しかし実際の転職ではそうとも限りません。
平成25年の厚生労働省が実施した「雇用動向調査結果の概況」によれば、転職をした年代別では、以下のように年収が増えた人と減った人が分かれています。
20-24歳 | 年収増35.9 | 減31.9 |
25-29歳 | 年収増36.1 | 減33.7 |
30-34歳 | 年収増37.4 | 減29.3 |
35-39歳 | 年収増37.6 | 減28.7 |
40-44歳 | 年収増33.2 | 減28.9 |
45-49歳 | 年収増26.2 | 減30.1 |
50-54歳 | 年収増24.1 | 減34.7 |
55-59歳 | 年収増21.2 | 減42.0 |
いかがですか。ざっくりと見ると、転職した場合、どの世代においても、年収が上がる人も下がる人もそれぞれ3割程度は存在するということがわかります。
さらに詳細を見ると、それでも40代前半までは年収の増える転職をしている人の方が、減る転職をした人よりも多いという傾向がありますが、45歳を境にそれは逆転し、50代での転職では年収の減る転職をした人の方が、増えた転職をした人より10%も少なくなる、ということです。
もちろんその人の持っているスキルや、転職先の給与体系次第であり、それに必ずしも年収の金額が上がることのみがキャリアアップの成否を示すわけもありませんが、やはり年収の上がる転職を志向するのであれば40代前半までのほうがよい、ということは概観としては言えるでしょう。
転職でキャリアアップするための4つの要件
では、転職でキャリアアップするためには何が大切なのでしょうか。それにはおおむね4つ挙げられます。
1 しっかりとしたスキルを持っている
やはり1番はどの企業でも欲しくなるようなスキルを身につけていることです。
具体的には海外展開をしている企業や外資系企業であれば英語力ですし、あるいは経理・財務、マーケティング、人事業務などの専門的な能力も評価が高いです。
さらには、中小企業でも大手企業でも部下をしっかり管理できる即戦力の管理職はほしいですから、マネジメント経験も重視されます。このようなどこの企業でも使える汎用性の高いスキルを「ポータブルスキル」と言います。
2 キャリアに一貫性がある
2つめは何社か転職をしている場合ですが、その選択している業種、業界、職種に一貫性があるかということです。
もちろん、「食品業界の営業一筋」とまではいかなくても、食品関係で営業職から企画職に転職した、食品関係の営業職から商社の営業職に転職した、などのように職種、あるいは業種に一貫性があれば大丈夫です。
経験職種に一貫性がない転職をしている場合は、面接担当者や面接官がその候補者を、深く考えず嫌になったら転職している人物、と評価してしまう危険性があります。
3 強い専門分野を持っている。
強い専門分野、高い専門知識を持っている人も企業が欲していますので、その転職はキャリアアップにつながるでしょう。
たとえば経営企画、事業戦略、マーケティング、ファイナンシャル、M&Aなどの専門分野を極めていれば、かなりポジションも年収も上がる転職ができます。
何らかの国家資格を持っている人も強いです。
4 転職活動そのものでのアピール度
またいくら優れたスキルや強い専門分野を持っていても、それが実際の人事採用担当者に魅力的に伝わらなければ、転職でキャリアアップすることはできません。
そのために重要なものは1つは面接であり、もう1つは職務経歴書です。
よく勘違いされているのは、面接は質問に答える場、職務経歴書は経験職種を説明する書類としか考えていない場合が多いことです。それでは全く人事採用担当者にその人物を魅力的だと思わせることはできません。
面接は自分という「商品」を売り込む営業の場と思って臨み、職務経歴書は自分を売り込むパンフレットだと思って作りましょう。
そこでは、前職での実績や成果をできるだけ数値化して示し、業務遂行能力が十分にあることを伝えることが重要です。
また第2新卒での転職や職務経験が浅い場合は、訴える経歴があまりありませんので、自分がその会社に入って成長し、近い将来業績に貢献するはずという可能性を感じさせましょう。
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最後に必要なのは人間性
ただし、いくら素晴らしい人材でも、最終的に次の企業、次の職場をキャリアアップのステップにできるかどうかは、入社してからの仕事の仕方が重要です。
それには、能力やスキルだけの問題だけではなく、新しい職場で良好な人間関係を築けるか、という人間性も大きく関係します。
具体的には、新しい職場や人間関係になじみ、他部署とも良好な関係を築けるコミュニケーション能力であったり、周囲を巻き込んで全社的なプロジェクトを動かせる影響力であったり、あるいはあの人がそういうならやってみようと思わせる人望であったりします。
転職でキャリアアップをしたいと考えているのであれば、そのような人間性を身につけることも重要です。
まとめ
いかがでしたか。
転職を考える時にはいろいろな理由がありますが、少なくともキャリアアップのための転職であるならば、以上のポイントに気を付けてそれらを身につける努力が必要です。
ぜひ、自分と経歴を磨いてキャリアアップ転職を成功させてください。