子供がいる方はおこづかいをどのような方法で、そしていくらあげていますか?
おそらくどの家庭でも、この金額でいいのか、あげ方でいいのか、ということに悩み、それぞれ工夫していることでしょう。せっかくあげるおこづかいですから、それは単に遊ぶお金の援助ではなく、将来的に役に立つ金銭感覚を養う金銭教育、経済教育としてあげたいものです。
ここでは、そのようなおこづかいの実態とそれぞれしているあげ方の工夫、そして教育に役立てる上でのヒントをご紹介します。
子供へのおこづかい事情
子供への1か月のこづかいの相場はどのあたり?
子供のおこづかいの平均金額は色々な統計が出ていますが、それらを平均するとだいたい以下のようになります。
小学生1~3年生へのおこづかいの相場
1位 500円未満(50.7%)
2位 0円(おこづかいをあげていない)(36.7%)
小学生4~6年生へのお小遣いの相場
1位 500円~1000円(48.8%)
2位 500円未満(20.2%)
中学生へのおこづかいの相場
1位 1000円~3000円(55.9%)
2位 3000円~5000円(17.9%)
3位 500円~1000円(15.9%)
高校生のおこづかいの相場
1位 3000円~5000円(45.5%)
2位 5000円~1万円(30.1%)
いかがでしょうか。自分の家庭は相場よりも多いですか、少ないですか。特に中学生以降は、そのおこづかいにスマホ代や部活代を入れる場合と入れない場合が家庭によって違うので、それによっても差が出るようです。
あげ方はどういう方法が多い?
小学校低学年の子供の場合、おこづかいをもらっている子は全体の8割近くですが、これも家庭によってあげ方は違います。割合で言うと以下のようになります。
1位 | 何かの機会にその都度あげる〈58.5%〉 |
2位 | 月に1回あげる〈13.2%〉 |
3位 | 1週間に1回あげる(9.2%〉 |
4位 | 毎日あげる〈4.0%〉 |
5位 | 家庭独自の頻度であげる〈1.6%〉 |
1位の内容は要するに、
- 買い物を頼んでそのおつりをあげた
- 家のお手伝いのごほうびとしてあげた
- お祭りに行くのであげた
などあげる機会があった時に、親の判断であげているということでしょう。
この方法が悪いということではありませんが、しかしあげ方のルールが一貫していない点、その都度教育的な効果を深く考えずにあげている可能性がある点などを考えると、あげ方としてはもったいない、というよりも少し問題かもしれません。
せっかくあげるおこづかいですから、子供が喜ぶ顔を見るだけではなく、もう少し教育的な観点であげ方については工夫したいところです。たとえば、あげ方には以下の3つが考えられ、そしてそれぞれにメリットとデメリットがあります。
あげ方で注意すべき点は。大切なのは金銭感覚を養わせること
渡し方にも工夫を。3つのあげ方のメリットデメリット
1 毎日少しの額をあげる
この方法は子供に「貯金」する意識を植え付けることができます。自分のほしいゲームソフトなどを買える金額が貯まるまで、毎日のおこづかいを貯金箱に入れる、という習慣が身につくでしょう。
しかし一方では、もらったお金を毎日全額使ってしまうような、その場限りの金銭感覚を持ってしまう危険性もあります。
2 1週間に1回あげる
この方法は、もらったお金を7日で割って、1日の使える金額を自分で考えるという計画的なお金の使い方を学ぶことができます。あるいは6日間は我慢して、最後の日に一気に使うなどの計画性も身につくでしょう。
3 月に1回あげる
1ヶ月の間での計画性が身につく方法と期待するかもしれませんが、子供にとって1ヶ月というのは思考のレベルを超えた長期スパンです。ですので、この方法で1ヶ月間の計画を立てさせるということは至難の業でしょう。
逆に、まとまってもらったお金から、その都度の状況や気分で使い、なくなったら次のおこづかいの支給日まで我慢する、というようになる可能性が高いです。
そういう意味では、親の考え方もありますが、少なくとも小学校低学年のうちは1週間単位であげるのが1番よさそうです。
お札や大きな硬貨ではなく、小銭で渡す
最近推奨されているのが「小遣い小分け制度」です。これは、おこづかいが100円の場合は10円玉で10枚、500円の場合は100円玉3枚、50円玉2枚、10円10枚で渡します。両替したら出てくるような小銭であげるわけです。
硬貨やお札で1枚というようにあげると、それで何かを買っておつりをもらって、それをまた何かに使って、というようにあまり考えることなく消費してしまいがちなるところを、この方式であげると、「お金は使った分だけ減る」という当たり前の常識が目に見えて理解できるようになるメリットがあります。
さらに、モノとお金の価値が等価であるということも、子供なりに感覚としてわかってきます。
たとえば「このお菓子を買うには10円が3枚」というように、お金のボリュームが目に見えて分かります。そして10枚の10円玉が7枚に減ると、お金を使うと減るということも目に見えて分かるのです。
これによって、基本的な金銭感覚を身につけられる、というわけです。
あげ方だけではなく、使い方も身につけさせる
計画的に貯めて計画的に使えるようにする
また、小学校低学年であれば1週間単位、高学年になったら1か月単位くらいで、お金の使途計画、あるいは予算計画を立てられるように仕向けていきましょう。
そのためには、まずこの1週間または1か月で何に使うのか、それはおこづかいの範囲で足りるのか、足りなければどう前月に使う分をどう節約して翌月に繰り越せばいいのか、ということを考えさせることが必要です。
こう書くと難しそうですが、1番いいツールは昔からある「こづかい練習帳」を記入する癖をつけさせることです。
まず、最初に今週または今月もらえるおこづかいの額を書き、その下に使った内容と金額を書いて、その都度残額を計算させます。これによって、計画的にお金を使うということが自然に身につきます。
またこのよいところは、「お金を貯めるのが目的」になってしまわないことです。子供が大人になった時に持っているべき経済感覚は、「お金を貯めるのにはどうすればよいのか」ということではなく「お金を貯めて目的のためにうまく使うにはどうすればよいのか」ということです。
ですので、このおこづかい帳を通じて、それを学ぶわけです。
定額お小遣い制に切り替える時がポイント
またこのような訓練をスタートさせるのは、それまで都度あげていたおこづかいを、1週間なり1か月なりで決まった額をあげる定額制に移行した時が1番よいタイミングです。その時におこづかい帳を導入し、
- 限られた予算の中で、どうすれば欲しいものが買えるのか
- あるいはそれに向かって貯めることができるのか
欲しいものが多いときにはそれらをリスト化し、ほしい理由を明確にし、そのうえで優先順位をつけさせる、という習慣、感覚、そしてスキルを身につけさせます。
これは言ってみれば、「予算計画」「マネープラン」の子供版ですので、将来的には仕事においても家庭生活においてもこの感覚が非常に役立つでしょう。
おこづかいは労働の対価だという考え方を身につけさせる
欧米では夏休みや年末年始の休暇に、子供たちは当然のことのように、人の家の前の雪かきや、新聞配達などのアルバイトをしています。そして稼いだお金は親に渡し、その中からおこづかいをもらいます。
これによって、お金は労働の対価として手に入れるものだということを、肌身に染みて理解します。
日本で同じことをさせるのは難しいかもしれませんが、少なくとも、家族の一員としての責務を果たすこと、学生としての責務を果たすことによっておこづかいがもらえる、という感覚を与えることは避けたいものです。
それはたとえば以下のような基準でおこづかいをあげるのはNGということです。
家のお手伝いに対してお金を払うことはNG。
年齢に応じた家事の手伝いは「家族の一員」として当然だからです。やって当たり前のことなのに、それで報酬が得られると、今度はそれがないときに責務を果たさなくなります。
学年が上がると自動的におこづかいの額も上がるというルールはNG。
何の努力もなく報酬が上がるというのは、極論すると日本ですたれ始めている「終身雇用制」と「年功序列制」の子供版です。
今後はそのような時代ではなくなりますので、自分のした努力が報酬になって返ってくる、という意識を子供のころから植え付けましょう。
成績が上がったらおこづかいをあげるのもNG。
これもお手伝いの話と同様です。「馬ニンジン」で勉強をさせると、ニンジンがなくては勉強をしない子供に育ちます。また勉強は学生にとっての責務なのだという考えも身につきません。
いずれにしても、親も「収入は労働の対価」という、大人にとっては当たり前の感覚を子供のころから身につけるように仕向けましょう。
働かなくてもおこづかいがもらえることに慣れてしまった子供は、社会に出てもストレス耐性が弱いのですぐに仕事を辞めたり、短期間に何度も転職を繰り返すなどして、最後には働けなくなってしまう危険性さえあります。
まとめ
いかがですか。
大人や親にとってはわずかな金額のおこづかいですから、あまり考えなくあげてしまい、親としていい顔を見せたくなるというのもあるでしょう。特に普段その子の教育に関わっていない男親などの場合は、なおさらです。
しかしそこは我慢のしどころです。おこづかいをあげることは、将来子供が自分で稼いで自分で夢や目標をかなえていけるようになるための、経済面でのスキルを身につけるチャンスです。
ですので、漫然とあげるのではなく、ぜひよく考えて、目的意識を持って工夫をしてあげるようにしましょう。
(文/丹波りん太郎)