定年で会社を退職した人が、老後の生活費として必要なお金はいくらなのでしょうか?
生活資金が足りなくて、生活水準を極端に落とさなければならなかったり、そもそも生活が成り立たなくなってしまっては悲しい老後となってしまいますよね?
この記事では老後のための必要資金として貯蓄しておきたい金額がいくらなのかをシュミレーションしてみたいと思います。
現役の時のような安定収入がなくなる反面、支出はしっかりと出て行きますので、早めに対策を取るための参考としていただければと思います。
老後に必要なお金の世論調査
老後の実態を紹介する前に、アンケートによる意識調査を紹介したいと思います。
金融広報中央委員会が「家計の金融行動に関する世論調査(平成28年)」として、20代から独身者や夫婦を含む全世帯の回答を平均した結果、
- 老後に最低限必要な月々の生活費は27万円で
- 年金支給時に最低限準備しておく貯金額の平均は2,016万円
という結果がでています。
毎月27万円の生活費が必要ということは、年間324万円の生活費が必要で、年金支給を差し引いたとしても2,000万円以上の貯金が必要と考えている人が多いという結果となっています。
家計の金融行動に関する世論調査(平成28年)
- 老後に最低限必要な月々の生活費は27万円
- 年金支給時に最低限準備しておく貯金額の平均は2,016万円
押さえておこう!年金についての基礎知識
この記事をお読みいただいている人の中には「日本はちゃんと年金制度があるのに、どうして貯金が必要なの?」と思った方がいらっしゃるかも知れません。確かに年金生活という言葉どおり、支給された年金は生活の基盤となるケースが多いでしょう。
しかし、残念ながら年金収入だけでは生活をまかなうことができないのです。
公的年金制度には国民年金と厚生年金があります。厚生労働省年金局の「厚生年金保険・国民年金事業の概要(平成25年)」によると、
- 国民年金の月々の支給額の平均は54,544円
- 厚生年金の月々の支給額の平均は145,596円
となっています。
仮に夫婦二人世帯でいいますと、国民年金だけ加入していた場合にはそれぞれ54,544円の合計109,088円が毎月支給され、厚生年金もかけていた場合にはそれに加えて145,596円が支給されます。
厚生年金をかけていたとしても291,792円が夫婦二人世帯の年金で、ここから雑所得として所得税が引かれます。
老後家計の実態を赤裸々にご紹介
では、具体的な数値をもとに、世間一般での老後の実態を紹介したいと思います。
総務省の「家計調査報告(家計収支編)」(平成27年)によると、高齢夫婦で無職世帯の月々の家計収支は、社会保障などを含む
- 収入が21万3,379円
- 支出が27万5,706円
となっており、毎月6万2,326円の赤字となっています。
つまり、年金だけでは老後の家計をまかなうことができず、貯金を切り崩して生活しているということが平均的な老後の生活であるということが分かります。
平均的な老後の家計収支
- 収入:21万3,379円
- 支出:27万5,706円
- 赤字:6万2,326円
※総務省の「家計調査報告(家計収支編)」(平成27年)
※夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦の無職世帯
老後に必要な貯金額を計算してみた
毎月6万円以上の赤字を、貯金でまかなおうとした場合には一体どれくらいの資金が必要なのでしょうか?
先ほど紹介したアンケートによる世論調査では2,016万円という結果が出ていましたが、果たして本当にこれだけのお金が必要なのでしょうか?
老後に必要な貯金額を、平均寿命を参考に計算してみたいと思います。
平均寿命まで生きた場合に必要な貯金額
厚生労働省の発表によると、日本における平均寿命(2015年)は83.92歳で、
- 男性が80.79歳
- 女性が87.05歳
となっています。女性の方が男性よりも6歳以上も長生きするということに驚かれた人もいらっしゃるかも知れません。
それはともかく、定年の60歳から84歳まで毎月6万2,326円の赤字となった場合はいくらの貯金が必要なのか計算してみましょう。
平均寿命までの存命を想定した場合に必要な貯金額
84歳 - 60歳 = 24年
24年×12カ月=288月
288月×6万2,326円=1,803万6,288円
つまり、平均寿命まで生きた場合には最低でも1,800万円の貯金が必要ということになります。この金額が最低限だと考えると、世論調査の回答もそれなりに正しいことがいえるでしょう。
平均寿命よりも長生きした場合に必要な貯金額
平均寿命を想定すると、少なくとも1,800万円以上の貯金が必要であることが分かりますが、必ずしも平均寿命ピッタリに人生を全うするとは限りません。平均寿命よりも早く亡くなってしまう場合もありますが、平均寿命よりも長く生きることもあるでしょう。
早く亡くなってしまった場合には貯金の心配は不要ですが、長く生きた場合にはさらに貯えをしておく必要があります。
先ほどと同様の計算で、長く生きた場合に必要な貯金額をまとめてみましょう。
各年齢まで生きた場合に必要な貯金額
- 85歳:1,878万4,200円
- 86歳:1,953万2,112円
- 87歳:2,028万0,024円
- 88歳:2,102万7,936円
- 89歳:2,177万5,848円
- 90歳:2,252万3,760円
- 91歳:2,327万1,672円
- 92歳:2,401万9,584円
- 93歳:2,476万7,496円
- 94歳:2,551万5,408円
- 95歳:2,626万3,320円
- 96歳:2,701万1,232円
- 97歳:2,775万9,144円
- 98歳:2,850万7,056円
- 99歳:2,925万4,968円
- 100歳:3,000万2,880円
ただし、これはあくまでも単純計算です。たとえば保険の満期による保険金の支給や、夫婦のどちらかが死亡した場合の生命保険金などは参考にしていませんので、あくまでも参考としていただければと思います。
もちろん、備えあれば憂いなしなので、この金額を準備できれば理想だといえるでしょう。
リタイア後に考えられる収入は?
リタイアした人の収入が年金以外にないのであれば、貯金を切り崩す以外に成す術がありません。年金以外に考えられる収入にはどんなものがあるのでしょうか?
退職金
リタイアした時には退職金がでる会社が一般的でしょう。退職金は老後資金としてとても重要なお金となります。
もしも退職金を考慮せずに必要な老後資金を貯えていた場合には、プラスアルファで退職金が加算されることとなり、老後が楽となるでしょう。
反面、必要な老後資金に満たない貯金額だとしても、退職金によって補てんすることもできますので、いずれにせよ貴重な老後資金となります。
アルバイト
退職後にアルバイトをする人も多いようです。高齢になってからも働ける仕事は数多くあり、警備員や清掃員、マンション管理人などが人気です。
コンビニでも年配の人が働いているのを見かけたり、タクシーの運転手(時短)も60歳以上のドライバーが多いので、老後の生活費の足しになる働き口はたくさんあります。
資産運用
老後資金を資産運用することによって増やしている人もいらっしゃいます。株やFX、投資信託や投資性のある保険など、人によってさまざまです。
しかし、投資は元本割れの恐れもあるため、資金の一部で行うことが大切です。
保険金
満期を迎えた保険金や夫婦の死別による保険金が入るケースもあります。死別の場合には保険以外に遺産も入ることもあり、老後における臨時収入となる場合があります。
まとめ
老後の生活を健全に送るためには、公的年金だけでは生活費を賄うことができず、不足分は貯金で賄う必要があります。
一般的には2,000万円以上の貯金が必要だといわれており、長生きを想定すればさらに多くの資金が必要です。
それだけの資金を準備するためには、早めに準備を始めることがとても重要となります。定年を迎えた時に慌てなくて済むように、今からしっかりと準備しておきましょう。
(文/田中英哉)