企業が採用にかけているコスト――仕事を探す立場からするとなかなか思いつきにくいこの発想だが、実際は新社員の採用にも実に多くのコストがかかっている。
中途採用のコストは80万円~300万円!
100万円とは予想以上に高い数字かもしれない。だが、就職情報誌や就職情報サイトなどさまざまな媒体での広告費用に加え、就職フェア、合同企業説明会、就活セミナーなどのイベント活動費用、面接官の給料など積もり積もれば山になる。
キャリアデザインセンターが226企業を対象に行ったアンケート調査によると、一人あたりの採用コストは約20~100万円、またビー・スタイルが行った調査では新卒で60万円から、中途採用で約80~300万円という結果が出た。
果たして100万円のもとはとれるのだろうか?
100万円かけて新社員を採用したとして、彼らが戦力となるまでにはまだまだ多くのコストがかかる。最初の1年だけみてみても、年間の給与250万円、福利厚生30万円、研修費10万円その他諸々で400万円はかかる。
そしてこれはその年の採用者数だけ必要になるから10人いれば4000万円という計算になる。その後彼らが退社してしまえばそれらはすべて無駄になってしまうのだから人事課としても新社員の採用には慎重にならざるを得ない。それに、新しい人材は業務のクオリティや他の社員の士気などさまざまな形で企業のマネジメントに影響を与える。
依然として新卒はやっぱり有利なのか?
ビー・スタイルの調査によると、面接のみで有能な人材を見極められる自信のある面接官は10人に1人だという。では、面接官の数を増やせばいいかというと、それによってさらなる時間とコストもかかる上に定着率はほとんど変わらないらしい。
以前は新卒が圧倒的に有利だと言われていた。社会経験が乏しいため教育によって企業独自の色に染められること、定年退職を迎えるまでの就業年数が長いことが主な理由だ。だが昨今では一般的な社会常識を備え、即戦力になることが魅力となり中途採用も増えてきているようだ。
また企業側と求職者側の相互理解を深めるためのインターンシップ制度の導入や、4人に1人が採用手段にしているとも言われる縁故など就職手段は実にさまざまだ。
採用活動を商品購入におきかえると分かりやすい
新社員の採用を商品購入に置き換えてみよう。商品の見た目や取扱説明書を参考に使い勝手、価格を考慮して買うのが面接採用、試供品をもらったりお試しモニターをして商品を気に入ってから買うのがインターンシップ、口コミサイトで利用者の意見を参考にして買うのが縁故ということになる。
デザイン性を重視する商品であれば問題ないが、サプリなどは実際に試してみてから大量購入に踏み切りたいし、家電は長く使うものだから信用のおけるものを選びたい。
採用される側も大変だが、企業側もよりよい人材を確保するために苦労しているのだ。そのへんを理解しつつ、就活や転職活動をすれば採用される可能性も上がるかもしれない。
(文/森野万弥)