歯科医は儲かる職業なのでしょうか?最近、町中のいたるところに歯科医院を見かけますが、どこの歯科医院も患者さんでいっぱいのようです。反面、今後の競合争いによる収益の低下も気になるところです。
歯科医の年収は3,000万円を超えるという羽振りの良い噂も聞きますが、一方では歯科医の収入はかなり厳しいとの噂も聞きます。一体どちらが本当なのでしょうか?
歯科医がどんな仕事をしているのか、なるためにはどんな資格が必要かなどの情報を踏まえながら、歯科医の年収の実態に迫ります!
【この記事の目次】
歯科医師とは
歯科医とはどんな仕事なのでしょうか?大抵の人が歯科医院に通ったことがあると思いますので、何となくイメージが付くかも知れませんが、おさらいがてら具体的に紹介します。
歯科医の仕事は、歯の治療や歯茎の治療が主となりますが、それ以外にも口の中や舌、アゴの病気にも大きく関わります。
歯を治療していたら口の中や舌にガンができていたという場合もあり、ガンの早期発見をする上でも歯科医は一役を担っているのです。
そんなに頻繁に虫歯ができないから歯科医に通うことはあまりないという人も、歯石除去やホワイトニングなど、歯のメンテナンスを半年に1回から1年に1回程度行うことで、同時に口腔内の検診にもなります。
他にも歯並びを良くするための矯正や、子供の歯やアゴの成長チェック、抜けた歯の代わりになる入れ歯を入れたりすることなども歯科医の仕事の範囲内となり、老若男女問わず患者と接する仕事です。
勤務医と開業医の違い
歯科医とひと口にいっても、勤務している歯科医と開業している歯科医とでは大きくその仕事内容が変わります。
勤務医がどういう所で勤務しているかというと、総合病院が真っ先に思い浮かぶかも知れません。確かに総合病院で勤務する歯科医も多いのですが、実は他にもいろいろな勤務先があります。
たとえば研究所や画像診断センター、厚生労働省内の機関、製薬会社や化粧品会社などの一般企業など、さまざまなフィールドで活躍しています。
開業医は自分で歯科医院を開いたり親の後を継いだりして、歯科医院を経営します。経営するということは、単に診察や治療だけをしていれば良いというだけでなく、経営マネジメントもしなければなりません。
開業医は歯科医としての技術を日々向上させるのはもちろんのこと、経営スキルも向上させなければならないので、多くの学びとその実践が必要となります。
歯科医師になるためには
歯科医になるためには歯科医師免許が必要です。では、歯科医師免許はどうすれば取得することができるのでしょうか?それは、歯科医師国家試験に合格して、歯科医籍に登録することによって発行されます。
ただ、歯科医師国家試験は誰でも受験できるというわけではありません。歯科大学や歯科部のある大学を卒業するなどの条件が設定されています。
実は歯科医の免許を取ると、他にもいろいろな資格が付いてきます。付いてくる資格は食品衛生管理者や衛生検査技師、衛生管理者です。他にも試験の一部や受験資格が免除されるものもあり、ひとつの資格で多くの資格に影響する免許なのです。
ちなみに歯科医師免許の合格率はどんどん下がっていて、合格するのが年々難しくなっています。その理由は、歯科医の増加にあります。現在歯科医が過剰に増えているという問題があるため、間口を狭めているという実情があるようです。
歯科医師って何人くらいいるの?
過剰に増えている歯科医。では具体的にどれくらいの人数の歯科医がいるのでしょうか?
平成26年の衛生行政報告例によると、開業医の数が59,750名で、診療所に勤務している歯科医が27,074人、病院に勤務している歯科医が12,141人となっています。
このデータを見る限り、開業医の数が圧倒的に多く、診療所で勤務している歯科医の倍以上、病院に勤務している歯科医の5倍近くに達しています。このデータを見ているだけでも何となく町中に歯科医院を見かける理由が納得できますよね?
その分、他の開業医が競合となる場合も多く、技術の差や対応の差などにより、近所で良い評判になると、その歯科医は流行る歯科医となり、逆に悪い評判が立つと経営難になることもあるようです。
特に最近はインターネットの発達により、口コミ情報の伝達が早く、中には歯科医を評価する口コミサイトもあるようです。
歯科医も高い技術レベルでの治療をしていればよいのではなく、高いレベルのサービスも求められる時代なのかも知れませんね。
歯科医師の平均年収はいくら?
では、そんな歯科医の平均年収は一体いくらなのでしょうか?年収3,000万円という噂の実態はどうなのでしょうか?
厚生労働省による平成27年の賃金構造基本統計調査によると、歯科医の平均年収は653万円とのことです。年収3,000万円の噂からは程遠い平均年収ですが、もちろん中には年収3,000万円以上稼いでいる人もいらっしゃるでしょう。
しかし、この653万円という平均年収は低いのでしょうか?確かに年収3,000万円というところから見てしまうと低いように思えてしまいますが、実は日本の労働者の平均年収は415万円です。
さらに、資格別の年収ランキングでは歯科医は7位にランクインされていますので、高収入の職業であるといえそうです。
ちなみに資格別年収ランキングの1位は医師でその平均年収は1,098万円、2位は弁護士で1,094万円、以下、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士と続きます。
歯科医の年収についてもう少し詳しく!
歯科医の平均年収が653万円を分解して考えると、もう少しその年収を実感して頂けるかと思います。年収653万円をボーナスなど考慮せずに月で割るとその月収は54万円となります。
平均総労働時間は毎月177時間とのことですので時給換算ですと3,074円となります。いかがでしょう?なんとなく収入のレベルがイメージできたでしょうか?
歯科医の平均年収を男女別に紹介しますと、男性が674万円、女性が608万円です。
歯科医の平均年齢は38歳で、転職サイトのDODAが調査したデータによると、全ての職業の38歳での平均年収は498万円、うち男性が537万円、女性が400万円ですから、やはり比較的高い年収であるといえそうです。(DODAエージェントサービス登録者22万人調査、2014年9月から翌年8月)
増え続ける歯科医師!生き残るには?
歯科医が増え続ける中で生き残っていくにはどういうことが必要なのでしょうか?勤務医の場合は歯科医としてのスキルアップが重要で、そのスキルをベースに組織の役割をしっかりと果たすことが大切ではないかと考えます。
しかし、開業医の場合はそれだけでは生き残ることは難しいのではないでしょうか?歯科医の中でも開業医の数が圧倒的に多く、過剰に増えているといわれている歯科医の増加の象徴となっているようです。
数ある歯科医院の中で生き残っていくには経営戦略が重要で、情報社会の時代の流れを見ながら、地域に根差した戦略で経営して行くのか、それとも広域の患者も対象とした戦略で行くのかなど、経営者としてのマクロ感覚とミクロ視点の両方が試されるかと思います。
マーケティングをしっかりと行い、ターゲットの選定をした上、より少ない投資で高い効果がでるような経営の工夫が生き残りのカギとなるのではないでしょうか。
まとめ:マーケティングこそが歯科医の生き残る道
歯科医はどんどん増加していながらも、その平均年収は653万円と、他の業種と比べて高い水準にあるようです。
しかしながら開業医が過剰に多いため、歯科医の経営をとりまく環境は厳しく、生き残りをかけて経営的な戦略が重要だといえるでしょう。
その背景があるため、歯科医になるための国家試験は年々難しくなっています。ただ、そんな中でも地域で評判の良い歯科医院は流行っているので、しっかりとマーケティングをしている歯科医院は、今後もさらに発展していく可能性を秘めています。
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(文/田中英哉)