厚生労働省が平成26年に発表した「ひとり親世帯の支援について」では母子家庭の世帯は約124万世帯となっており、この内、母子のみの世帯は約76万世帯と言われています。
母子家庭の平均年間就労収入は181万円となっており、非正規雇用の場合は125万円となっています。
181万円を12ヶ月で割ると月収は15万円程度となり、家賃や光熱費、食費や雑費など生活をする上で必要な経費を差し引くとほとんど残らないのではないでしょうか。
この数字を見ても母子家庭は常に経済的な不安を隣り合わせであることがわかり、貯金なんて考えられないという母子家庭も多くあるのが現状です。
年々深刻化している母子家庭の貧困化
不倫やDV、経済的な事情など離婚をする理由は様々ですが、死別を理由とする離婚を除くと日本の離婚率は年々増加しています。これによって母子家庭や父子家庭が増え続けているのです。
そんな中で母子家庭の貧困化が深刻な問題となっています。
世界的に見ても日本のシングルマザー世帯の貧困率はトップクラスとなっており、日本は貧しい国という印象はないのにも関わらず、毎月の収入のほとんどは生活費で消えていき、未来も見えずに毎日をなんとか暮らしているという母子家庭も多く存在するのです。
母子家庭の貧困化が問題となる背景には4つの理由があります。
理由1.非正規雇用による収入の低さ
母子家庭の母親が年間で得られる収入の平均は181万円です。収入が低いのであれば働けばいいのでは?と思う人も多いでしょう。ですが特に小さな子供を持つ母親にとって正社員として働くことができないことで収入が低い理由になってしまっています。
- 子供がいることで時間の融通が利かない
- 突発的な休みがある
雇用する側はこういった部分を嫌って母子家庭の母親をそもそも雇わないなどの理由からフルタイムで働くことが難しく、パートやアルバイトなどでした収入を得ることができないという現実があるのです。
理由2.離婚した夫からの養育費がない
母子家庭になって離婚した夫側から養育費を受け取っているのは実は全体の2割ほどだと言われています。
初めからもらっていない、途中で支払いがなくなったなど様々ですが、本来であれば子供がもらう権利のある養育費が払われないことで生活が困窮してしまうのです。
理由3.貯金がない
母子家庭の貯金額は約50万円未満がほとんどだと言われています。
毎月の生活にいっぱいいっぱいで貯金をする余裕がないことから貯金も少ないのですが、子供が大きくなれば学費などもかかり、冠婚葬祭などで突発的に必要になるお金などもあります。
本来であれば貯金から賄うべきものを貯金がないことで将来に対する不安も大きくなってしまいます。
理由4.生活保護には抵抗がある
実は母子家庭の多くは生活保護の受給基準を満たしていると言われています。
つまり生活保護を受けるべき生活レベル、収入レベルなのにも関わらず生活保護を受けることなく生活をしているのです。
生活保護そのものに抵抗があるという人が多く、生活保護を受けることで車を持つことができない、ローンが組めないなどの制約があり、さらに生活保護費は子供の習い事に当てることができないなども生活保護を受ける上でネックとなっているのです。
生活保護を受けることで経済的な面では生活は安定するのですが、周囲に貧困家庭だと知られてしまうなど受給したくてもできないなどの問題があります。
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毎月カツカツの母子家庭と貯金がある母子家庭の違い
母子家庭が豊かな生活を送る上で十分な収入が必要なのは確かですが、貯金があるのかないのかによっても随分と違いが出てきます。
母子家庭の平均貯金額は約50万円未満と言われていることから十分な貯金を持っている母子家庭というのは少ないのですが、それでも少ない収入の中でしっかりと貯金を作っている母子家庭もあるようです。
ファミリー家庭と母子家庭の貯金額
ファミリー世帯の年代別の貯金額では
- 20代・・・365万円
- 30代・・・600万円
- 40代・・・962万円
となっています。これに対して母子家庭の場合は
平均貯金額は約50万円未満
ファミリー世帯と比べるとかなり少ないことがわかりますね。そしてさらに全く貯金がないという母子家庭は全体の35%も存在します。
ファミリー世帯よりも母子家庭の方が散財しているわけでもなく無駄な浪費をしているわけでもありません。それでも母子家庭の中にはしっかりと貯金をしている家庭もあり、そこで必要不可欠になるのが児童扶養手当です。
児童扶養手当が頼みの綱!!
児童扶養手当は母子手当てや父子手当てとも呼ばれています。
子供を連れて離婚をした場合に必ず保証されているのがこの児童扶養手当であり、地方自治体から収入に応じて支給額が決まります。
児童扶養手当を受け取ることができる要件としては
- 父母が離婚した児童
- 父母のどちらかが死亡した児童
- 父または母が政令で定める程度の障害状態にある児童
- 父または母の生死が明らかでない児童
となっており、児童扶養手当を受けるには審査があります。
平成28年4月から平成29年3月までは
- 児童一人の場合・・・月額42,330円
- 児童二人の場合・・・月額47,330円
- 児童三人の場合・・・月額50,330円
- 児童3人目以降は一人増えるごとに月額3,000円の加算
となります。
この月額は無収入の場合になるので例えば源泉徴収票の給与所得後の金額が268万円を超えると児童扶養手当はゼロになります。
無収入であれば児童の人数にもよりますが、4万円から6万円程度の児童扶養手当がもらええるのですが、一定の収入があることで児童扶養手当は減額されてしまい、また同居の家族に収入がある場合には全員の収入が審査対象となるので両親と同居をしていて世帯収入がある場合には児童扶養手当にももちろん関係してきます。
さらに離婚した夫から養育費をもらっている場合は養育費も所得となるので受け取っている養育費の8割が所得として加算されます。
様々な節約を駆使して収入だけで生活を賄い、支給される児童扶養手当や児童手当は全て貯金に回すことでしっかりと貯蓄しているという母子家庭も少なくはありません。
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母子家庭が頼ることができる手当や助成金制度
児童扶養手当や児童手当の他にも母子家庭が利用することができる手当や助成金制度があります。
児童育成手当
18歳までの児童を扶養するひとり親家庭が対象となります。所得制限がありますが満額で児童一人につき月額13,500円が支給されます。
特別児童扶養手当
精神、体に障害を有する20歳未満の児童がいる保護者に対して支給される手当です。
所得制限はありますが、満額の場合には1級であれば月額50,750円、2級であれば月額33,800円支給されます。
母子家庭、父子家庭の住宅手当
20歳未満の児童を養育している母子または父子家庭の世帯主で月額1万円を超える家賃を支払っている場合には各自治体で支給条件が定められていますが住宅手当が支給されます。
ひとり親家族等医療費助成制度
母子家庭に対して医療を受けるために必要な費用の一部を助成します。
乳幼児や義務教育就学児の医療費助成
乳幼児や義務教育就学児の医療費の一部を助成する制度ですが、対象年齢の拡大や自己負担の撤廃など全国的に助成内容は充実しています。
生活保護
健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。世帯単位で支給され、最低限の暮らしがその地域でできるように金額が計算されます。
手当や助成金の他には
- 所得税や住民税の減免制度
- 国民年金や国民健康保険の免除
- 交通機関の割引制度
- 粗大ゴミ等の処理手数料の減免制度
- 上下水道の減免制度
- 保育料の免除と減額
などが収入などに応じて母子家庭に適用されます。
これらの制度を利用できるものはできるだけ利用して、日々の生活を安定させることが大切です。
(文/中村葵)
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