あなたは、知人にお金を貸した経験はあるだろうか。
僕はある。19歳の頃、アルバイトしていたクラブのマスターが、本当にギャンブル依存症を絵に描いたようなダメ男だった。
彼の名はシン。これ、本名である。
名前はかっこいいんだけど、いかんせんお金の管理については非常にだらしのない男で、僕以外にもその店のママも、ほとほと手を焼いていた。
ちょっとだけその当時の話をさせてもらいたい。
お金を借りる男にはひとかけらも信用はできない!
僕は18歳からパチンコ屋に出入りしていたので、休日ともなるとシンやママ、店の女の子と一緒にパチスロをすることもしばしばあった。
このとき、できるだけシンとは距離をとった場所で遊んでいたのを覚えている。
その理由は、シンの近くにいると、しばしば横に来ては「すまんけど、10,000円貸して」といわれるからだ。
当時僕はまだ20歳にもなっていない。一方シンは20代後半。こんな年上が金をせびる姿を、極力見たくなかった。
あるときママは、辟易した様子で「シンにはもう何十万も貸してるけど、全然返してくれないわ」といっていた。
僕はその話を聞かされたときには、既に60,000円も貸していた。
「あ、やられた」と思ったもんである。
結局この直後、僕は薄給でめんどくさい仕事をして、その上でシンに金をせびられるのが馬鹿らしくなったので、クリスマスイブの夜。つまりかなりの繁忙期を見計らってバックレてやった。
その夜はてんてこ舞いだったようだが、そんなのは知ったことではない。
後々になって店の女の子からものすごいクレームが来たけど、そんなのも知ったことではない。
お金を稼ぎに行った先でお金が減るんじゃあ意味がない。みんな不幸になれ、と思った。今でも思っている。
「金を貸してくれ」とせびる男、全員パチンコ依存症説
こういう経験は僕だけがしていればニッチな思い出話で終わるんだけど、世間には同様の被害を受けた者も多いようだ。
これまでに周囲から何遍も、「アイツに貸した金が戻ってこない」という旨の言葉を聞かされてきた。
この手の、知人から借りたお金を返さない男には共通点がある。
それがギャンブル。それもほとんどが、パチンコ依存症であるということだ。
病気だからとか、急な物入りだったからとか、理由は色々と用意されてはいるけど、実際には借りた金でパチンコをしているのだ。
本当に急にお金が必要になったなら、まともな成人男性は日頃からコツコツ貯めていた自分の口座から、必要なだけのお金を引き出す。
他人の財布をアテにはしない。これが、当たり前のことである。
実際、僕の知る限り「お金を貸したけど戻ってこない」という事例の、なんと100%がパチンコ絡みの話。
げに恐ろしきは、他人のお金を頼ってでもパチンコをしたいと思ってしまう、依存者の脳である。
借りた金で打つパチンコで、もしも大勝したって今の時代せいぜい100,000~200,000円の世界。
その可能性だって非常に低いし、多くの場合はスッておしまい。「返済しようにもできない」とかいいだす。
貸しても戻ってこない!やっぱりお金は貸さないでおこう!
大体、どんな理由があろうと他人の財産をアテにするというのは社会人としては失格だ。
その上で借りる理由が、実はギャンブルだなんて、他人事ながら泣きたくなってしまう。
他人から借りてでもギャンブルをするという人が、真面目に返済なんかするはずがない。
くれぐれも、知人、友人からのお金の無心には応じないようにしよう。
だって貸しても戻ってこないんだもん!
(文/松本ミゾレ)