普段、皆さんは「年収◯◯円」という言葉を使っている方も多いと思いますが、実はこれは、会社からもらっている額面給与や手取り給与とは、必ずしも同じ意味ではないのです。
それでは、
- 年収
- 手取り給与
- 額面給与
とは、それぞれ何を意味しているのでしょうか?
【この記事の目次】
そもそも年収って?
年収とは、ざっくり言うと、1年間の収入の合計を意味します。なので、ほとんどのサラリーマン等の方は給与で収入を得ているでしょうから、「年収=年間の給与の合計」という理解でいいのですが、副業や株取引・FXなどで副次的な収入を得た場合は、これらも「年間の収入」の合計に含めます。
なので、人によっては、必ずしも「年収=年間の給与の合計」とはなりません。
では、副収入がない方を想定した場合は、「年収=年間の給与の合計」となるわけですが、この場合も、給与の意味が「額面」なのか「手取り」なのかで意味が異なってきます。
「額面給与」とは、会社から支給される給与から、税金や社会保険料等が「差し引かれる前の」給与を指します。
「手取り給与」とは、会社から支給される給与から、税金や社会保険料等が「差し引かれた後の」給与を指します。
そして通常、年収とは、額面給与の合計のことを意味し、手取り給与の合計年収は「手取り年収」と呼んだりします。
30代男性の平均年収と手取りってどれくらい?
それでは、30代男性の平均的な額面年収と手取り年収は、いくらぐらいなのでしょうか?国税庁の発表した資料(PDF注意)によれば、
- 30〜34歳で446万円
- 35〜39歳で502万円
というのが平均年収です。
そこから差し引かれる税金や保険料の額などは、既婚か否か等々の条件で変わってくるのですが、一律に「既婚・子どもなし・その他扶養関係なし」の条件で試算してみると、平均手取り額は
- 30〜34歳で約350万円
- 35〜39歳で約400万円
となります。
30代女性の平均年収手取りってどれくらい?
同様に、30代女性の平均的な額面年収と手取り年収を示してみましょう。
先ほどの資料によれば、
- 30〜34歳で301万円
- 35〜39歳で293万円
というのが平均年収です。その数値を元に、先ほどの男性同様の条件で平均手取り額を試算すると、
30〜34歳・35〜39歳ともに約250万円
となります。
年収別では手取りはどのくらいなの?
このように、累進課税制度が採用されているため、額面年収が低いほど税率・保険料率が低く、額面年収が高いほど税率・保険料率が高いことがわかります。
「既婚・子どもなし・その他扶養関係なし」の条件を前提にすると、額面年収と手取り年収の対応は、おおよそ以下のような一覧表となります。
額面 | 手取り |
1000万円 | 750万円 |
900万円 | 680万円 |
800万円 | 620万円 |
700万円 | 550万円 |
600万円 | 480万円 |
500万円 | 410万円 |
400万円 | 330万円 |
300万円 | 250万円 |
源泉徴収票ってどう見るの?
なお、会社から渡される源泉徴収票を見れば、自分の額面給与と手取り給与の関係が大変わかりやすくまとまっていますので、これまでそれほど注意深く確認していなかった方も、次の機会にはじっくり眺めてみることをお勧めします。
源泉徴収票の見方ですが、全体の構成は、数段に分かれています。
通常、一番上の段には自分の住所・氏名が記載されている欄がおり、一番下の段には給与を支払った会社の住所・名称が記載されています。しっかり確認する必要があるのは、その間の段にある欄の記載事項です。
まず、上から二段目の段にある「種別」という欄には「給与(・賞与)」と記載されています。その横に、
- (1)支払金額
- (2)給与所得控除後の金額
- (3)所得控除の額の合計額
- (4)源泉徴収税額
という欄があり、それぞれに数値が記載されています。
このうち、(1)が年間の額面給与(年収)を意味します。要注意なのは、(2)の数字は、手取り給与の総額を示すものではありません。あくまで、様々な控除条件を顧慮した後に算出された「所得税の課税対象になる範囲」を示す数値です。
繰り返しになりますが、手取り額を意味するものではないので、注意しましょう。
では、手取り額はどのように算出されるかというと、ざっくり言えば、「(1)—(3)−(4)」で示される数値が手取り額です。
ただ、この源泉徴収票では、住民税についての記載がありませんので、より厳密には、
「(1)−(3)—(4)—住民税額」
となります。さらに細かく言えば、交通費は非課税なので課税額から控除できる、等の要素もあるのですが、ここでは割愛します。
社会保険料の計算方法とは
それでは、給与から差し引かれる社会保険料は、どのように計算されるのでしょうか。まず、社会保険料とはそもそも何を指すのか確認してみましょう。大まかに、以下の5種類の保険料を総称して社会保険料といいます。
健康保険料 | これを支払っておくことで、診療を受けた時に診療費の一部を国が支給してくれるというもの |
介護保険料 | 40〜64歳の公的医療保険者が、(1)と合算して徴収される保険料。介護が必要になった時に支援が受けられるというもの |
厚生年金保険料 | 年金支給対象年齢に達した時に、年金が受けられるというもの |
雇用保険料 | 失業した際に、ハローワークで所定の手続きを踏んだ後、失業保険などが受けられるというもの |
労災保険料 | 業務中の事故・ケガ・病気などの補償に充てられるというもの |
これらのうち、(5)はもっぱら会社が負担し、(1)〜(4)を会社と本人が共同で負担します。なので、差し引かれる保険料は、(1)〜(4)の合計額ということになります。
これらのうち、特に差し引かれる金額が大きいのが、(1)〜(3)の保険料です。これらは、収入によって、毎年の「標準報酬月額」というものが算出され、その標準報酬月額によって、徴収される保険料の額が異なるようになっています。
簡単にいえば、所得税などと同じく、収入が高ければ高いほど、高い保険料が徴収される仕組みになっています。この保険料がいくら徴収されるのかは、年収のみならず、住んでる地域や残業代の有無等々、本当に様々な要因によって決定されるため、厳密に一般論を説明するのは難しいのですが、
「東京都の会社員で、月収は年収÷18(6か月分は賞与)」
という方を想定した場合、ざっくりと以下ぐらいの数字感覚になると思われます。
額面 | 社会保険料合計 |
1000万円 | 約140万円 |
900万円 | 約130万円 |
800万円 | 約110万円 |
700万円 | 約100万円 |
600万円 | 約90万円 |
500万円 | 約70万円 |
400万円 | 約60万円 |
300万円 | 約40万円 |
自分の手取りと額面を知る!
このように、自分の年収を、額面だけではなく手取り額にも焦点を当てる形で振り返ってみると、案外自分の可処分所得となる手取り収入が少ないなと感じた方も多いのではないでしょうか。
自分の市場価値を客観的に見た時に、どうも実力以下の報酬しか得ていないように感じられるのであれば、転職を一つの選択肢として検討してもよいでしょう。
おわりに
給与所得の把握には、額面での把握と実際の手取り額での把握との2パターンがあります。
今後も、世界でも一位二位を争うほどの超高齢化社会への道を邁進し続ける日本では、より一層、税金・保険料の徴収が厳しくなっていくと考えられ、額面と手取りの落差についてしっかり把握しておくことが、更に重要になっていきます。
しっかりと給与明細や源泉徴収票を確認する癖をつけつつ、手取り額を増やす必要性を感じたら、転職などの手段も選択肢に入れて検討しましょう。
まとめ
- 年収は1年間の収入合計。給与収入と、副収入があればそれも含む
- 額面給与は、会社からの支給給与から税金・保険料等が徴収される前の金額。手取り給与は、それらが徴収された後の金額で、実際に本人へ支給される金額
- 徴収される税金・保険料は、累進課税の思想の下、高額であればあるほど税率・料率が高い
- 自分の収入の実態を把握する上では、額面のみならず、手取り収入を意識する習慣を身につけることが大切
(文/tdom)