今、音楽業界は違法ダウンロード配信や違法アップロードなど、インターネット上での著作権違反に悩まされていると言います。苦境に立たされるレコード会社やアーティストですが、どのようにインターネットと向き合うべきでしょうか。
7割のユーザーは音楽にお金をかけない
2012年、マイボイスコムが音楽ユーザーを対象にアンケートを実施しました。これは、直近1年の間に、CDやDVDの購入およびレンタル、音楽のダウンロードをしたことがあるかを、音楽ユーザーに問いかけたものです。
調査の結果、ユーザーの68.6%が「音楽にかけるお金は0円」と回答しました。アーティストがYouTubeで動画を配信し、無料で視聴できるようにする例もあるため、一概に違法配信だけが原因と考えることはできません。ただし、「音楽は、インターネットを介してタダで楽しめるコンテンツ」という認識は、ユーザーの間でも一般化しているようです。
インターネットは、音楽業界を破壊したのでしょうか。功罪のうち、罪の部分ばかりが注目されますが、じつは新たなビジネスモデルを生み出しています。
ストリーミング視聴から購入する層が増加
「世界をログする書き起こしメディア」がキャッチフレーズの「logmi」は、日本のエンターテインメントの未来を語り合うイベント「THE BIG PARADE」を取り上げました。イベント中、TuneCoreの野田威一郎氏は、ストリーミングサービスによる認知度向上の結果、楽曲のダウンロード数が伸びたと話しています。
また、違法コンテンツに対する取締り強化の結果、CD市場が復活したという意見もあがりました。1990年代の音楽業界バブルよりは鎮静化しているものの、市場全体は上向きになっているというのが昨今の状況のようです。
つまり、ストリーミングサービスやダウンロード配信によって、楽曲が手軽に入手しやすくなったことは、音楽業界にとってみると追い風になっていると考えられます。今までよりも市場規模は縮小しているかもしれませんが、インターネットによって新たな流通経路ができたという見方もできるはずです。
在野に埋もれていたはずの才能を発掘
インターネットは、従来であれば在野に埋もれていたはずの才能を発掘する場にもなりました。一例として、ニコニコ動画出身のシンガーソングライター、DAOKO(だをこ)さんについて少し紹介したいと思います。
DAOKOさんは、現役女子高生ながら高いクオリティの楽曲をニコニコ動画に投稿し、リスナーやアーティストの間で話題になったシンガーソングライターです。
m-floさんとの楽曲『IRONY』が映画の主題歌に使われたり、庵野英明監督らスタジオカラーが作る短編映像の音楽を担当したりと、さまざまなアーティストによって起用されました。そして、2015年、高校卒業とともに、トイズファクトリーからメジャーデビューすることになったのです。
動画や音楽を手軽に世界へ発信できるようになったことから、インターネットはアーティストの卵にとって、大きなチャンスがつかめる場所となりました。今までであれば、音楽制作が好きな女子高生で終わっていたかもしれません。しかし、インターネットを武器にしたことで、音楽を職業にできたと考えることができます。
“音楽への就職”を可能にするインターネット
インターネットは、音楽のテストマーケティングの場となっています。ユーザーたちの反応は、視聴回数やSNSでの反響となって現れるため、音楽関係者は売れ行きが予測しやすくなります。低予算で売れそうなアーティストや楽曲がわかるため、プロモーションすべきモノが見極めやすくなるのです。
アーティスト側も、インターネット上で実績ができると、レコード会社や企業へ売り込みやすくなります。泥臭い営業かもしれませんが、インターネットの実績をもとにタイアップを獲得することで、“音楽に就職する”というチャンスを掴むことができるのです。
今まで、インターネットは音楽業界の敵とみなされていました。しかし、使い方ひとつで有効な武器になることがお分かりいただけたと思います。ぜひ、クリエイティブな才能を、インターネットユーザーにぶつけていきましょう!