家事・育児は女の仕事、はもう古い
自分は毎日会社に通い、うるさい上司や使えない部下にも我慢しながら朝から晩まで働いて妻や子供を養っているのだから、家事や育児を専業主婦または兼業主婦である妻がやるのは当然、と考えてはいないだろうか?
また、たとえ共働きで就労時間が同じであったとしても家事や育児は妻の仕事、と決めかかってはいないだろうか。
少子化問題が問われて久しい日本。理由はさまざまあれど、昔のように女性は子供が生まれたら家庭に入り、家事育児に専念するということが経済的に難しくなった。
亭主関白が許された昭和の時代はもうとっくに終わった。しかし、男女平等が謳われ女性の社会進出が進んだとはいえ、家庭内では「平等」とは程遠いケースも少なくない。
朝は誰よりも早く起きて夫や子供たちの朝食と弁当を作り、出かける支度を整え、仕事から疲れて帰ってくれば掃除に洗濯、上の子の宿題を見ながら下の子のおむつを替えている妻のとなりで夫がのんびりテレビを観ながらビール缶を開けていれば夫婦関係がうまくいくはずもない。
専業主婦の年収は1200万円!!
2013年の内閣府の調査によると、掃除や買い物などの家事、そして育児といった「無償労働」を金額に換算したところ女性一人あたりの平均年収は約192万8000円となった。就業形態別・男女別では以下のようになる。
専業主婦 304万
兼業主婦 223万4000円
パート収入 115万1000円
独身女性 93万7000円
男性 51万7000円
これを見て、自分はこれよりも稼いでいる、だからやっぱり家事育児は妻に任せておけばいい、と思っただろうか。
米国の求人・求職情報提供会社「salary.com」の試算では専業主婦の平均年収は11万8905ドル。日本円に換算するとなんと、1200万円にもなる。200万円どころの話ではない。ファイナンシャルプランナーの中村芳子氏によると、
「単純労働か頭脳を必要とする高度労働かでも時給は違ってきます。お弁当作りでも、材料もそろっていて決まったレシピを作るなら時給1000円前後。栄養バランスを考えて食材からメニューを考えるなら、時給3000円かそれ以上になる場合もある」
「食器洗いや掃除、洗濯などの単純労働を時給1000円、家計のやりくりや栄養バランスが求められる買い出し・食事作り、義理の家族の世話などの高度労働を時給3000円とした場合、日給はモデルケースで2万8400円になります。」
「8時間を超えた労働時間はサラリーマンでいう、残業割増や深夜割増にあたるので3割増で計算する。モデルケースでは6時から16時までの間に7.5時間労働しているので、16時以降は残業と見なしています。休日ならば当然休日出勤と同様、割増料金になる。こうして計算すると、主婦の年収はざっと1200万円近くになるのです」
日本人の一般男性の平均収入を大幅に超えることがわかった。だがそもそも、誰がどれだけ稼いでいるということに関わらず、家族で共同生活をしているのならそれぞれの負担が平等になるように役割分担するのは当たり前なのではないだろうか。
イクメンが日本を変える
厚生労働省は2010年からイクメンプロジェクトなるものをスタートさせている。これは、男性が家事・育児に積極的になることで、妻である女性の行き方が、子供たちの可能性が、そして家族のあり方がよりよいものへと変化し、社会全体の成長につながるというビジョンを掲げたプロジェクトである。
株式会社ベネッセコーポレーションが「パートナーと家事・育児をともにしている」人を対象に行ったアンケートでも8割以上がイクメンという言葉や風潮に好印象を抱いているという結果が出た。イクメンはもはや単なる流行語ではなく日本の新しい文化となりつつある。
相手が誰であれ、人と人とのコミュニケーションにおいて大切なのは感謝の気持ちではないだろうか。それが毎日一緒に暮らす家族ならなおさらだ。
いつも家族のために「一所懸命働いてくれて」「おいしい料理を作ってくれて」「部屋をきれいに片付けてくれて」「子供の世話をしてくれて」ありがとう、という気持ち。「俺がやるから、ちょっと休んだら?」その一言は妻にとってブランドもののバッグ1個くらいの価値があるかもしれない。
(文/森野万弥)