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下流老人という過酷な実態!高齢者を襲う貧困化のパターンとは?

投稿日:2017年6月29日 更新日:


生活困窮者支援を行っているNPO法人ほっとプラス代表理事である藤田孝典さんが、「下流老人」という著書を出版したことがきっかけで、下流老人という言葉が一般的に使われるようになりました。

実は日本では貧困にあえぐ高齢者が増加しています。多くの高齢者世帯が年金収入だけでは生活費をまかなうことができず、生活保護受給者となったり、老後破産をまねくなど、老後崩壊として対策が急務の社会問題となっています。

この記事では、老後のお金にかんする問題を取り上げ、高齢者を襲う貧困化のパターンについて解説したいと思います。下流老人にならないために、しっかりと現状を知っておきましょう。

高齢者が直面する貧困という実態

日本では国民年金や厚生年金をかけることによって、老後に一定の年金受給額を受取ることができますが、実は年金受給者が受け取っている年金額では生活費は不足することが多いのです。

平成28年度の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、年金生活に入るまでに最低限準備すべき貯金額の平均は2,016万円といわれており、まるで住宅ローンに匹敵するほどの資産が必要です。

貯金や保険商品などでまかなえる人はともかく、年金生活が主体である場合には、生活保護受給者となられたり、生活保護レベルの生活を余儀なくされる高齢者も後を絶たない状況となっています

生活保護世帯の半数以上が高齢者世帯

60歳から64歳を対象とした内閣府調査の「世帯の高齢期への経済的備え」によると、貯蓄額が十分だと答えた人は全体の3.6%にとどまり、かなり足りないと答えた人は35.5%にのぼります。

そんな中、生活保護を受給している世帯数は増え続けており、厚生労働省の発表によると、2016年12月時点では164万205世帯で過去最多となっており、その原因は1人暮らしの高齢者世帯の増加が原因のようです。

また、生活保護世帯のうち65歳以上の高齢者世帯の数は83万8,386世帯で、生活保護世帯の半数以上が高齢者世帯という実情となっています。

貧困化で下流老人となる典型的な4つのパターンとは?

生活保護を受ける高齢者が増え、老後としての貧困率が上昇する反面、自分には関係がないと他人事のように思っている人もいらっしゃるようですが、下流老人化する原因のパターンを知ると、決して他人事ではないことが分かります。

下流老人になるのは

  • 病気やケガによる貧困化
  • 老人ホームに入れないことによる貧困化
  • 子どもの面倒をいつまでもみることによる貧困化
  • 熟年離婚による貧困化

の4つのパターンが主な原因だといわれています。では、それぞれ詳しく見て行きましょう。

1.病気やケガによる貧困化

病気やケガによって入院した場合、長期入院によって医療費の負担が大きくなるケースがあります。

日本には高額療養費制度があり、一か月あたり規定金額を超えた分にかんしてはある程度の金額が戻ってくる仕組みになっていますが、戻ってくるのは直接的な医療費にかんする項目だけです。

たとえばベッド代や食費、寝具やタオルなどの雑費にかんしては実費となってしまいます。さらに、保険が利かない治療が必要な場合や継続的に治療をし続けなければならない場合、介護が必要な場合などにはさらに出費がかさむため、老後の生活に大きな打撃となります。

2.老人ホームに入れないことによる貧困化

費用が安価な特別養護老人ホームは、人気が集中しているため入所することが極めて困難です。

そこで民間経営の老人ホームを検討することになるのですが、民間の老人ホームの場合は特別養護老人ホームよりも費用が高いため、老後資産を切り崩しながら入居することとなります。

結果的に特別養護老人ホームに入れなかった人が引き金となって苦しい老後となるケースもあり、貯金額と入居費用の兼ね合いをしっかりと考えておかなくてはなりません。

3.子どもの面倒をいつまでもみることによる貧困化

自分は老後に備えてしっかりと貯えていたにもかかわらず、家族の事情で下流老人化するケースもあります。

たとえば子どもがいつまでたっても一人前にならず、親のスネをかじっている状態のケースが該当します。

引きこもってしまったり、親に借金をした場合などには貴重な老後資金を子どものために切り崩すこととなります。また、非正規社員の増加にともない、子どもの年収が上がりにくいという状況も原因の一つです。

厚生労働省発表の「正規雇用と非正規雇用労働者の推移」によると、1984年に15.3%だった非正規社員の割合は、2016年には37.5%に倍増しており、若者の雇用の不安定さも下流老人の増加に拍車をかけています。

4.熟年離婚による貧困化

熟年離婚によって下流老人となってしまう人もいらっしゃいます。熟年で離婚をした女性は、一定の資産をもらってから離婚をしたとしても、離婚前の生活水準に比べると低水準となりがちです。

逆に男性側も外食費を含めた自由な消費により、出費が増える傾向があります。離婚前には効率的な経済状態だったのが、離婚して別世帯になることで非効率となるため、シビアな生活が待ち受けているのです。

下流老人になりやすい人の年収は何と!700万円

下流老人になりやすい人の年収は一体いくらぐらいなのでしょうか?

イメージとしては年収が低い人ほど下流老人になりやすいと思う人が多いかも知れませんが、週刊現代が2015年11月に興味深い記事を書いています。

その記事によると、最も下流老人になりやすいのは年収700万円の世帯とのことです。

年収700万円といえば一般的には中流以上の家庭であるといわれており、この金額をみて意外に思われる人もいらっしゃるかも知れません。

では、なぜ年収700万円の中流以上の世帯が下流老人化しやすいのでしょうか?

無駄な出費が多い

年収700万円の世帯は中流以上であるがゆえに出費も多いようです。低年収の人と比較をすると、

  • 住宅ローンの支払い
  • 子どもを私立の学校へ入れる
  • 高級車やブランドものを購入する

など、さまざまな出費がかさんでしまいます。

そのため、収入と支出のバランスという意味においては低収入の人と変わらないか、むしろ支出が多い場合もあるため、結果的に下流老人になりやすくなってしまいます。

節約する癖がついていない

年収700万円の中流以上の家庭は、節約する癖が付いていないという特徴もあるようです。

低年収世帯の場合には徹底的に節約をしているケースが多く、老後にもその習慣が役立ちます。しかし、中流以上の家庭の場合は、浪費をする習慣のまま老後を迎え、収入が激減した状況に対処できない傾向があります。

年収は下がっているのに生活水準は維持していると、必然的に生活が苦しくなってしまうため、気が付けば中流生活から下流老人へと変貌を遂げてしまうのです。

まとめ

老後の生活は年金だけではまかなうことができません。毎月の生活費の赤字を考慮するとおよそ2,000万円の老後資金が必要だといわれています。しっかりと老後資金を準備していない人が老後を迎えると、厳しい老後を迫られることとなり、下流老人となってしまいます。

また、年収700万円の中流以上の世帯も生活水準の変化に対応できず、下流老人となる可能性が高いという記事があり、下流老人になる人が低所得世帯だけではないことを伝えています。

いずれにせよ、これらの傾向をしっかりと頭に入れておき、下流老人リスクを少しでも軽減しておく必要があるでしょう。

(文/田中英哉)

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