昨年末、インターネットを席巻していた大手キュレーションサイトが、自分たちが指示したとおりに記事を書かせたライターたちのコラムを封印した。
一体どういうことなのか。ちょっとその原因を振り返っていこう。
名前を出すのは差し控えるが(もっとも、みんな知ってるだろうけど)、コラムが封印された原因は、一部上場企業が運営する情報サイトで掲載されていた内容に、専門的な見地が全く伴っていなかったことにある。
問題となったサイトでは、おもに医療系コラムが多くのネットユーザーに読まれていたというが、このコラム自体はその辺にゴロゴロしている、売れないライターが書いていた。
つまり、医学的な知識を持たない一般人が書いていたものを、みんながありがたがって読んでいたというわけだ。
一応、文献を引用するようなこともあったようだけど、それはそれでコピペ記事の温床になっていたようで、いずれにしてもほめられたものではない。
ただ、こういう記事は、なにもライターたちが自ら持ち寄っていたものではない。
指示に従って薄給で尽くしたライターに、大手企業は何をしたか?
これは既に報道されたとおりであるが、ライターたちは自分から医療系記事を書こうと思ったわけではない。
問題の企業が運営するサイトの編集者が、ニーズのありそうな医療系ワードを抽出し、それを盛り込んだコラムを書くように指示を出していただけのことである。
しかも、指示を出した編集者らは、あきれたことに医療系の知識がない、こちらもただの一般人。
あがってきた記事のチェックこそするが、その際のチェック項目は、ちゃんと医療系のワードが規定数盛り込まれているか、それから誤字脱字のチェックぐらいのものであった。
要はお猿さんでもできるような馬鹿みたいな指示を飛ばし、ライターをこき使っていたということだ。
結果的に素人が素人を雇い、専門家に「なんだこの記事は」と指摘されてしまったこの情報サイト、社会的に大きな悪影響を与えたことは間違いない。
さらに問題なのは、こんな詐欺まがいの仕事の片棒を担がせられたライターには、ほとんどまともな対価を払っていなかったというところにある。
報酬は数百円から1000円…キュレーションサイトの実態
職業柄、僕はライターたちとの面識も少なくはない。
今回の騒動においては、問題となったサイトで記事を書いたことがある者とも知り合ったが、聞けばこの情報サイトの単価もアホみたいに安かった。
高くても1,000円程度のもので、それだけにコピペやりたい放題、画像引用し放題ではあったが、それでも嫌な仕事ではあったろう。
こういうキュレーションサイトは、まだまだ多い。
医療系の記事は人の生き死ににも関与するので集中攻撃されたが、趣味、サブカル、スポーツ関連のサイトを見ていると、一次情報を丸ごとパクったと思しき記事も多い。
しかも引用元の明記もしていない。
これも編集がリスクマネジメントを軽んじているであろう証左だ。
そして、とりあえずお金を得るため、こんな小銭しか稼げない、泥棒仕事をするライターが、まだまだ大勢いることも分かる。
情報を発信する側は、もっと危機感を持って臨むべきなのに
そもそもこのような記事が蔓延した原因はどこにあるのか。
それはPV至上主義に傾倒しすぎたサイト側にある。
さらに、そういったサイトに雇用とも呼べないレベルで使われているライターにも、問題はあるだろう。
このような悪辣なサイトが、ライターたちの収入にまで気を遣っているはずがない。
事実、ライターたちは使い捨てで保障もされず、なんだったら記事が問題となったら、悪者扱いされている。
指示を出したのは編集者なのに、その際には一切のフォローをしてくれない。
そんな程度のサイトが、まかり間違って大人気になるのだから、やり口を上手く整えれば、もっともっと儲かるサイトは作れるのかもしれない。
もちろん、モラルを置き去りにする気概は必須だろうけど。
(文/松本ミゾレ)