先日、今年社会人デビューしたばかりのピッチピチの若者数名と飲む機会があった。
僕は精神年齢が5歳なので、彼らの話を普通に楽しみながら聞いていたんだけど、最近の若い子ってのも馬鹿にならないもので、40歳ぐらいまでの将来設計を、みんな当たり前のように行っている。
これには驚いた。僕が18歳の頃なんで、「初任給でお寿司行こうっと♪」ぐらいしか考えていなかった気がする。いやはや、素晴らしい。
さて、そんな彼らの将来についての話を聞いていくうちに、ふと気になることが浮かんできた。何故か、休日などレジャーについての理想の話が、ほぼ皆無だったのだ。
率直に「ねえ、じゃあ休みの日はどうして過ごすの?」と問えば「休みの日は家でゆっくりします」との回答。そう、車だ。彼らは運転免許を取得しても、車を持たない生活モデルを描いていたのだ。
そもそも車を所有すると家計を圧迫する
このご時勢、どこもかしこも不景気風が吹いている。3年半のアベノミクスの効果で大手企業は業績も好転してきているようだが、市井の多くの人々は、まだ景気回復を実感できていない。
30代の平均年収は、500万円を切っている現在では、趣味にお金を掛けることが物理的に不可能という人だっているだろう。昔は車を趣味としている若者もいたが、現状ではそもそもそんな余裕がないというケースもあるようだ。
どんなに良い企業に入社したって、それでも車を買うというのは大きな決断を要する。新車ともなれば、まあ100万円程度の出費になることだって別に珍しくない。
そこまでの出費をした上で、相応のリターンがあるのかどうか。今の若者は、その点をしっかりと冷静に考えているようだ。
車は不要!むしろお荷物!
若者の一人がいう。
「車は維持費もかかり、そもそも高い。僕は都心部に住んでいるので、公共交通機関を使えば不自由がないんですよね。持つリスクより、持たないメリットの方が上回っています」
なるほど、確かに首都圏では、そうそう自家用車をどうしても使わなければならないという局面に出くわすことはない。むしろ車検で何万円という大金が定期的に飛んでいくような鉄の塊を、彼らは疎ましく思っているようだ。
ひと昔前には車でドライブデートも流行っていたし、今でもドライブにあこがれる若者はいるだろうけど、反面、電車の中でイチャイチャするカップルも多く目に付く。「若者の車離れ」という言葉があるが、若者にしてみれば、今のご時世、車なんてなくても不自由はないということだろう。
車メーカーは若者の関心を掴めるか?
現在、車にまったく興味を示さない若者も増えているようだ。各メーカーはなんとかして若者に、車を買ってもらうように努力をしているが、悲しいかなその努力の方向性が、若者向けではない。
たとえばいちいち車の購買層を想定する際に、
「地方在住で地元に残った友達をつるんで、休日はイオンに行き、地元で結婚する」
というようなペルソナを設定して公表してしまう。すると若者は「なんかダサい生き方だな」と思ってしまうケースもある。
僕なんかは、いちいちこういう資料を表に出してしまうからいけないんじゃないの?と思ってしまうのだ。
それから、2014年にトヨタは、東京大学で車のデザインなどについての講演会を行っている。頭のいい学生たちに、車についてのプレゼンをしたようだが、この際にこんな話を持ち出している。
「将来のリーダーとなる東大生の皆さん、これからは左脳だけでは世界と戦っていけない。右脳を鍛えて下さい。若いうちに挫折して下さい」
余計なお世話である。
挫折しているのはクルマ業界であって、なぜ同じような失態を勧めようとしているのか。挫折なんて誰もがいずれ味わうものであって、勧められようと、勧められまいと関係ない。
こういうダサいことをして、その後売り上げにどう響くというのだろうか。若者の車離れは、当然のように加速している。
(文/松本ミゾレ)