テレビCMを見ていると、「モンドセレクション金賞受賞!」を錦の御旗のように掲げるものを見かけることがある。
モンドセレクション。
いい響きで、なんとなく凄い権威のある賞なんだろうなと感じてしまうが、実際のところ、これってどういう賞なんだろうか。前々から気になっていたので、今回ちょっとしっかりと調べてみた次第である。
発覚!これがモンドセレクションだ!
そもそもこのモンドセレクションとは、国外の民間団体のことを指す。ベルギー連邦公共サービスが指導・監査するもので、ほとんど食品の技術水準がその対象になっている。
つまるところ賞の名前ではなく、団体名ということになる。その団体の与える認証が、日本においては受賞と呼称されているわけだ。ではその審査基準とは何かといえば、これは採点方式であり、かなりシンプルである。
100点満点中90点以上で優秀品質最高金賞。80点以上なら優秀品質金賞となり、70点なら銀賞、60点以上で銅賞といった塩梅だ。
最高金賞を受賞すれば、商品の品質にかなりの箔が付くということになる。権威付けが何より重視される日本の食料品市場においては、相性の良い賞といってもいいだろう。
ではどうすれば、モンドセレクションに品評をしてもらえるのか。これは率直なところ、お金である。1品につき1,150ユーロ。日本円にして140,000円程度支払うことで、品評を依頼できる。
この程度の金額でよしんば最高金賞を受賞できれば、それは占めたものかもしれない。
権威を頼る企業への消費者としての疑問も
ただし……こう、なんというかその品評の姿勢には、いち消費者としては、笑いそうになる部分はある。
日本の企業が、日本人の味覚に沿うような風味の製品を開発し、それをいちいち海外に持ち込んでお金を払い、金賞受賞を目指すという姿勢に、チグハグさを感じてしまうからだ。
どうしても「イイモノならわざわざ金賞受賞とアピールしなくても買うのに」という視点が生まれてしまうのだ。実際、モンドセレクションで金賞を受賞していようといまいと、それを基準に買い物をする人なんていやしないだろうに。少なくとも筆者の周囲にはいない。
とかく現在、日本の飲食品業界は、モンドセレクションをことのほか特別視し過ぎてやいないだろうか。あんなの、毎年日本人だけがボジョレーヌーヴォーに浮かれるような状況と、さほど変わらない、日本人の国民性に備わる“権威主義”に訴えるやり口にしか思えないのだ。
事実、モンドセレクションの公式ウェブサイトを見れば、審査を要請した企業と製品の大半は、アジアに集中している。これ、正確な数値と振り分けは細分化されていないものの、その多くが日本を占めていることは想像に難くない。
2017年に審査申請があった製品は、世界中あわせて2,691品ということだが、アジア圏だけで、その数は2,109品となっている。この実態を見てしまうと、やっぱり拍子抜けしてしまうのが本当のところだ。
購入者層に疑問にもたれない程度に、企業もアピールを工夫すべき
モンドセレクションそのものに対して思うところもないわけでもないが、やっぱりどんなに優秀な審査員がいても、日本人向けの商品に正当な評価ができるものか、という疑問は消えない。ネット上でも、「モンドセレクションを受賞したから何なのだ」とするような意見も散見される。
実際、これまでにただの水道水が金賞を受賞していたり、その辺の回転寿司も同じく金賞を獲得してきたという事例がある。確かに日本の水道水は飲めないこともないし、回転寿司だって美味い店もある。
だけども、さすがに水道水を金賞に認定するとなると、傍目には「140,000円もらってるからね」という邪推は沸いてしまう。これはもうしょうがない。
企業側も自社商品の権威付けはある程度求めて良いとは思うが、それにしたってやり方を考える必要があるんじゃないだろうか。消費者はモンドセレクションを受賞している商品を買い求めてはいない。
それが答えではないだろうか。