ADHDの方によくある職業上の問題
ADHDの方には主とする症状が3つあります。
- 多動性といって落ち着きがなくじっとしていられない点
- 衝動性といって思いついたら即行動してしまい自分をコントロールできない点
- 不注意といって注意力が散漫ですぐに忘れてしまったり、片づけができない点
です。この主症状から、業務中に書類でのケアレスミスが多く、
- なかなか書類を完成することが出来ない
- 指示された業務を行い忘れ同僚や上司からの信頼を失くす
- デスクワークなどのじっくりと作業することを苦痛に感じる
- 業務計画通りに実行することが出来ない
- 業務の進捗状況把握できない
- 個人デスクが散らかっている
等の問題が生じます。
ADHDの職業選択について
ADHDと診断されたといえど、ADHDは“病気”ではなくその人の“特性(特徴)”の一部です。
人間は十人十色、全く同じ人はいませんので、「ADHDの人には絶対このお仕事が合う!」と簡単に答えを出すことが出来ません。
しかし、ADHDの特性から、向いている職業や仕事のやり方について解説していきたいと思います。
一般的に向いていると思われる職業
興味のある分野に特化した職業
ADHDの人は一般的に不注意傾向があるとされています。しかし、中には、“好きなことや得意なこと”には一般の人には到底マネできないような集中力を発揮することがあります。
それは「過集中」と呼ばれ、飲み食いも忘れて好きなことに何時間も費やすことが出来たり、周囲の物音や話し声が全く耳に入らないほど没頭することができるという特性です。
毎回、そうして過度な集中をしていると、体が壊れてしまうのでそうはいきませんが、“好きなことにはとことん没頭できる”という才能をもっているといえます。
なので、好きなことに関する専門職(技術系・研究職系)は向いている職業である可能性が高いです。
また、注意の転動が激しいことなどから、一般の人には考え付くことが出来ない独創的なアイディアを出すことが出来ることもADHDの人の特性です。
「あの人、ちょっと変わっているけれど、面白い人!」「ユニークな人!」と周囲から一目置かれることもあります。
そのことから、デザイナーやアーティストなど、誰もマネすることができない、“オンリーワン”を目指すことに長けているといえるでしょう。
コミュニケーション能力が必要な職業
ADHDの人の中には社交性が高く、他者と良好な関係を築くのが得意という方がいらっしゃいます。
いつもテンション高かったり、話のテンポが良かったり、色々な話を次々と繰り出したりするところに、周囲の皆さんが惹かれて職場のムードメーカーとなることもあります。
そうしたことから、ショップ店員さんや営業マンなどの対人関係スキルが必要な職業も向いている可能性があります。
活発さを活かす職業
ADHDの主な症状の一つには“衝動性”があります。じっとしていられなかったり、エンジンがかかったかのように動き続けるのは、ADHDの象徴的な特性です。
大人のADHDで衝動性が高い場合、スポーツ選手やスポーツインストラクター、体育教師などの体を動かすことを主とする仕事にすると、自分の特性も社会的に認められた形になり、自己肯定感の高まり等にも繋がるかもしれません。
飽きっぽさを活かす職業
ADHDの方は新奇性のあるものに興味を惹かれる傾向があり、新しいことへチャレンジすること、世の中の新しい流行をキャッチすることが得意なことがあります。
そこで、新しいことを企画して世の中に発信していくような職業や会社の経営者も適職の可能性が高いです。
実際に、楽天の三木谷社長もご自身にADHD傾向があることを語られています。
一般的に向いていないと思われる職業
ADHDの方は一般的に不注意であることが言われています。そのため、経理関係の職業は不向きと考えることが出来ます。
例えば、ある商品を1000個注文するように上司から頼まれた時に、ケアレスミスから10000個注文してしまい、会社に大きな損失を出してしまったということもあります。ほんの少しのミスが大きな問題になってしまうこともありますよね。
また、衝動性が強くじっとしているのがつらい方もいらっしゃるという観点からも事務職のデスクワークは苦痛を伴う方もいるかもしれません。
そして、ADHDの方は新奇性を求める方が多いと言われています。そのため、繰り返しの作業や刺激の少ない仕事内容ですと、飽きっぽさもあり継続性が見込めないことも考えられます。
仕事の仕方をカスタマイズする
ADHDと診断され、社会的な困難を抱える方がいます。
しかし、一方で、自分がADHDかどうかさえ不確かで、でも仕事がどうもうまく進まないと悩んでいる方も大勢いらっしゃるのも現代の問題です。
ADHDをはじめとする発達障害は、誰もが持っている“特性(特徴)”が少しだけ特徴的なのです。だから、ADHDの人は100%衝動的で不注意な人、ADHDでない人は衝動性や不注意さが0%、というような極端なことではありません。
誰もが持っている特性の一つを飛びぬけて持っているからこそ、困難があったり才能があったりするのです。
長所を活かして仕事をしよう
上記のことを考えると、職業選択ももっとシンプルに考えることが出来るのではないでしょうか?
例えばAさんは「私は対人スキルを要する営業職は得意だし、どんどんやっていきたい。でも、経理の仕事は細部までの注意が行き届かずミスしてしまい苦手」だとします。
その場合、Aさんの得意分野をつぶさずに楽しく仕事を続けるには、苦手な業務の支援してくれる人を見つけ、タッグを組むことなのではないでしょうか。
支援してくれる方が営業は苦手で経理が得意なら、とっても良いお話ですよね。お互いの苦手分野をカバーし合うことが出来、業務が捗ります。
ADHD者に限らず、誰しも苦手な業務は存在します。なので、職場で一丸となり、お互いの得意分野を尊重し、苦手分野を支えあえるような風潮になれば、誰もが満足して働くことが出来そうです。
柔軟性のある職場環境にすることは、障害者差別解消法の観点からも必要な合理的配慮といえるかもしれませんし、多様性を認めるうえでも必要なことではないでしょうか。
障害者雇用枠で働くという道
病院で検査をしてADHDという診断が下された場合、障害者手帳を取得して障害者雇用枠で働くということも出来ます。
しかし、一般職に比較して障害者雇用枠は求人数が少ないという点もあるため、ハローワークや障害者就業・生活支援センタ―、発達障碍者支援センターに相談をしてみるのがおすすめです。
ハローワークでは、障害者トライアル雇用事業といって、3か月間のお試し就職をして、職場に自分が合っているか、職場で必要としている人材なのかを双方が確認してから継続雇用をすることができるという事業があります。
それによって就職してから「思っていた仕事とは違う!」という失敗が生じにくくなることが期待できますし、雇い主も個人の適性を知ったうえで継続雇用するかどうかを決められるので、お互いにとって失敗のリスクが低くなるでしょう。
また、障害者の職場適応を容易にするため、職場にジョブコーチを派遣し、きめ細かな人的支援を行うジョブコーチ制度も存在します。
おわりに
職業選択は誰しも悩む問題ですが、個人の長所を活かした仕事に就くことが社会人生活の幸せに繋がるといえそうです。