ADHDの特性(特徴)と忘れっぽさ
ADHDのタイプ
ADHDは3つのタイプが存在します。3タイプ分けの基本となるのが、
- 多動性
- 衝動性
- 不注意
の3つです。簡単に言うと、
- 多動性とは落ち着きがなくじっとしていられないことです。
- 衝動性とは、思いついたら即行動してしまい、自分をコントロールできないことです。
- 不注意とは、注意力が散漫・すぐに忘れる・片づけができないことをいいます。
「忘れっぽい」という困り感をお持ちの方は、ADHDの不注意タイプが目立っているタイプかもしれません。以下で詳しく説明いたします。
ADHD不注意優勢型とは
ADHDの不注意優勢型には以下のような特性(特徴)が挙げられます。
- 注意が散漫
- 人の話を集中して聞けない。
- 片づけができない。
- 無意識に散らかす。
- 忘れ物が多い。
- 物をすぐ失くしてしまう。
- 時間にルーズ
- 何度注意されても失敗する。
- 単純なミスが多い。
- 身だしなみを気にしない。
こうした特性が幼少期から見られていた場合、ADHD傾向の可能性があります。
成人するまでは、学校の先生や家族にサポートを受けていた為、困難なく過ごしてきた方も、社会人になったり、結婚をして周囲のサポートが減ってくると症状が顕著になり、困難を抱えるケースが多いです。
社会人になってからの例としては、
- 頼まれた仕事をうっかり忘れていた
- その日に必要な資料を鞄の中に入れ忘れて外回りをしてしまう
- 仕事の期日を忘れてしまう
等が挙げられます。主婦の例では、
- 洗濯機を回しながらお料理をしていたところ、お料理に集中しすぎて洗濯をしていることをうっかり忘れて数時間後に思い出す
- 家事が全て中途半端な状態で止まる
といったことが挙げられます。
ADHD者の忘れっぽさの原因とは?
ADHDを含む発達障害を持つ人には、ワーキングメモリに問題を抱えている人が多く見られます。
ワーキングメモリとは、作業や思考等の最中に、一時的に記憶を保持しておく能力のことです。また、これら保持した記憶を選択し、処理する能力もワーキングメモリの能力の一部です。
ワーキングメモリの働きに問題が生じると、論理的に考えたり、順序立てて考えたり、状況を把握して行動に移す思考や判断力が鈍ります。
それによって、順序立てて仕事が捗らなかったり、メモリから抜け落ちた作業が取り残されたりするのです。
忘れっぽさの改善方法
ワーキングメモリの障害は、ご自身の怠けが原因ではなく脳の器質的障害が原因です。ですから、「頑張ってどうにかする」といった根性でご自身を奮い立たせても状況は好転せず辛くなるばかりです。
以下、ADHDの不注意優勢型の方へ向けた改善方法をいくつかご紹介します。
仕事を書きだして見えるようにする。
仕事や家事は同時進行することが多いですよね。ワーキングメモリに障害がある場合、同時に様々な作業を行うこと(マルチタスク)は難しいことがあります。
ですから、今からやらなければならないことはホワイトボードやメモに書きだして、見えるようにしましょう。
アラームを設置する。
一つの作業に集中してしまうと、他の作業をつい忘れて没頭してしまうことがある場合、予定時刻にアラームが鳴るように設定しましょう。
作業と作業の切り替えが難しいときも、アラームを目安に行動を移行するとよいでしょう。
出来るだけ刺激を減らす
不注意優勢型の方は、一つの作業に集中することが苦手で、すぐに色々なことに意識が転動してしまうことがあります。
そのため、デスク回りや作業場では、やるべきことに集中できるよう不要ものは視界に入らないように環境調整をしましょう。
ADHD以外の疾患
ADHDは脳の器質的障害で先天性疾患です。しかし、「しっかり者で忘れっぽさなんてなかったのに、最近急に忘れっぽくなった」という方がいらっしゃったら、後天性疾患かもしれません。
以下に30~40代にも起こり得る記憶障害を生じる疾患を上げたいと思います。
若年性健忘症
若年性健忘症とは、最近になって20代から40代の若年層にみられるようになった記憶障害で、物忘れから重度の記憶喪失まで、その程度は人によってさまざまです。若年性健忘症は、
- 脳を使わない
- 強いストレス
- 頭部外傷等
によって起こると考えられていますが、認知症とは違って脳を検査しても何の異常も見つからないのが特徴です。
症状としては、人が話している事が理解できなかったり、聞いた事をすぐに忘れてしまう等が顕著に現れます。
この他には、日にちや曜日等同じ事を何度も尋ねたり、食べたものを思い出せなかったりする等、加齢による「もの忘れ」ともよく似ています。
近年、パソコンや携帯電話の普及によって、自分の頭で物を考えなくても済んでしまう傾向が強くなっています。
また、言われた通りの仕事だけをこなす等、自分でアイデアを出したりする事がない環境に身をおいているせいで脳が刺激を受けにくい生活を送っている場合も、原因の一つである可能性が考えられています。
人間の脳は、刺激が少なかったり使う機会が減ったりすると、年齢とは関係なく衰えて健忘症を引き起こす可能性が高くなるのですね。
若年性認知症
64歳以下の人が認知症と診断されると、若年性認知症と呼ばれるようになります。
物忘れが出始め、仕事や生活に支障をきたすようになっても、まだ若いという思いで認知症を疑うことがなかったり、病院で診察を受けても、うつ病や更年期障害等と間違われることもあり、診断までに時間がかかってしまうケースが見られるようです。
若年性認知症は男性に多いという統計結果が出ています。
症状が重篤になると、自分が今居る場所も分からなくなってしまい迷子になってしまったり、今日の日付を何度聞いても覚えられなくなる等の症状が見られます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多いとされており、男性よりも女性に多く見られます。また、脳血管性の認知症等の患者数が横ばいであるのに対して、増加の傾向があるとの統計結果も出ています。
原因は、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊れて死んでしまい減っていくことが挙げられます。
また徐々に脳全体も委縮していき身体の機能も失われていきます。お年寄りだけでなく若い人でもなる場合があります。
- 症状が進むと、大事な物が無くなった、盗られたと家族を責めたりする「物盗られ妄想」や
- 外へ出てウロウロする「徘徊」
- お風呂に入らない等の「介護拒否」
等がよく見られるようになります。また家族の顔がわからなくなったり、鏡に映った自分の顔がわからず「怖い顔をした人がこっちを見ている」とそれに対して怒ったりする事も出てきます。
うつ病
うつ病も物忘れを引き起こします。ストレスが多くなると、体はストレスホルモンを出します。
その一つにコルチゾールというホルモンがあります。このコルチゾールというホルモンは、量が多すぎると 脳の中の海馬(かいば)という部分を攻撃してしまいます。海馬は、言わずと知れた記憶に関する場所です。
ストレス過多の状態が続くと、コルチゾールが海馬への攻撃を続け、なんと海馬が委縮してしまうことがあるそうです。そのため、ストレスが多い人は、記憶がまばらになってしまったりすることがあります。
うつ病による記憶障害の場合、
- よく眠れない
- 反対に寝てばかりいるようになり起き上がれなくなった
- 食欲がない
- 外に出る気がおきない
- 何もやる気がおきず性欲も減退した
等の併存症状が出ることが多いので、判断の基準にして下さい。
忘れっぽさの原因特定は専門家にお願いする
以上のように忘れっぽさの原因は数多く存在します。それに、直接脳や神経系へ異常をきたすものばかりです。
医師ではない方の自己判断は重篤な症状を招くリスクが存在しますので、少しでも記憶障害が疑われた際には、早めに医療機関に相談をしに行きましょう。
原因特定は、多面的な検査や医師の見立てを頼り、早期に適切な治療が受けられるようにしたいですね。