40代で転職を考えている方もいるでしょう。
しかし、20代、30代のころと比べて、その転職を成功させられる可能性は格段に下がるのが事実です。それは採用企業側の問題もありますし、また一方で40代は微妙な年代で、ビジネスマン人生としては終盤に向かっているにもかかわらず、同時に年金受給までの20年は働かなくてはなりません。
ですので、攻めの転職にすべきか、守りの転職にすべきかという自分の中の問題もあるのです。その2つによって40代の転職は難しいのです。
しかし、それでも様々な理由で40代での転職を決意したり、転職せざるを得なくなった場合、どのようにするれば成功の確率が高まるのでしょうか。
ここでは、その転職成功の極意についてご紹介します。
45歳を境に年収アップの転職は困難に
まず、「35歳転職限界説」というものがあります。それをベースにすれば、40代の転職は完全に年齢的な限界を超えたことになりますが、それは本当なのでしょうか。
転職の成否は収入だけではありませんが、一応それを一つの目安として年代別に転職によって年収が上がったのか、下がったのかという統計をみてみます。
平成25年の厚生労働省が実施した「雇用動向調査結果の概況」によれば、転職をした年代別では、以下のように年収が上がった人と下がった人が分かれています。
20-24歳 | 年収増35.9% | 減31.9% |
25-29歳 | 年収増36.1% | 減33.7% |
30-34歳 | 年収増37.4% | 減29.3% |
35-39歳 | 年収増37.6% | 減28.7% |
40-44歳 | 年収増33.2% | 減28.9% |
45-49歳 | 年収増26.2% | 減30.1% |
50-54歳 | 年収増24.1% | 減34.7% |
55-59歳 | 年収増21.2% | 減42.0% |
これからわかることは、35歳ということに限らず、どの世代においても、転職をすると年収が上がる人も下がる人もそれぞれ30%は存在するということです。
ですので30歳の転職で年収が下がる人も、50歳の転職で年収が上がる人もいるのです。
それでも概括すると、40代前半までは年収の上がる転職が、下がる方より多い傾向です。しかしそれも45歳を境に逆転し、50代では年収が下がる転職が10%も多いということは言えます。
つまり、年収だけを基準にすれば、転職には「45歳限界説」というものもあるのです。
40代の転職が難しくなる理由
ただ45歳で急に限界が来るわけではなく、実際には40代に入ったころから徐々に転職は難しくなっている、というのが実態でしょう。その理由は以下が考えられます。
企業側は完全に即戦力と実績重視
まず採用する企業側のニーズです。これは完全に入社後すぐに責任ある部署について業績を上げてくれる「即戦力」のみを求めていると言っていいでしょう。したがって、採用の基準の大きな部分は、過去の実績です。
良い大学を出たり、資格を持っているなどの高スペック人材よりも、過去の自分の事業部でこれだけの実績を上げた、という人を二者択一なら選ぶはずです。
転職市場に出てくる求人数の少なさ
また、上で挙げたような人材は1つの企業でそう多くは必要としていません。
ですので、転職市場としては求職者よりも求人件数の方が少ない「買い手市場」になり、候補者同士の競争が激しくなるので、採用基準のハードルが上がる、ということもあります。
コストパフォーマンス、染み付いた価値観などを企業が懸念
さらに、このような人材を採用するときには、企業としても相応のポジションと年収を用意します。それはどの企業にとっても「試しに採用しておく」というレベルではありませんし、また求める業績も明確です。
すなわち、年収というコストと業績というゲインの関係としてのコストパフォーマンスのバランスに採用側も非常にシビアになるのです。
さらに、40代のビジネスマンに対するイメージとして「価値観や仕事の進め方」がいい意味で確立している、悪く言えば柔軟性がない、ということがあります。
ですので、採用側としては自社の企業風土や仕事の進め方と親和性があるかどうかに関しても、採用時に懸念を持っているのです。
こだわりが多い、プライドが高い
以上は企業側の話でしたが、応募する候補者側も同様に自分の過去の実績やスキル、スペックに自信を持っている人が多いということが言えます。
したがって、転職市場における需給バランスとは関係なく、自分の納得できる年収や管理職などのポジションでなければいきたくない、という希望条件にこだわりが非常に強い場合があります。
このプライドの高さともいえるものが、転職の障害になるのです。
人生の目的があいまい
さらには、20代、30代のビジネスマンであればキャリアアップのための転職、という目的が大多数ですが、40代は、生活の安定か、相変わらずキャリアアップか、ライフワークバランスか、というように目的が多様化してくる世代です。
しかし、そのことを自覚的にとらえないまま何となく転職活動をしている人も多いのが実態です。それでは、自分のニーズと一致した転職先企業に巡り合える確率が当然落ちますので、結果的に転職が失敗するケースが増えるのです。
40代で転職を成功させるための7つの極意
では、そのような難しい岐路を迎えている40代が転職を成功させるためには、何が必要なのでしょうか。その極意を7つご紹介します。
1 本当に使えるスキルを持っている
40代にもなれば、その会社経験の中で、誰でも多少なりともスキルを身につけています。
しかし重要なのは、そのスキルが人よりも圧倒的に優れているか、他社でも通用する汎用性や市場価値のあるスキルなのか、ということです。
ある事例で、「エクセルが得意です」ということで採用した40代社員の実際のエクセルレベルがSUM関数を使える程度で、マクロを必要とする転職先では素人同然だった、という笑えない話もあります。
また逆に、いくら高い専門性のスキルでも、その企業でしか使えなければ魅力はありません。
そういう意味で、マーケティング、ファイナンス、事業戦略企画、マネジメント、特許や商標、法務などのどの企業も必要としている高いスキルがなければ40代の転職は成功しません。
2 前職で根回し中心の仕事をしていない
新卒で入社した会社では、自分を若手のころから知っている社員が自分と同じように昇格し意思決定するポジションについていることが多いです。
そういう環境の中では「あの人がそういうのなら」と、一種の「信用取引」と顔の広さを利用した根回しで、戦略性がなくても仕事がある程度できてしまいます。
それで自分が能力があると勘違いして転職すると、新しい職場ではそれらは全く使えませんので、企業側からはあの採用は失敗だったと思われ、自分もこんなはずではなかったと思うのです。
ですので、40代での転職で成功するには、根回し能力ではなく、スキルと戦略性、そして説得力という名のコミュニケーション力などの、全くの新しい環境にいきなり放り出されても、その日からバリバリ仕事ができるようなレベルの能力が必要なのです。
3 変化を恐れない。安定志向ではない。
また、転勤生活がしんどくなった、新しい技術革新についていけなくなった、などの公私面での変化から逃れる退職理由から転職を選んだ場合は、おおむね失敗します。
転職は、仮に同じ業界の同じ職種についたとしても、仕事の仕方も、企業風土も、意思決定のメカニズムもすべて変わります。
そのような変化をしっかり受け止めて、それを消化していける人材でなければ成功しません。
4 面接、職務経歴書でのアピールは実績と協調性
ここまで述べて分かるように、企業が求めている40代は実績があって、かつ自社になじんでくれる人材です。ですので、面接にしても、職務経歴書にしても、その2つをしっかりアピールできることが、少なくとも採用されるポイントです。
極論すると、意欲やポテンシャルはどうでもよいのです。今日入社したら、10年在籍しているような顔で、その日から臆せず社内の人間関係を動かし、業績を上げてくれる人材が欲しいのです。
5 いいコンサルタントを見つける
以上は自分自身の問題ですが、40代の転職を成功させる極意は、転職エージェント企業の選び方にもあります。
20代、30代の転職は案件も多いですし、企業側も将来性を買ったポテンシャル採用ですので、コンピュータ-マッチングを中心にしたリクルートエージェントなどが向いていますが、40代になると条件が複雑になり、またこの次に説明するようにスキルを活かすためにはむしろ全く別業界へのジョブチェンジの方が転職が成功する場合も増えてきます。
その場合は、人間の判断余地が増えてきますので、そういうことができる優秀な担当コンサルタントを見つける、そういうコンサルタントを抱えているエージェントを見つける、ということも成功のための極意です。
優秀なコンサルタントを多く抱えているリクルートエージェントでは転職サイトに掲載されていない非公開求人の紹介や、言いだしづらい年収交渉まであなたに代わってサポートしてくれます。
転職を考えている方はこのような転職エージェント活用すると良いでしょう。リクルートエージェントの無料登録はこちらからどうぞ。
6 業界にはこだわらない。職種にはこだわる。
上で書いたように40代で成功する転職をしている人は、汎用性のあるスキルを持っています。逆に言えば、そのスキルが活用できれば、全く違う業界、業種でも成功するということです。
その意味で、機械メーカー出身だからやはりメーカーで、ということにこだわらず、場合によっては食品流通や介護業界などにチェンジしたことで成功することもあり得ます。
ただし、スキルを活かすためには、職種にはこだわった方がよいでしょう。
7 ポジション、年収以外に転職の目的が明確にある
40代の転職で特徴的なことは、キャリアアップ志向の割合が減るということです。地元に帰ってその発展に寄与したい、身に受けたスキルを人のために使いたい、家族との時間をきちんと取りたい、親の介護ができる勤務形態にしたい、など転職の理由が多様化します。
その理由が明確であれば、転職先に求める条件もポジションや年収、あるいは大手企業でなければイヤだなどのこだわりがなく明確化しますので、マッチングがうまくいく可能性が高まります。
反対にそれがなく、ただ年収を上げたい、前職では出世が見込めないので高いポジションにつける会社に移りたい、という転職は失敗する可能性が高いです。
40代からの転職のあり方
ここまで述べてきたように、40代での転職は企業側の求める条件、転職希望者側の目的などによって成功する条件が多様化しています。
しかし、いずれにしても40代の転職を成功させたいと思うのであれば、、その意義を以下の2つのどちらかで考えることをおすすめします。
ビジネスマン人生の集大成
40代と言えば、働く期間はあと20年ありますが、ほとんどの場合インプットは終わり、あとはいかにアウトプットしていくかという局面です。
そういう意味ではビジネスマン人生の集大成をいかに送るか、いかに意義あるものにして「自分はビジネスマンとしてこの痕跡を残せた」と引退後に満足感を持って思えるか、ということを考えることが重要です。
それが1つの40代の転職の選択のキーになるでしょう。
60歳からの人生への準備段階
もう1つの方向は、40代はすでに人生の折り返し点をターンした年代だということです。
そういう意味では、ビジネスマンとしても集大成ですが、自分の人生そのものをどのように終わらせていくのか、ということを考えてもいい世代です。
定年まで20年ありますが、それは本当にあっという間です。その時になってあわてて「仕事のない人生」をどうするかを考えるのではなく、40代の段階から60代になってからも生きがいを持てる人生を送るには今から何を準備したらよいのか、ということを基準においてもよいわけです。
人によっては、生活費が少なくて済む勤務地へのIターンやUターンをしてワークライフバランスを考えた働き方を選んだり、あるいは自分の得たスキルで社会貢献できる、たとえば介護職などの道を探るということもあるでしょう。
いすれにしても、そういう観点で転職先を探す、ということも1つの考え方です。
まとめ
いかがですか。
40代は社会や企業から求められる面でも、自分自身の人生の設計図の面でも、思春期とはまた違った意味で難しい世代です。
ですので、上でご紹介したような観点で、自分のスキルを棚卸し、自分のライフプランを考えて、今回の転職に何を1番求めるのか、自分のどの部分が転職上強みになるのか、ということをしっかり考えれば、40代の転職であっても必ず成功すると言えるでしょう。