「飲みニケーション」と言ってもある意味現在は死語になりかけているのではないでしょうか。
そもそも酒が飲めない、終業後まで会社の人たちと一緒にいたくない、説教する上司が嫌、などの理由で飲みニケーションは特に若い社会人の間では、敬遠される傾向が長く続いていました。
しかし、ここ数年飲みニケーションが復権しつつあるのです。
まず若い社会人の中からも、終業後に先輩や上司と酒を酌み交わしながら話をしたい、という声が出てきたり、会社自体が飲みニケーションを奨励してそのための補助制度を設けたりする動きもあります。
そこでここでは飲みニケーションによって得られるメリットや、上司も部下も気持ちよく飲みニケーションができるためのノウハウ、マナーをご紹介します。
今、飲みニケーションが見直されている!
1980年代までは、ビジネスマンにとって終業後に酒を酌み交わしながらコミュニケーションを取ることは、仕事の一環と言ってもいいくらい定着していました。
終業後の親密なコミュニケーションによって構築された強い職場の人間関係が日本企業の強みの1つだと欧米から注目された時期もありました。
しかしそんな飲みニケーションも、バブル期を境に、日本社会が個人主義的な風潮になり、ビジネスマンにも「自分にとってメリットのあることしかしない」という傾向が強まるにつれ、急激に減って行きました。
特に、1990年代以降多くの企業に導入されたアメリカ流の成果主義と年功序列によらない昇格制度によって、「同僚はライバル」という意識が強くなり、会社内で親密な関係になることを望まない層が増えたことがそれに拍車をかけました。
しかし、リーマンショック以降日本経済が沈滞し、かつての「強い日本経済」「強い日本企業」の影が薄くなるにつれ、その理由に職場や社内の人間関係が希薄になったことと、それによる「協業」のメカニズムが崩壊してきたことがあるという反省が生まれてきました。
そのような背景から、もう1度強い経済と企業を取り戻そうという気運のもと、飲みニケーションが見直されてきているのです。
若い社会人も飲みニケーションを求めている!
飲みニケーションを希望している若い社会人はおよそ半数!
新社会人と社会人2、3年目の男女を対象にした「職場の飲み会」に対する意識調査があります(株式会社ぐるなび実施)。
それによると、「職場の上司や先輩、後輩などと飲みに行きたいと思っている」新入社員は約6割、入社後2~3年目の若い社会人を含めても、約5割がそのように希望していることがわかりました。これは、想像以上に高い数字です。
つまり、会社や企業の管理職や経営者が組織運営上の理由で飲みニケーションの復活を考えているだけではなく、従来は飲みニケーションを忌避していた張本人だと思われていた若い社会人も飲みニケーションを求めているということが判明したのです。
期待していることは「仕事」に関するコミュニケーション
あわせて、若い社会人が飲みニケーションに期待している内容も明らかになりました。
- 1番は「仕事や職場についての話」で約6割
- 続いて「プライベートの話」が約5割
です。つまり、単に仕事上必要だから飲みニケーションをしたいということだけではなく、純粋に職場の人間とのフランクなコミュニケーションを通じて、上司や先輩の人柄を知ったり、逆に自分自身を知ってもらいたい、という希望です。
飲みニケーションのメリットとは
では、実際に飲みニケーションにはそのようなことが可能なのでしょうか。飲みニケーションのメリットを考えてみましょう。それは大きく言って5つ挙げられます。
1.職場では話せないことまで深く話せる
職場での会話は、相手が上司であれ先輩であれ同僚であれ、当面取り組んでる仕事の内容そのものがテーマになります。
仮に、若い社員が仕事に関する悩み、人生の先輩に対する相談ごと、あるいは自分の仕事などに対する展望などの話をしたいと思っていても、ほとんどの場合はそのような時間をとる余裕も機会もありません。
しかし終業後に、ゆっくりと時間がある中で食事やアルコールをとりながらであれば、そのような職場では話せないようなことに関しても、深いところまで話したり、聞いたりすることができます。
それはお互いの理解と、人間関係づくりにつながります。
2.職場の団結心やチームワークが生まれる
士業やアート系の仕事のように、自分だけで完結するような仕事をする職場であれば、人の力を借りたり、メンバーで一緒に協力して何かに取り組むということは少ないですが、しかし一般的な仕事の場合はそれが必須です。
1人で起承転結のすべてができる仕事もありませんし、それができるスーパーマンのような人もほぼいません。
仕事の成果を挙げるためには、しっかりコミュニケーションを取り、アイデアを出し合い、足りないところを補い合うことで、1+1=2を3にも4にもする「協業」が必要で、そのためには職場が団結していたり、チームワークが取れていることが重要です。
飲みニケーションをすることで、相互理解が進み、信頼関係が生まれるので、そのような団結心やチームワークが生まれる素地ができるのです。
そういう意味で飲みニケーションはチームビルディングの一環でもあります。
3.人柄や価値観が相互に分かる
仕事を円滑にし、かつ特に若い社員の会社への帰属意識と定着率を上げていくためには、職場の社員同士が相互に認め合うことが大切です。
飲みニケーションを通じて、仕事の話、プライベートの話をすることで、お互いに人間性や、何を大切にしているのかといった価値観が共有できますので、それが可能になります。
4.ストレス解消ができる
また単純に適度なアルコールの摂取はストレスの解消になります。
1人暮らしをしていたり、妻帯者でも家では真面目な親の役割を果たしたりしていると、仕事でたまったストレスをなかなか発散できません。
それを、飲みニケーションによって定期的に解消することは、仕事の効率化にもつながります。
5.思い切った発言ができる
特に若い社員は、上司や先輩に言いたくても言えないことをいくつか持っています。それが職場や仕事への不満の場合もあれば、仕事の改善提案や、経営方針への意見の場合もあるかもしれません。
そのような話をある意味「酒の力を借りて」話すことは、少なくともガス抜きにはなりますし、場合によっては思ってもみなかったビジネスチャンスのヒントがあるかもしれません。
何より、若い社員にとって、自分の思っていることを率直に言えた、ということは大きなモチベーションにも、その社員の育成にもなります。
有意義な飲みニケーションにするために
このようにメリットがたくさんある飲みニケーションですが、しかしそのやり方や臨み方によって、費やす時間が意義あるものになったり、意味のない時間つぶし、あるいはむしろマイナスの効果になる場合もあります。
そうならないための、上司や先輩、あるいは若い社員が飲みニケーションをする上で心がけるべきマナーとそのノウハウをご紹介します。
上司、先輩が心がけること
1.話を振ってあげる
若い社員は飲みニケーションに慣れていませんし、上司や先輩がどこまで自分を受け入れてくれるかわかりませんので、どの話題が適切かが分からない、あるいは役員なども同席の場合の話題が選べない、などの心配を抱えています。
しかしコミュニケーションを取りたい気持ちはありますので、そのような場合は上司や先輩が、若い社員でも話せるような話題を振ってあげましょう。
2.事前にそっとマナーを教えておく
また、若い社員は飲み会のマナーやルールを自分は知らない、ということを不安に思っています。あるいはそれを知らないままに参加をして自分の評価を落としてしまったりします。
それがあると、2度と飲みニケーションには参加しません。ですので、お酌のタイミング、上座や下座、最低限のマナーなどを事前にレクチャーするか、飲み会の最中に隣に行ってそっと教えてあげましょう。
3.お酒の無理強いはしない
最近はお酒が飲めない、あるいは飲めても量が少ない若者が増えてきました。無理をして飲んで身体を壊すことへの拒否感も強いです。
にも関わらず、苦手なものを大量に飲まされてしまう不安があって飲みニケーションに対して及び腰になっています。ですので、若い社員にお酒を無理強いするのは止めましょう。
4.打ち明け話はいいがネガティブな結論にしない
飲みニケーションの場で、若い社員が知らない、社内の派閥や対立関係など、社内では話しにくいが現実問題としては重要な非公式情報を与えてやることも重要です。
しかし、それが一方的な非難や、あるいは会社批判、会社の将来に対する不安を煽るような内容では、若い社員のモチベーションは急落します。
ですので、打ち明け話はいいことですが、最後はポジティブな気分になるように話しましょう。
若い社会人が心がけること
一方で飲みニケーションのメリットを享受するためには、若い社員が心がけるべき点もあります。
1.食わず嫌いは止めて参加する
1つは、あの人は嫌い、飲み会はイヤ、と食わず嫌いをせずに、時間が空いていたら積極的に参加することです。そこから、新しい人脈や新しい知識が生まれます。
2.飲み会の席では周囲に気を配る
職場で「気が利く」と思われることは職場での自分の心地よい居場所づくりにつながります。そのためには、常に周囲に気を配りましょう。
グラスが空いていないか見る、空いている皿は片づける、エアコンの温度はちょうどいいか確かめる、など先輩社員がおそらくしていることなので、真似をするようにしましょう。
3.相手の話をよく聞く
若い社員にも考え方や短いながらも人生経験はあるでしょうが、しかしボリューム的には圧倒的に上司、先輩、年長者の方が上です。
ですので、飲みニケーションの場では相手の話の聞き役になって、基本的にその情報を取り込むことに徹しましょう。
まとめ
いかがですか。
若い社会人も望んでいる、飲みニケーションの復権は職場の活性化のためには基本的にプラスの要素です。ただし、それは上司の自慢話や上部批判の場になって、上司の自己満足に終始するようであれば、あまり意義あるものにはなりません。
ですので、上司や先輩も、そして若い社会人もそれを有意義な時間にできるように、マナーやルールあるいは気配りを忘れないようにしましょう。