収入にあわせて家計をやりくりしていると、生活費にお金がかかってなかなか預金や貯金ができないとおっしゃる人が数多くいらっしゃいます。
確かに日々の生活費がギリギリである場合には、思うような貯金生活ができないかも知れません。
そのことで近い将来や老後に不安をおぼえる人もいらっしゃいます。そこでこの記事では、世論調査を元に世代別の平均貯蓄額を紹介します。一体周りの人はいくらぐらい貯金をしているのでしょうか?
また、40代で貯金ゼロということで焦っている人もいらっしゃるようですが、そういう人がどれくらいいらっしゃるのかもあわせて紹介します。もしあなたが40代なのであれば同世代の貯金事情を知っておきましょう。
最初に知っておきたい基礎知識
貯金額の実態を計算する方法として、平均値と中央値という値があります。どちらかの計算方法だけで算出してしまうと、実態からかけ離れた数値となってしまいますので、できれば両方の特徴を知っておきましょう。
よく数字は客観的だといわれることがありますが、その数字の捉え方によって分析結果は変わってきますので、それぞれの特徴を抑えた上で、周りの人の実態を計ることが大切です。
では、基礎知識として平均値と中央値について解説します。既にこれらの意味を知っているという人は次の項目まで読み飛ばしていただいても大丈夫ですので、気楽にお読みください。
平均値とは
平均値とは、全員のデータを足したものを人数で割り算した場合の値です。たとえばAさん・Bさん・Cさん・Dさん、Eさんの5人の人がいらっしゃったとします。
- Aさんの貯金が100万円
- Bさんの貯金が200万円
- Cさんの貯金も200万円
- Dさんの貯金が100万円
- Eさんの貯金が300万円
だった場合の平均値を出してみましょう。
《平均値の計算式》
100万円(Aさん)+200万円(Bさん)+200万円(Cさん)+100万円(Dさん)+300万円(Eさん)=900万円
900万円÷5人=180万円
この結果、5人の平均貯金額は180万円という答えになります。
この結果を見ていると、大体180万円くらいがみんなの貯金額の目安なんだなと思われるかも知れませんが、平均値では目安が計りにくい場合もあります。それは一部の人の数値が平均からかけ離れている場合です。
先ほどの例で、AさんからDさんまでの貯金額はそのままで、Eさんだけが5,000万円の貯金を持っている場合で計算してみましょう。
《Eさんが5,000万円を持っている場合の平均値》
100万円(Aさん)+200万円(Bさん)+200万円(Cさん)+100万円(Dさん)+5,000万円(Eさん)=5,600万円
5,600万円÷5人=1,120万円
Eさんだけが突出して貯金をしている場合、5人の平均貯金額は1,120万円となっています。でも、この数字は多数派の実態とかけ離れていますよね?そこで、中央値というデータも参考にします。
中央値とは
中央値とは、そのデータの少ない値の人から数えて、丁度真ん中の人のデータのことをいいます。先ほどの5人の例でいうと、最も少ない貯金額100万円のAさんやDさんから数えて丁度真ん中に来る人の金額が中央値となります。
5人のうちの真ん中は3人目ですので、200万円が中央値となります。5,000万円の貯金を持っているEさんから見ると、かけ離れた数値に感じるかも知れませんが、もともとEさんがかけ離れた貯金額を持っているだけで、多数派の実態を反映した数値だといえます。
みんなの貯金額が知りたい!一般的な貯金額はいくらなの?
さて、いよいよ本題に入りたいと思います。世間ではいくらの貯金をしているのでしょうか?ここでは金融広報中央委員会が平成27年に発表した、「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、貯金の世間相場を紹介します。
このデータは普通預金や定期預金だけでなく、資産運用による金融資産全てを加味した金額です。独身を含む単身世帯と、2人以上の世帯調査をそれぞれ解説したいと思います。
世代別平均値
まずは金融資産状況の平均値から紹介しましょう。金融資産の平均値は、20代も30代も40代も単身世帯の方が豊富に貯えています。
単身世帯の方が自由に使えるお金が多く、家族のために必要な教育費や保険代が不要だからだと推測できます。
特に教育費用がかさみやすい40代の資産の差が顕著となっていますので、2人以上の世帯の40代はしっかりとした家計のやりくりが必要な世代だといえるでしょう。
単身世帯の金融資産状況平均値
20代 | 379万円 |
30代 | 825万円 |
40代 | 1,646万円 |
50代 | 1,941万円 |
60代 | 2,494万円 |
2人以上世帯の金融資産状況平均値
20代 | 315万円 |
30代 | 717万円 |
40代 | 974万円 |
50代 | 1,941万円 |
60代 | 2,462万円 |
50代以降は単身世帯と2人以上の世帯の差がなくなっているのが特徴で、2人以上の世帯で、子供が独立してお金がかからなくなってきていることが伺えます。
世代別中央値
中央値は平均値と比べると、随分低い数値となることがお分かりいただけるかと思います。中央値も平均値同様に、40代までは単身世帯の方が金融資産を豊富に貯えています。
50代以降は単身世帯と2人以上世帯の金融資産が逆転するのも特徴で、2人以上世帯の家計が楽になっていく世代ということが分かります。
単身世帯の金融資産状況中央値
20代 | 180万円 |
30代 | 500万円 |
40代 | 620万円 |
50代 | 965万円 |
60代 | 1,200万円 |
2人以上世帯の金融資産状況中央値
20代 | 239万円 |
30代 | 405万円 |
40代 | 600万円 |
50代 | 1,100万円 |
60代 | 1,500万円 |
年収に比例して貯金額も高くなるの?
年収の多さと貯金額には因果関係があるのでしょうか?
一般的な考え方として年収が多いほど貯金も多いというイメージがあるかと思います。本当にそういう結果となるのか検証してみました。
40代の年収別貯蓄額の平均値と中央値を紹介します。
40代年収別貯蓄額の平均値
年収300万円 | 216万円 |
年収300万円~500万円 | 382万円 |
年収500万円~750万円 | 782万円 |
年収750万円~1000万円 | 992万円 |
年収1000万円~1200万円 | 1,002万円 |
年収1200万円以上 | 2,327万円 |
40代年収別貯蓄額の中央値
年収300万円未満 | 0円 |
年収300万円~500万円 | 100万円 |
年収500万円~750万円 | 400万円 |
年収750万円~1000万円 | 800万円 |
年収1000万円~1200万円 | 628万円 |
年収1200万円以上 | 2,000万円 |
やはり、年収と貯蓄額には因果関係があり、年収が多いほど貯蓄額も多いようです。そして、年収300万円未満の40代の中央値はゼロ円となっていることも注目です。
40代で貯金額がゼロの人ってどれくらいいるの?
40代で貯蓄がゼロの人はどれくらいの割合でいらっしゃるのでしょうか?年収別に貯蓄ゼロの世帯の割合をまとめてみました。
年収別貯蓄ゼロ世帯の割合
年収300万円 | 貯蓄ゼロ56.3% |
年収300万円~500万円 | 貯蓄ゼロ43.5% |
年収500万円~750万円 | 貯蓄ゼロ22.5% |
年収750万円~1,000万円 | 貯蓄ゼロ12.3% |
年収1,000万円~1,200万円未満 | 貯蓄ゼロ19.2% |
年収1,200万円以上 | 貯蓄ゼロ17.6% |
貯蓄ゼロ世帯は年収が少ないほど多くなっています。
ただ、年収1,200万円以上の世帯でも一定割合で貯蓄がゼロとなっていることに驚いた人も多いのではないでしょうか?
日本の平均年収は400万円台前半といわれているので、そこから考えるとかなり高収入なのに貯蓄ができていないという実態があるのです。
年収と貯蓄額は比例しますが、きっちりと貯蓄ができるかどうかは自分次第ということがいえそうです。
まとめ
40代の貯蓄事情は平均値と中央値をチェックすると、その様子が分かります。
データを検証すると、単身世帯に比べて2人以上の世帯で貯蓄が少ないのが40代までとなっており、それ以上の世帯では2人以上の世帯の方がしっかりと貯えているようです。
また、年収と貯蓄額は比例し、年収が多いほど貯蓄額も多くなっています。
反面、年収が増えたとしても一定割合で貯蓄ゼロの世帯があり、収入に関わらず貯蓄ができるかどうかは最終的には自分次第であることが分かります。どの年収の場合でも貯蓄に対する意識を高めて、しっかりと将来に備えましょう。
(文/田中英哉)