現在、全国各地のパチンコ店では射幸性を抑えるマシンを次々に導入している。
日本においてのパチンコ産業の市場規模は、20兆円を超えている。まさにモンスター市場と言っても良い。
それだけに、膨らみすぎた業界が生み出す問題というのもまた、相当数に上る。
一番の問題となっているのが、ギャンブル依存症患者の増加だ。
その実態をここで書くと、それだけでコラムが終わってしまうので割愛する。
が、生活するためのお金まで注ぎ込む人がいるということは、既に一般市民の遊びの域を逸脱した射幸性があるのが、今のパチンコ屋であるということだ。
これは誇張ではなく、現在のパチンコ・パチスロの本質である。
だが、もしかすると10年後、20年後には、ギャンブルに過剰に依存する人というのは、もっと減っているのかもしれない。
というのも、現在パチンコメーカー、そしてホールは、それなりに努力を重ねているのだ。
MAX規制でパチンコはこう変わった!
パチンコ屋の看板となるのは、やっぱりパチンコ機種である。
つい最近までホールを席巻していたのが、一般にMAX機と呼ばれるマシンであった。
このMAX機、初当たり確率は1/400と非常に当たりにくいスペックであるが、一度大当たりをすると高確率状態に以降した際には、屈指の爆発力を秘めていた。
ツボにはまって何度も何度も大当たりをする様は、実に多くのユーザーの脳をとろけさせたようだ。
僕はあまりパチンコには触らないので、MAX機も数度しか打ったことがない。
それでもその連荘性には舌を巻いた覚えもある。
ただし、大当たり確率は非常に低いため、その分客も大金を投じる必要性があった。
ハイリスクハイリターン。まさにホールの主力機種としては、申し分のない性能だったというわけだ。
ところが現在では、大当たり確率の下限が1/320の機種が導入をスタートされている。
初当たりしやすくなり、一方で連荘しにくいスペックのマシンばかりとなってしまった。
では既存のMAX機はどうなったのかと言うと、昨年のうちにほぼほぼ撤去されている。
業界全体で足並みを揃えて、一斉に撤去をしたようだ。
その代わり、MAX機と見た目はそっくりな新内規のマシンが導入されているので、僕のようなあまりパチンコが分からない人間には、見た目はそう変わらないように感じられるんだけどね。
しかし、間違いなく客の射幸心を削ぐことには成功したようで、旧来のMAX機ファンは現在、意気消沈をし、結果的に投資も控えているようだ。
素晴らしいことである。
パチスロは新基準でこうなった!
一方で、パチスロはパチスロで射幸心を煽るスペックが多く、問題も何度か指摘されていた。
指摘の内容は、パチンコとそう変わらない。
投資が嵩んでも、一撃で取り戻せるほどの爆発力を発揮するマシンが少なからず設置され、しかもそれらは大人気の看板機種となっていた。
そこで、このような状況に一石を投じるべく投入されたのが、新基準機と呼ばれる、出玉性能の低いマシン。
新基準機の特徴は、1,000円あたりの台の回転数が、旧来のものよりほんの少しだけ多くなっていること。
苛烈なハマりは少なく、当たりやすいスペックになっているということ。
それから、
- マイルドな出玉推移を描き
- 事故が少なく
- 本来店側が意図していない誤爆を防ぎやすい
ということなどなど、いくつかある。
まとめると、低投資でそれなりに当たるけど、大勝を目指せるような機種ではないというところか。
しかも低設定なら順調にお金を吸い込むため、約束されたハイリスクローリターン台にもなりやすい。
ワンチャンで爆発させる機械でもないため、元々ギャンブラーしかいないパチンコ屋では、本当に稼動しないのが現状である。
現在のパチンコ屋に設置されているパチスロは、旧来の人気機種と新基準機のごった煮状態。
当然新基準機は全く固定客がつかず、苦労している店舗も多いようだ。
パチンコ屋は今後、適正規模の市場になるのでは?
そもそも余暇産業が、この不景気に20兆円規模というのがおかしな話である。
景気に逆走して膨らみ続けた状態は、健全ではない。
しかし、これからのパチンコ屋にはマイルドなマシンばかりが席巻することとなる。
業界全体での依存症対策でこのようなマシンが推奨されるようになっていくので、これまでの機種とはまったく異なる、とにかく出率が低く設計された機種構成は、間違いなく投資の健全化の後押しになるはずだ。
そもそも当初のパチンコは、玉を出してお菓子やタバコに交換するような遊びだった。
時給換算すると、せいぜい1,000~1,200円程度ということが、良い設定の台でも十分に考えられる。
バイト代程度にしかならないであろう新基準のマシンは、ギャンブラーを目覚めさせ、別の消費に向かわせるきっかけとなる。
景気に対しては確実に良い影響を与えるに違いない。
(文/松本ミゾレ)