派遣社員とは、契約元の派遣会社から顧客の所に派遣されて働く人のことです。
派遣会社は多くの顧客を抱えているので、一ヵ所でずっと働くわけではなく、別の派遣先に仕事場が変わる場合もあります。
また、顧客からクレームが派遣会社に来た場合には、派遣先を変えられてしまうこともあります。
なお、給料は派遣元からもらうこととなり、社会保険も派遣元との間の手続きとなります。気になる給料は時給制のケースが大半で、賞与は出ないケースが多いようです。
反面、正社員では時間の制約が大きい場合には、日時を限定的に働くことができる派遣社員の方が働きやすい場合も多く、ライフスタイルによってメリットとデメリットの感じ方は異なるようです。
さて、そんな派遣社員はしっかりと稼ぐことができるのでしょうか?派遣社員の収入事情を解説します。
派遣社員には種類がある
ひと口で派遣社員と申しましたが、派遣社員には種類があります。その種類とは、
- 一般派遣
- 特定派遣
- 紹介予定派遣
の3種類に分けられています。
最も多い一般派遣は、派遣会社に登録をしておき、派遣先が決まった場合に一定期間働きに行くという方法です。現在派遣で働いている人の約8割が一般派遣で、登録中は雇用契約とはみなされず、働いている期間だけが雇用契約期間となっているのが特徴です。
特定派遣は、派遣会社に登録している間は雇用状態となります。働いていない期間も給料の対象期間となるため、派遣会社は随時派遣することとなります。
紹介予定派遣とは、派遣した人が派遣先で正社員や契約社員として雇用されることを前提に契約する方式です。紹介予定派遣として働けるのには期間が最長で6ヵ月と決まっており、その後は派遣先と直接契約となります。
派遣法を知っておこう
派遣に関しては派遣法という法律でその運用方法がしっかりと定められています。
派遣法は2012年10月に改正され、現在知っておくべきポイントはざっくりいうと3つあります。その3つとは、
- 日雇い派遣は禁止
- 退職後1年以内の職場へは派遣禁止
- マージン率情報の開示
の3つです。
それぞれ一体どういう内容なのでしょうか?具体的に見て行きましょう。
日雇い派遣は禁止
派遣法では日雇い派遣は禁止となっています。日雇い派遣とは文字通りその日だけ働く派遣です。
本来雇用者は働きやすい環境を作るという責任がありますが、日雇い派遣を認めていると、あまりに期間が短い労働となってしまうため、本来の責任を果たすことができません。労働災害が起こる原因となっているとの指摘もあり、日雇い派遣は禁止されました。
では、どれくらいの期間であれば合法で、どれくらいの期間であれば違法となるのでしょうか?
具体的には、労働契約が30日以内の日雇派遣は禁止されました。最低でも31日以上の労働契約が必要となります。
でも求人広告を見ると、日雇いでの募集も結構見かけますよね?はたしてあれらは全て違法なのでしょうか?
実は日雇いが禁止されたのはあくまでも派遣だけの話しで、アルバイトやパートでの日雇いは問題ありませんので、日雇いで働きたい人は、他の雇用形態の中から探しましょう。また、例外的に許される場合もありますので、全面禁止ではないようです。
退職後1年以内の職場へは派遣禁止
1年以内に辞めた会社に派遣することも禁止となっています。直接雇用されていた会社を辞めて、その後に復帰したい場合は、本来は再雇用という形で直接雇用されるべきことです。
もしも派遣で復帰すると給料などが引き下げとなり、労働者に不利となってしまうので、禁止となっているようです。
逆に、派遣で働いて辞めた後、直接雇用で復帰というのは問題ありません。また、60歳以上で定年退職をした人は派遣で復帰することは可能です。
ただ、禁止されたことによって、場合によっては働く人にとって不利になるケースもあります。
たとえばご主人が転勤になった奥さんが、もともと働いていた派遣先の会社の他の支店で働きたかったとしても、同じ会社なので派遣してもらえなくなります。
雇用の機会が減るケースも出ているため、例外について検討されているようです。
マージン率情報の開示
マージン率の情報開示とは、派遣会社が顧客から得た料金を派遣社員に払って、そのあと残った金額のことです。つまり派遣会社のマージンがどれくらいかを公開するという義務が発生したのです。
リーマンショックの時に、派遣会社が搾取しすぎなのではないかと問題になりました。そのため、現在は各派遣会社のサイトなどを見るとマージン率が確認できるようになっています。
マージン率を見比べて派遣会社を選択できるというメリットはあるのですが、安易にマージン率が低い所を選べば良いというわけではありません。
社会保険や教育費用、福利厚生が充実している派遣会社はマージン率が高い場合もありますので、中身が重要といえるでしょう。
マージン率はあくまでも目安と考え、契約時には中身もしっかりと確認する必要があります。
派遣社員の平均年収事情
派遣社員は派遣法によってしっかりと守られているようですが、肝心の年収はどういう状況なのでしょうか?
ちまたでは「派遣社員は給料が安い」という噂が多いように思いますが、その真相に迫ってみましょう。
派遣社員の平均年収は328万円(平成27年度の賃金統計調査・人事院調査票参考)で、月割すると27万円となります。
派遣社員以外も含めた全体の平均年収は415万円(平成26年 国税庁)ですので、派遣社員の年収は安いといわざるを得ません。
派遣社員の年収の特徴は、20代から60代まで右肩上がりに上がり続け、20代で277万円だった平均年収が、40歳を超えると323万円、そして60歳から64歳が最も高い363万円となります。
サラリーマンでは定年を迎えていることが多い、60歳を超えてからが最も高いというのが特筆すべき点だといえます。
いずれにせよ、ピークだとしても363万円ですので、この記事のタイトルのように年収500万円を超えるのは工夫が要りそうです。
どうすれば高収入になるの?
派遣社員として年収アップをするには、資格取得と業種の選択が必要です。
資格に関してのお話からしますと、派遣社員に人気のある資格があります。それは簿記やTOEIC、そして、情報システム管理のシステムアドミニストレータ(シスアド)です。
これらの資格を持っていると、派遣会社との契約時に有利になったり、派遣先の選択肢が増えたりしますので、持っておいて損はありません。資格手当がついて収入がアップする場合もありますので、おすすめです。
業種の選択とは、簡単にいえば時給が高い業種を選択しましょうということです。比較的時給が高いのは、外資系企業やIT企業です。
また、勤務地や勤務時間によっても時給は変わりますが、いずれも業種の傾向がありますので、業種ごとの相場を把握しておくと良いでしょう。
まとめ
派遣社員には一般派遣と特定派遣、紹介予定派遣の3種類があり、いずれの場合も派遣法によってしっかりと守られています。
日雇い派遣は禁止され、退職後1年以内の職場へは派遣禁止となり、マージン率情報が開示されています。
ただし、派遣社員の年収事情は厳しく、日本の平均年収の415万円を大きく下回る328万円が派遣社員の平均年収で、資格取得や業種の選別をすることで、少しでも年収に反映させたいところです。
(文/田中英哉)