「会社員だから退職金が出る」とあなたはそう思っていませんか?しかし実際は退職金制度が無い企業が約3割、働いているからといって絶対にある制度ではありません。また退職金制度には退職してすぐにもらえる一時金から一定の条件を満たしてもらえる退職金年金制度もあります。
「もらえないの?」と驚く前に、まずはあなたの働く会社の退職金制度について知り、無いならばどうするかを考えてすぐにでも動かなくてはいけません。
退職金制度が無い企業が全体の3割
厚生労働省が公表した調査結果によると、退職金制度がある企業の割合は全体の75.5%です(退職金制度には退職時にもらえる一時金の退職金の他に、企業年金などの退職年金制度も含まれています)。
しかし企業規模別にみると、1000人以上の大企業では93.6%とほとんどの企業に退職金制度があり、300人以下では82%、100人以下では72%と従業員が少ない企業になるほど割合が低くなっています。中小企業では退職金制度が無いことはめずらしいことではないのです。
入社するときは20代で企業年金や退職金と言われてもピンッと来ないものです。しかしそんな若い世代に限ってさまざまな事情で退職するときに「退職金が無いの!?」と驚くそうです。退職金でしばらく生活をしながら転職活動をする、そう考える人も少なくないようです。
退職金・企業年金に望むこと
退職金や企業年金に関する企業の悩みを解決するコンサルティング会社・株式会社IICパートナーズが全国の会社員100人に対して調査した結果、約半数が退職金や企業年金に「老後安心して暮らせるための収入源となること」を望んでいます。
退職金を元手に資産運用するという60代も今は急増しています。
公的年金や社会福祉に対する不安が高まっている分、退職金や企業年金に対する期待が高まっているようです。退職金や企業年金は働いている会社の誠実さのあらわれ、更に社員が企業を信用できるかどうか判断する試金石のような役割になっているようです。企業側としては定期的に退職金や企業年金についての情報を提示することが必要です。
あなたは自分のもらえる退職金を知っていますか?
退職金や企業年金について老後の収入源として期待している反面、「退職金・企業年金が定年退職したらどのくらいもらえるか、知っていますか?」という問いに対して知らないと答えたのが約6割です。「退職金について安易に聞くと悪い印象を持たれそう」だという考えが原因のようです。
企業側が定期的に情報を開示することは社員の老後に対する不安を払拭し、快適に働き続けられる環境づくりにも役立ちます。退職金の計算方法を就業規則に載せているため目安となる金額を把握できるという企業もあるそうです。
さらに社員も退職金や企業年金について知っておくことで早めに老後の生活設計ができます。特に退職金制度が無い場合は早めの対応をしないと老後の生活資金の確保が難しくなります。
退職金制度が無いなら自分がやるしかない
老後資金の準備は「お金の貯め方」と「お金の運用の仕方」がポイントです。まずは現在の家計を見直し、必要なお金を毎月決めた額を貯めていきましょう。
ただし将来の老後を心配し過ぎて今の生活を締め付けては長続きしません。老後の生活資金確保は長い対応が必要です。長く続けるためには無理のない貯め方をして下さい。
毎月ある程度のお金を準備できるようになったら、お金の運用を考えましょう。まず検討すべきなのは公的年金の上乗せ制度の活用です。公的年金への拠出はほとんどが全額所得控除を受けることができます。つまり拠出した金額分は税金がかかりません。
【例】400万円の年収で、税金計算の基となる課税所得が320万円の場合
公的年金へ20万円拠出する | 課税所得は300万円 |
株や投資信託、定期預金で20万円運用 | 課税所得は320万円のまま |
税率を5%とすると300万円の場合は15万円、320万円の場合は16万円、公的年金の制度を利用しただけで他の運用方法に比べて10,000円得しているのです(本当の計算式はもっと複雑なので実際の金額は異なります)。
税制優遇がある制度としては確定拠出年金(401k)もあります。個人型の確定拠出年金に加入できるようであれば加入することも有効な策のひとつです。どんな策を使うとしても早めの準備は必要です。まずは退職金や企業年金について自社の制度を知ることから始めましょう。
(文/高橋亮)
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