資産を効率的に増やすためには、運用にトライするのが効果的です。しかし、こういうネガティブ意見もあるのでは?
「運用って何をすればいいかわからない」「そもそも、一部のお金持ちがやっているだけでしょ?」……他にも、色々ありそうですね。
そんなネガティブ意見を少しでも打ち砕いてみせましょう。すぐに実践してみたくなるアイデアを盛り込んでみました。
みんな、どのぐらい投資してる?
運用や投資の話を考える前に、他の人はどれぐらい投資しているのかという目安を明らかにしておきましょう。
平均値は?
総務省が行っている家計調査によれば、平成26年現在、2人以上の世帯における貯蓄の内訳は次のようになっています。
種類 |
金額 |
貯蓄現在高に占める割合 |
定期性預貯金 |
734万円 |
40.7% |
通貨性預貯金 |
394万円 |
21.8% |
生命保険など |
374万円 |
20.7% |
有価証券 |
264万円 |
14.6% |
金融機関外 |
39万円 |
2.2% |
つまり、貯蓄のうち、有価証券などへの投資に回っているのは15%程度ということです。
しかし、後述しますが、この数字にはからくりがあるのです。
年収が高くないと投資はできない?
「年収が高い人しか投資はできないんでしょ?」と思っていませんか?実はそんなことないんです!
年収が高い層ほど投資をしているのは確か
先ほどの家計調査の別のデータを見てみましょう。年収、貯蓄現在高に占める有価証券の金額、構成比を1枚の表にしてみました。
年収 |
貯蓄現在高に占める有価証券の金額(万円) |
構成比(%) |
200万円未満 |
1 |
1.5 |
200~400万円 |
7 |
2.4 |
400~600万円 |
18 |
3.7 |
600~800万円 |
29 |
4.2 |
800~1000万円 |
40 |
4.5 |
1000~1200万円 |
68 |
6.3 |
1200~1600万円 |
89 |
6.4 |
1600~2000万円 |
137 |
7.7 |
2000~3000万円 |
246 |
10.1 |
3000万円以上 |
1150 |
20 |
やっぱり、年収が高いほど有価証券などの金融商品に回せる額は大きくなります。年収が高い層ほど投資をしている、というのは確かでしょう。
一方で、こんなデータもあります。日本証券業協会が行っている「個人投資家の証券投資に関する意識調査」によれば、個人投資家の年収の分布は、次のようになっています。
年収 |
% |
300万円未満 |
48% |
300~500万円未満 |
24% |
500~700万円未満 |
13% |
700~1000万円未満 |
8% |
1000万円以上 |
5% |
無回答 |
1% |
なんと、約7割が年収500円未満です。どうも、「投資は一部のお金持ちのためだけのもの」という説は必ずしも正しいわけでもなさそうですよね。
自分の身の丈に合った投資をしてみよう
先ほどのデータを見ると、「年収は低くても、投資をしている人がいる」というのが正解のようです。ぜひ、自分の身の丈にあった投資を取り入れてみましょう。年収が低くても、お手頃な値段で投資をする方法をここでご紹介します。
- ミニ株(単元未満株取引サービス)
株の場合、「この数から購入を受け付けます」という基準(単元)があります。トヨタ・ソフトバンクなどの有名企業の場合、この基準が高く設定されているため、投資をするのにもお金がかかるのです。
そこで、証券会社によっては、1株など少ない単位から購入を受け付け、投資をしやすくなるサービスを設けています。 - 積立
証券会社によっては、毎月5,000円程度を積み立てていって投資に回すというパッケージを提供している場合があります。株式・投資信託など、金融商品ごとに設定されているので、自分の好きな商品に投資できるのも特徴です。
貯金感覚で始められるのが大きな魅力でしょう。
年収が低くても投資を、という場合、まずはお小遣いでできる金額での投資から始めてみるのをお勧めします。
投資をする気になるための勉強法
では、お小遣い感覚の投資を始めてみたら、次は何をすればいいのでしょうか?一番いいのは、「お金がかからない状態で、実際の取引を体験してみる」ことです。デモトレードにチャレンジしてみましょう。
これは、実際の上場株式のデータを用いて、株投資のシミュレーションを行えるシステムです。ゲーム感覚で始められるので、気軽にチャレンジしてみましょう。利用にあたってお金はかからないので、失敗しても損はしません。
年収別投資プラン
ここまでの内容を踏まえ、年収別の投資プランについて考えてみました。
400~600万円なら手堅く国内株式から
最初に、年収400~600万円台の投資プランについてご説明します。この層の場合、普段の生活にはとりあえず困らないけど、少しずつ投資を行っていき、手堅く資産を増やしていくのが基本的な投資プランの考え方となります。
大幅に資産を目減りさせないことをまずは目指してください。国内株式・国債など、利回りは低いけど、価値が暴落するリスクも低い金融商品を中心に投資を行うことをおすすめします。
投資信託にトライする際も、リスクの低さを重視して選んでみましょう。実際の取引を通じて、資産運用のセンスを磨く段階と考えてください。
600~800万円なら海外商品も加えて
次に、年収600~800万円代の投資プランについてご説明します。
先ほどの400~600万円台に比べると、少し攻めの姿勢で投資を行う余裕が出てくるでしょう。国内株式・国債での運用に加え、海外株式・国債での運用も視野に入れてみてください。情報収集をしっかりすれば、利回りの高い金融商品に出会えます。
しかし、新興国の株式・国債に投資する場合は、注意が必要です。利回りがかなり高い場合もありますが、価値が暴落しやすいのも事実なので、よく吟味してから選ぶようにしましょう。
800万以上なら外貨も視野に入れよう
最後に、年収800万円代の投資プランについてご説明します。ここまで来たら、かなり攻めの姿勢に出てもいいでしょう。外貨預金、FX(外国為替証拠金取引)など、やり方次第では高い利回りが望める金融商品に投資してみるのもアリです。
ただし、注意していただきたい点があります。1種類の金融商品に多額の資金を投資するのは正直、おすすめできません。どの金融商品にもあてはまることですが、1種類の商品で運用していた場合、価値が暴落したらその影響をもろにかぶってしまいます。
数種類の商品で運用することで、価値が暴落するリスクを分散することが可能な点は、しっかり頭に入れておいてください。
不動産投資という選択肢もある
ある程度まとまった資金を用意できるなら、不動産投資にチャレンジしてみるのも一つの手段です。
サラリーマンの場合は、区分所有マンション・アパートからスタートしましょう。例えば、資金を450万円用意できれば、こんな物件が購入できます。
所在地 | 東京都板橋区 |
物件価格 | 450万円 |
間取り | ワンルーム |
専有面積 | 16.42平方メートル |
築年月 | 1988年6月 |
想定利回り | 10.4% |
(参照:マンション(区分)リーマ高島平クレスト)
ただし、サラリーマンが不動産投資をするにあたっては、注意してほしい点があります。
1)自己資金で賄える物件から手を付ける
不動産投資の場合、通常の住宅ローンと比べると、ローンの審査が格段に厳しいです。本人の属性に加え、物件の収益性も問われます。最初は審査に落ちまくる、ということも考えられるので、あくまで自己資金でやるつもりで計画を立てましょう。
2)利回りを意識する
大まかにいえば、「不動産に投資したお金に対して、どれぐらいが家賃収入として返ってくるか」という数字です。これがあまりに低いと、不動産投資をする意味がありません。
例えば、先ほどの物件の場合、「年間46万8,000円(=450万円×10.4%)が家賃収入等で得られる」という意味になります。
さらに、利回りは物件の運用コストを考えない「表面利回り」と運用コストも考える「実質利回り」に分かれます。投資物件を選定する際は、実質利回りまで考えて選びましょう。
3)年収に応じて手を広げていく
年収が400万円から600万円の間にあるなら、まずは手堅く1室から不動産投資を始めてみてください。そこでノウハウを覚え、次の投資に備え、貯蓄をしましょう。600万以上あるなら、だんだん部屋数を増やしてみるのもいいでしょう。
注意すべきこと
最後に、まとめとして、投資をする際の注意点についてご説明します。
あくまで投資は自己責任
金融商品取引法においては、「自己責任原則」という考え方がとられています。つまり、株・投資信託・FXなどの金融商品取引において損失を被った場合であっても、投資した本人が自らの判断で取引を行った限りは、その損失を自ら被らなければいけないということです。
もっと簡単に言ってしまえば、「投資で損をしても、あくまで自分のせい」と考えてください。損をしたからといって、金融機関のせいにするつもりなら、投資自体やめておいたほうがいいでしょう。
自己責任の考え方は、実際に投資プランを考える際にも、重要視すべきです。「金融機関の営業の人に勧められたから買ってみた」というように、安直な考え方で投資をするのは絶対にやめましょう。もちろん、金融機関の方も、重要な説明はしっかり行い、顧客の理解を得た上で物事を進めていくというスタンスは徹底させています。
銀行の担当者がお年寄りに投資信託を販売した際に、必要事項の説明が不十分で理解が得られなかったという理由で、お年寄り側からの損害賠償請求が認められたということもありました。
この一件があって以来、金融機関はコンプライアンス向上への取り組みとして、顧客への説明に力をさらに入れています。金融機関もしっかり説明を行ってくれるのですから、「自分でしっかり考えて決める」という姿勢は持ち続けましょう。
情報収集がカギ
では、自分でしっかり考えるためには、何をすればいいのでしょうか?答えは簡単です。勉強や情報収集を怠らないようにしてください。
新聞・雑誌・インターネットなど、情報収集をする機会はいくらでもあります。ただし、膨大な情報があふれているので、取捨選択も必要です。
そこで、情報を取捨選択するポイントも考えてみました。一言でいえば、「自分が投資を通じてどうしたいのか?」と明らかにすることです。具体的には、次の点について考えてみましょう。
- 投資で達成したい資産額はいくらか?
- 自分は毎月いくらまでなら投資に回せるのか?
- ローリスク・ローリターンでいくか、ハイリスク・ハイリターンでいくか?
これらを明らかにすれば、おのずと集めるべき情報がわかってくるでしょう。
わからない点は確実につぶそう
ファイナンシャル・プランナー、証券外務員など、金融関連の資格の勉強をしたことがある人なら、専門用語が出てきても、それほど抵抗はないかもしれません。その場で意味がわからなくても、「ちょっと調べればわかるな」という意識は持てるでしょう。
しかし、このような経験がない場合、最初は投資の勉強で苦労するかもしれません。用語がわからず、いらいらするかも…そんな時は、迷わず人を頼りましょう。金融機関のコールセンターに電話をしたり、ファイナンシャル・プランナーの無料相談を受けたりなど、方法はいくらでもあります。
わからないものは、いくら考えてもわかるようになりません。悩んでいる時間があったら、人を頼って効率的に進めていくのも、一つの選択肢と考えてください。
(文/菊地美亜)