企業の代表となる社長の給料はどのようにして決まるのでしょうか。
代表取締役社長と言うと一般の会社員と違って高い給料を取っていると言う感じもありますが、社長の給料が上がれば会社にとっても当然負担が増します。したがって、上場企業、中小企業などの会社の規模にかかわらず、また業績が上がっている企業だからと言ってトップで責任がある社長だから給料が高いわけではありません。 これは特に日本だけでなく、資本主義社会の国の一般企業なら同じ条件なのです。
また、企業を紹介する際に「年商」と言う言葉を使いますが、年商が高いからと言って一般的なサラリーマンと違い、その企業の経営者の所得も高いわけでもありません。 つまりすべての社長が高額報酬者と言うわけではないのです。
ここではまず最初に社長の給料の決まり方やボーナスの決まり方、社長自身の給料と会社資金繰り、そして年商から社長の給料を推測する方法をお伝えします。
社長の年収の決め方
社長の給料=役員報酬、ボーナス=役員賞与
まず社長の給料を決める際には会社と社長は全くの別物だと言うことです。自分で起業した会社であっても社長本人が私的に会社のお金を使うことは業務上横領という罪に問われることになります。
一般的には法人は株主の所有物となるので社長であっても株主によって選出され、具体的な報酬額も株主総会で決められます。
社長の給料は役員報酬となりボーナスは役員賞与となります。一般的に役員報酬は原則として一年間、金額を固定しなければ経費とすることは出来ず、一年間の売上を予想してそこから自分の基本報酬としての役員報酬を設定することになります。
社長の給料は一年の儲けを予想して給料を決める
社長の給料を決める際には
- 株主総会で限度額を決めて取締役会で具体的ルールに基づきな適正年収を決定する
- 年度始めに決めた役員報酬を増減することは出来ない
この二点をポイントとして、社長個人がひと月にどの程度の生活費が必要なのか、会社にどれぐらいの利益を残したいのか、経営状況に応じた役員報酬の世間相場などの情報を元に意見しながら月々の手取り額の基準を決めていくことになります。
社長の年収が高い=会社にとって○ではない
社長は自分自身の給料、つまり役員報酬は取らないことも、全ての利益を取ることも出来ます。
ですがここで考えておかなければならないのが
- 社長個人に利益が残るようにしたいのか
- 社長個人ではなく会社の税引き後の利益がなるべく残るようにしたいのか
- 会社と社長個人の区別なく手元に残るキャッシュが多くなるようにしたいのか
です。
社長個人に利益が残るようにすることで社会保険料の負担が大幅にアップすることになります。これとは逆に会社に利益を残す場合には設備投資などの名目で銀行からの融資などを受けやすくなる傾向にあり、会社の財政状況を良くすることができます。
そして会社と社長個人の区別なくキャッシュを残す場合には経営が安定している状態でキャッシュフローを豊富に保つことが出来るのですが社長個人のお金を会社の経営に使うことは出来ないので、この場合は金銭借用が必要になります。
この3つの考え方からわかるように、社長の年収が高くなれば会社の財政状況が悪くなってしまう可能性があり、社長の年収が高いことは会社にとって良いことではありません。
年商だけでは社長の年収はわからない
テレビや雑誌などで企業の有名経営者が紹介される際に「年商○○億円の企業」と紹介されることが多くあります。
中には何十億という年商を上げている企業の経営者などが登場することもあり、視聴者の中にはこの企業の経営者はすごい収入の億万長者だと思う人も多いでしょう。
ですが、企業が会社組織である限り年商が利益や事業の経営者の報酬と直結しているわけではなく年商が経営者の年収と連動しているわけではありません。もちろん創業者だから特別扱いなどもありません。つまり企業規模が年商○○億の企業の経営者であっても高額な役員報酬をもらっているとは限らないのです。
年商とは
年商とは名前の通り、会社の一年間の売上の合計です。この年商から原価や販売費などを引いたものが営業利益となり、営業利益から営業外収益となる受取利息や配当金、営業外費用となる支払利息などを引いたものが経常利益となり、この経常利益に特別損益である不動産や株の売却益、売却損、災害損失や税金などを加味すると純利益を出すことが出来ます。 もちろん、これらの経費が年商を上回った場合は、赤字経営、赤字企業となるのです。
つまり年商とは一年間で商品やサービスなどを販売した合計金額に過ぎません。 また製造業のように一から商品を作って売る業種なのか、単に商品を売るだけの商社などかによって純利益なども大きく変わってきます。 したがって年商のみでその会社の経営状態の参考にはなりません。
年商1億の会社の社長の年収はどのくらいあるのか?
年商1億の会社と聞くと会社経営をしている社長はさぞかしお金持ちなのだろうと思うでしょう。では実際に推測できる範囲で年商1億の会社の社長の年収を考えてみましょう。
年商1億、製造業、従業員数は20名とします。一年間の売上1億からまず20名の従業員の給与が一人当たり平均年収300万円とすると社員の給与だけでも会計上、年間約7,000万円が必要になります。この時点で残っているのは人件費を引くと3,000万円です。
ここから製品を作る材料費や広告費、販売費、事務所の家賃などの経費を賄うことになるので社長の年収は500万円ほどになることが予想され、年商1億円の会社の社長でも従業員の人数や製造するものなどによって、実際の固定費が大きければ利益は数百万円、固定費が小さければ数千万円の利益があるなど、役員給与はいくら年商1億円の会社の社長でも実態により一概に高い給料をもらっているとは言えないのです。 つまりたとえ会社設立をしたからと言って飛ぶ鳥を落とす勢いのベンチャー企業であれ、オーナー経営者であれ、中小、大企業にかかわらず経営トップである社長の給料はその企業の経営状態などに大きく左右されるのです。
(文/中村葵)