楽してたくさん儲かりたい。そう思う人間がいるからこそ、儲かっている商売がある。競馬しかり、カジノしかり、そしてパチンコ屋しかりだ。
なんせ余暇産業の中でも、金が絡んだものは昔から人気が高い。もっとも、いつの時代もそんな業界は、最終的に胴元だけが儲かるもの。ほとんどの客は、なけなしのお小遣いを投じて、数時間後にはイライラしながら店を出る。ただし、中には勝ち続ける人々もいる。
パチンコ屋の客層に限って言えば、たとえばパチプロはこれに該当する。がっつりと釘が開き、1,000円換算で他店よりも多くチャッカーに玉が入る台の設置された優良店。その優良店を嗅ぎつけて集結するのが、パチプロだ。
昔からパチプロには、自分ひとりが良い台を確保し、閉店まで打ち切るタイプと、数人の打ち子を雇って日当を与え、浮いた分を懐に入れるタイプがある。簡単に言えば後者は、良さげな台を集団で押さえさせ、手下に打たせて稼ぐ人と言っても良いだろう。
先日、そんな後者のタイプのパチプロの下で、日々仕事として打っている人々に話を聞く機会があった。色々と苦労があるようで、ちょっと面白かったので、ここで紹介したいと思う。
打つマシンに徹するのはつらい!
そもそも打ち子として雇われるということはどういうことか。それは無駄玉を出さず、毎度毎度玉の動きに注視し、大当たりすればラウンド中に「今、何玉入ったのか」など、常に気を遣っておく必要性に迫られるということだ。
今回話を聞くことができたGさんは、とにかく苦痛として「目の疲れ」を挙げた。
「結局、娯楽で打つのではなく、仕事で打っているということです。だから演出なんか全く面白くないし、幾ら大当たりしても、日当分しかもらえないため、全然楽しめない。何万発出しても、たまに日当に色がつくだけ。つらいですね」
Gさんによると、彼の日当は20,000円。パチンコだけ打っててそれだけもらえるなら良いじゃないかと思うが、さにあらず。
「暑い日も、寒い日も、朝は開店の1時間前には並んでるんです。大きなイベントの日には何時間も前に並びますし……そうそう、去年千葉県でグランドオープンした店には、開店の12時間前から気合いで並びました」
なるほど。それだけの苦労をして、閉店間際まで打ち切るというのは、過酷な肉体労働と言えるだろう。苦労はまだある。
腰と背中が痛い!布団で寝たい!
最近の台は光と音の演出が苛烈だが、こういうものを毎日打っていると、それだけで眼精疲労や肩こりにも悩まされる。だからブルーライトをカットする眼鏡が欠かせないそうだ。
それだけじゃない。延々座りっぱなしになるため、腰や背中も痛むという。また、Gさんの仲間は以前、長時間椅子に座っていたためにエコノミー症候群に陥って病院に搬送されたこともあったそうだ。
この仲間、悲惨なことに保険証を持っていなかった。病院に行ったは良いが、負担額に相当悩まされたということである。Gさん自身、慢性的な腰痛に悩んでいた。そこで同じ腰痛持ちとして、オススメのコルセットを紹介したところ、大変喜ばれた。
腰痛ってつらいよね。
さらには、打っている間、どうしても暇になってくる時間がある。こういう時の暇潰しのための手段にも結構苦労することも多いようだ。
「スマホゲームに熱中する同業者もいるけど、そういう人って玉を無駄にしてることも多い。それはなんというか、勿体ないんですよね。だから僕は、盤面を眺めながら、延々『今夜は何を食べようか』って考えてます。つらいけど。」
打ち子の生活は過酷!オススメなんかできない
最後に、打ち子を目指す人々へ伝えたいことをGさんに伺ったところ、このような答えが返ってきた。
「体が持たない。心も持たない。気持ちに余裕がなくなり、自分が何で生きているのか分からなくなる時がある。オススメなんかできません」
ううむ、どんな職業もそれなりにつらい側面はあるけども、僕のような根性なしには、到底打ち子は務まらないな……。
(文/松本ミゾレ 写真/ChameleonsEye / Shutterstock.com)