インターネットの普及に伴って、私たちの生活は随分と様変わりした。家にいながらにしてパソコンで様々な商品を買うこともできれば、スマホで映像や音楽などのコンテンツを得ることも可能になっている。
こういった情報コンテンツを、ウェブマネーなどを使って購入可能なダウンロードサイトも、既に私たちの日常には当たり前の存在だ。
一方で、本来ならば対価を払わないと手に入れることのできない商品を、違法ダウンロードしてしまうユーザーの数は、決して少なくない。日本では数年前まで、YouTubeなどでたやすく動画や音楽データが、ファイル形式を選んでダウンロードすることが可能な時代があった。
技術に対してリテラシーが伴っていなかったために起きた、時代の徒花(あだばな)のような抜け道である。ただし、海外に目を向けると、未だにこの手の行為は日常茶飯事のようだ。
違法ダウンロードは止まらない
日本のみならず、世界中で、違法ダウンロード被害はとどまるところを知らない。そしてこの被害を受けているジャンルの一角として、よく話題になるのが日本の場合、アニメである。
2013年に文化庁は、中国の主要4都市で行った、日本のアニメ、音楽などの不正ダウンロードについてのアンケートを行っている。このアンケート結果を集計してみると、なんと4都市だけで年間5600億円の被害があると推計されていたというのだ。
また、このときの発表では、中国全土のインターネット人口を考慮した上で、実際の被害額を試算すれば、ざっと推定でも4兆円近い金額の被害が出ているとも紹介されている。
日本のアニメや音楽は、世界中にファンを抱えている。それだけに特に違法ダウンロードの対象にもなりやすいようだ。コンテンツを提供する側からすれば、この被害額は、たとえ累計であって確定したものではなくとも見逃せないし、許せないものだろう。
違法ダウンロードの手口とは?
そもそも違法にコンテンツを流出させている人間がいなければ、この手の被害は発生しない。具体的に、違法ダウンロードの温床となっているのは、ネット上に無数に点在する動画投稿サイトである。
正当な手続きでお金を払えば手に入るコンテンツも、一部のネットユーザーによって権利者に無断でアップロードされれば、そこを経由していくらでもダウンロードされてしまう。
1つの投稿サイトでコンテンツが無断でアップロードされれば、それを検索して探り当てた世界中のネットユーザーはお金を払うことなく視聴できるし、ダウンロードもできる。
さらにそのダウンロードしたコンテンツを、今度は別の動画投稿サイトに拡散する者もいて、まさにいたちごっこという他ないのが実情だ。
これを防ぐには、ネットユーザー全員がモラルとリテラシーを身につけていなければならないが、このような節度を心得ている人間というのは、存外少ない。
文化庁の調査はあくまでも中国を対象としたものだが、何も外国の被害に目を向けずとも、わが国にも似たような輩は大勢いる。彼らは他人が苦労して作り上げたコンテンツを、さも自分の作品のように扱い、無償でバラまくのだから始末に終えない。
コンテンツの発展のためには、正規購入を!
当たり前の話だが、制作者側がコンテンツを作ったのに、余所者に盗まれて拡散されてしまえば、そのコンテンツはお金儲けの種にならなくなってしまう。要は劣悪なコピー品が、世界中に流通するようなものだ。
よほど作品に入れ込んで、例えばアニメなら「DVDBOX、ブルーレイを揃えたい」というコアなファンでもない限り、「不正アップロードされてる動画でいいか」となってしまう。
こうなればコンテンツを作ろうにもお金が回らなくなり、どんどん作品作りは後退することとなるだけだ。1件1件の被害は微々たるものだけど、これが世界中で起きたなら、もう目も当てられない。
もしもあなたが応援している映像コンテンツの制作会社やアーティストがいるのなら、是非存分に“買い支え”をしてあげよう。作れば作るほど儲けに結びつかない結果を、制作者に味わわせてばかりでは世も末だ。
(文/松本ミゾレ)