今の若者は車を必要としないとは言われていますが、「とりあえず免許は取得している」という方はかなりの数いると思います。いわゆる身分証として使うタイプですね。もちろん中にはしっかりと車の運転をしている方もいると思いますが、免許を取ったきりペーパードライバー化した話は度々耳にします。
つまり30万円の身分証というわけですね。
日本の運転免許証取得費用は高いのか
教習所に通って免許を取得した方は「なんで免許取るのにこんなにお金がかかるんだろう」と思ったことはありませんか?特に若い頃に取得した方は30万円がかなり負担になったかと思います。
他を知らなければ少し高いのかも?くらいで終わってしまう話ですが、実は日本の免許取得費用は先進国の中でも高いほうなのです。実際に各国の免許取得費用を見てみましょう。
- アメリカ…約46,000円
- イギリス…約36,000円
- 日本…約300,000円
現在確認できるのはこのアメリカとイギリスだけなのですが、海外で取得した人の話では「ブラジルでは10,000円」という驚愕に値する金額もありました。
しかも上記はまだ高いほうです。そもそも日本のように決められた授業数がない国が多いため、運が良ければ4,000~5,000円で取得できることもあるそうです。
一方で日本では下手をすればローンが必要になる金額です。この違いはどこにあるのでしょうか。
免許取得費用の高さは質の高さ?
免許取得費用が高い理由として、もっとも多い意見は「質が高いから」というものです。この質がなにを指すのかというと、事故率です。つまり運転の質が高いという意味になります。
では実際に事故率を比較してみましょう。
2013年 交通事故死亡率(単位:人/10万人)
- アメリカ…10位、12.40
- 日本…37位、3.90
- イギリス…41位、2.80
と、こんなに感じになります。たしかに日本の交通事故死亡率は低いですね。とはいえ免許取得費用が安いイギリスはもっと低いので、あまり関係がないかもしれません。あくまで「死亡率」なので、医療技術が高水準なら数字は低くなります。
ではもう1つ、自動車走行1億キロメートル当たり死者数という別のデータを見てみましょう。
2012年 自動車走行1億キロメートル当たり死者数
- アメリカ…0.71人
- イギリス…0.39人
- 日本…0.78人
あれ?この中だと日本が1位になってしまいました。アメリカとイギリス以外の先進国のデータもありますが、どこも0.3~0.6人くらいです。つまり走行距離ベースで考えると日本がダントツで交通事故死者数が多いことになります。
たしかに走行距離ベースだと日本は不利かもしれません。日本は人がいる場所が多いため、このような結果になってしまう可能性は高いです。
しかし不利な条件下とはいえ、日本が1位になってしまっては質が高いという意見には疑問が生まれます。つまり免許取得費用が高いことと、運転の質は関係がない可能性が高いです。
教習所というシステムに問題がある?
ではなぜ日本の免許取得費用が高いのか。それは教習所のシステムに関係しています。さきほど比較に挙げたアメリカとイギリスはどちらも個人で練習することが可能です。つまり車と場所さえあればどこでも練習ができるわけです。
一方の日本では教習所に通わずに免許取得も不可能ではないものの、非常に狭き門といえるでしょう。そのため一般的には教習所に通ってから試験を受けます。
そしてこの教習所の維持にかなりのコストがかかっているため取得費用が高くなっているのです。
しかしさきほどのデータでは教習所に通うことが事故率の低下に繋がるとは思えませんでした。つまり免許取得に30万円を払う価値はないと言えるかもしれません。
今後はどうなる?
とはいえこのままだと免許を取得する人が減ってもおかしくありません。車が必要ないと考える人は着実に増えていますし、身分証の機能なんて代わりはいくらでもありますからね。少子化の問題だってあります。
つまり今のような高額な取得費用のままでは、教習所の運営自体が危うくなるわけです。実際に潰れる教習所も増えてきています。
今後、自動運転が普及すれば免許の在り方も変わるとは思いますが、いずれはなくなるものなのかもしれません。
(文/kaztel)